厚労省が「新オレンジプラン」発表、認知症施策を加速へ-医療・介護の有機的連携を推進
2015.1.27.(火)
厚生労働省は27日、「認知症患者に適時・適切な医療・介護等を提供する」「認知症の予防法、診断方法を研究する」という視点で認知症対策を改訂した「新オレンジプラン」を発表しました。
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厚労省はこれまでにも認知症施策を進めており、12年9月にはオレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)を策定。そこでは、▽標準的な認知症ケアパスの作成・普及▽早期診断・早期対応▽地域での生活を支える医療・介護サービスの構築-などが打ち出されました。
ところで、高齢化の伸展に伴い認知症患者が急速に増加すると見込まれます。2012年には約462万人で、「65歳以上高齢者の約7人に1人」と推計されていますが、25年には約700万人に増え、「65歳以上高齢者の約5人に1人」になる見込みです。
こうした状況に鑑み、安倍晋三首相は14年11月に、塩崎恭久厚労相に対して「認知症施策を加速させるための戦略」を策定するよう指示していました。今回のオレンジプランの改訂はこれを受けたものです。
新オレンジプランでは、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」ことを基本的な考え方に据え、次のような改訂の柱を掲げています。
(1)認知症の容体に応じた適時・適切な医療・介護などの提供
(2)若年性認知症施策の強化
(3)認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデルなどの研究開発と、その成果の普及の推進
(4)認知症の人の介護者への支援
(1)の「適時・適切な医療・介護等の提供」においては、▽発症予防▽発症初期▽急性増悪時▽中期▽人生の最終段階-の各段階において、医療・介護などが有機的に連携した切れ目のないサービス提供を目指します。
特に早期診断・早期対応に力を入れ、▽かかりつけ医の認知症対応力向上、認知症サポート医の養成▽歯科医師・薬剤師の認知症対応力向上▽認知症疾患医療センターの整備▽認知症初期集中支援チームの設置-などを実施します。
新オレンジプランでは体制整備の目標値が引き上げられており、例えば「認知症初期集中支援チーム」については、旧プランで「15年度以降の制度化を検討」とされていたものが新プランでは「18年度から全市町村で実施」となっています。このための財源には消費税率引き上げによる増収分が充てられます。
このほか、医療・介護の有機的な連携を推進するために、▽認知症ケアパスの積極的活用▽医療・介護関係者等の間の情報共有推進▽認知症地域支援推進員の配置、認知症ライフサポート研修の積極的活用▽地域包括支援センターと認知症疾患医療センターとの連携推進-などが行われます。
「認知症地域支援推進員」については、14年度に217市町村で実施されていますが、新プランは「18年度に全市町村で実施する」という目標値を掲げました。
(3)の「予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル」の研究は、新プランで新たに盛り込まれた項目で、具体的な取り組みは次のようなものです。
▽高品質・高効率なコホートを全国に展開するための研究などを推進する
▽認知症の人が容易に研究に参加登録できるような仕組みを構築する
▽ロボット技術やICT技術を活用した機器などの開発支援・普及促進を行う
▽ビッグデータを活用して地域全体で認知症予防に取り組むスキームを開発する
新プランでは、15年度までに「分子イメージングによる超早期認知症診断方法を確立」し、20年ごろまでに「日本発の認知症の根本治療薬候補の治験を開始」するという目標が掲げられました。
(4)の「介護者への支援」としては、負担軽減に向けて「認知症カフェ」などを設置します。これは、認知症患者や家族、専門職らが集い、情報交換をしたり、日頃の思いを話し合ったりする「場」です。家族が抱え込みがちな「苦労」を吐露し、共有することで、連帯を感じ、精神的な負担が軽減されることから、各地で効果を上げているとの報告がなされています。
また、▽介護ロボット、歩行支援機器などの開発支援▽仕事と介護が両立できる職場環境の整備-なども行われます。
このほか新プランでは、▽認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進▽認知症の人やその家族の視点の重視―が新たな視点として加えられました。後者では「認知症の人が必要と感じていることについての実態調査」や「認知症の人の生きがいづくり支援」などが行われます。