地域医療構想ガイドライン議論大詰め―医療機能の線引きが焦点
2015.1.9.(金)
医療提供体制の再編に向けて国が定める「地域医療構想の策定ガイドライン」の具体化をめぐる議論が大詰めを迎えています。厚生労働省が2014年末に明らかにした「病床の機能を分類する際の考え方」によりますと、高度急性期と急性期機能の境界は、重症患者を受け入れるハイケアユニット(HCU)を退室する段階での医療資源投入量を目安にするとしていて、こうした考え方を踏まえて機能ごとのニーズと将来的な必要量をどう割り出すかが焦点になります。
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ガイドラインは、各都道府県が地域医療構想(地域医療ビジョン)を策定する際の参考という位置付けで、同省では早ければ月内にも骨格を固めたい考えです。都道府県による地域医療構想の策定は4月以降にスタートすることになっていて、それ以降、医療提供体制の再編が各地域で本格化する見通しです。
医療提供体制の再編を国が推進するのは、超高齢社会の到来に伴う医療ニーズの変化や急増に対応できる体制を構築するためです。医療法上の「一般病床」と「療養病床」を、再編後は「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4つの医療機能に割り振るイメージです。地域医療構想には、それぞれの機能に対する「構想区域」ごとのニーズや「必要量」(整備目標)が盛り込まれることになっていて、ガイドラインの中でそれらの推計方法を示します。
14年10月には、再編の足掛かりとなる「病床機能報告制度」がスタートしました。この制度は一般病床か療養病床を持つ病院と診療所すべてが対象で、当面は各医療機関が毎年7月時点でカバーしている機能と6年後の意向を、4つの機能の中から病棟ごとに選んで都道府県に報告するものです。各都道府県は、正式なガイドラインや医療機関からの報告内容を踏まえて、地域(構想区域)ごとに医療構想をつくるという流れです。
地域医療構想には、団塊世代が75歳以上になる2025年時点での4機能ごとのニーズと「必要量」の推計方法を盛り込みます。将来的には、過剰な機能への転換の申請があれば、利害関係者らによる「地域医療構想調整会議」で善後策を話し合い、ここでの協議が不調に終われば都道府県知事が転換中止を命令・要請できるようにします。
■高度急性期と急性期が6割超、報告状況の速報値
「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」の14年末の会合では、厚労省が12月19日までに集計可能だった93万9462床分の報告状況の速報値も明らかにしました。
それによりますと、これらの病床が同年7月時点でカバーしていると報告した機能の内訳は、高度急性期が15万3052床で全体の16.4%を占め、これ以外は急性期が43万9167床(47.0%)、回復期が8万5300床(9.1%)、慢性期が25万6957床(27.5%)。
一方、6年後の意向では、高度急性期15万9689床(17.1%)、急性期41万6877床(44.5%)、回復期11万731床(11.8%)、慢性期24万9056床(26.6%)という結果でした。高度急性期と急性期の病床を合わせると、全体の6割を超える病床が急性期機能を維持する意向を示したことになります。
ただ、現時点での医療機関側からの報告は、厚労省が示している「定性的な基準」に沿った自己申告的な意味合いのもの。「定性的な基準」では、例えば急性期について「状態の早期安定に向けて医療を提供する機能」としているだけで、絞り込みの根拠となる詳しい基準は固め切れていません。厚労省の検討会では、各機能の担い手となる医療機関をどう線引きして絞り込むかが、最大の焦点です。
■高度急性期の資源投入は「3000点ぐらい」が目安
厚労省側は、高度急性期と急性期を医療資源の投入量によって線引きする考え方を示していて、検討会が14年末に開いた会合では、重症患者を受け入れるハイケアユニット(HCU)を退室する段階での医療資源投入量を目安にすることを提案しました。
厚労省の研究班が255の疾患やけがをピックアップした分析では、多くの疾患で入院初日から2-3日までは医療資源の投入が特に多いものの、その後は一定の水準で安定する傾向が明らかになっています。
ガイドライン案は早ければ月内にも固まる見通しで、厚労省医政局の佐々木昌弘・医師確保等地域医療対策室長は、この日の会合で「次回には、各都道府県が行う推計の仕方の案をお示しできるようにしたい」と説明しました。ただ、推計方法の提案が医療ニーズのものなのか、必要量のものなのかまでは踏み込みませんでした。