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都道府県と市町村の国保業務分担、引き続き検討-社会保障審で大島総務課長

2015.1.29.(木)

 社会保障審議会で29日、社会保障改革について厚生労働省からの報告が行われました。すでにお伝えした「医療保険改革案」や「2015年度予算案」について議題となり、厚労省保険局の大島一博・総務課長は「国保改革は今回の改革で終わりではない。都道府県と市町村の適正な役割分担を引き続き検討していく」と強調しました。

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国保業務、都道府県と市町村の分担は検討継続

 医療保険改革案のうち、医療機関に関連の深い項目を中心にすでにお伝えしましたが、今回は「国保改革」と「後期高齢者支援金の計算方法見直し」についてご説明しましょう。

 国保改革の大きな柱は(1)財政支援を強化する(2)財政運営の責任主体を20年度から都道府県にする-の2本です。

 国保は、自営業者や無職者などが加入する公的医療保険で「国民皆保険制度の最後の砦」と言えます。現在は主に市町村が財政運営の責任を負っていますが、▽年齢構成が高く医療費水準が高い▽低所得者が多い▽小規模保険者が多い-といった課題があり、「国民皆保険を維持するために制度の安定化が急務」とされています。

 このため社会保障・税一体改革論議の中で、「財政支援の強化」や「保険者の規模の拡大による財政の安定化」が議論されてきました。

 (1)の財政支援強化については、▽15年度から保険者支援制度を拡充し(1700億円)、さらなる公費投入(2000億円)を実施する▽後述する「後期高齢者支援金の計算方法見直し」で生じる財源のうち約1700億円を17年度から国保支援にまわす-こととなります。

 また(2)の財政運営の責任主体については、20年度から都道府県に移管されます。ただし、保険料を納める窓口の業務などはこれまでどおり市町村が担うことになります。具体的には、都道府県が「国保の運営方針」や「標準保険料率」を定め、市町村が住民(被保険者)から保険料を徴収します。集まった保険料は、市町村が「分賦金」という形で都道府県に納めます。このように国保の運営業務は都道府県と市町村が分担することになります。

 分担を行うことで業務に支障は出ないのでしょうか。櫻井敬子委員(学習院大学法学部教授)は、「分担することで業務が円滑に進むのかという疑問もある。効率化を考えていくと、役割分担の中身は大きく変わってくるのではないか」と述べています。

 この点、厚労省保険局の大島総務課長は「今回の改革案で国保改革が終わるわけではなく、都道府県と市町村の役割分担については引き続き検討していく。たとえば保険給付についてコンピュータをより活用すれば、それほど人手をかからずに済む可能性もある。20年度に向けて、保険給付業務を都道府県に移管できないか検討していくことになろう」と説明しています。

後期高齢者支援金、負担能力を重視

 (2)の後期高齢者支援金については、段階的に「全面総報酬割」が導入されます。

 75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度の財源は、▽公費5割▽若人からの支援金(後期高齢者支援金)4割▽高齢者自身の保険料1割-という構造です。後期高齢者支援金は、国保や被用者保険(健保組合、協会けんぽなど)が負担しますが、被用者保険間では、原則として、加入者数に応じて負担金額を決めます(加入者割)。しかし、加入者割には、「相対的に報酬が低く、加入者数の多い協会けんぽの負担が過重になっている」との指摘があります。

 そこで、かねてより「加入者数だけではなく、加入者の報酬(給与や賞与)をも加味して負担金額を決めてはどうか」との提案がなされているのです(総報酬割)。ちなみに現在は、支援金のうち「3分の1が総報酬割、3分の1が加入者割」という形になっています。

 今回の改革案では、総報酬割の比率を段階的に引き上げ、17年度から全面総報酬割(支援金すべてを総報酬割で計算する)とすることになりました。

▽27年度は、2分の1を総報酬割、2分の1を加入者割とする

▽28年度は、3分の2を総報酬割、3分の1を加入者割とする

▽29年度から、すべて総報酬割とする

2017年度から被用者保険が負担する後期高齢者支援金について、「加入者数だけでなく、報酬(給与や賞与)を加味した計算方法」(総報酬割)に全面移行

2017年度から被用者保険が負担する後期高齢者支援金について、「加入者数だけでなく、報酬(給与や賞与)を加味した計算方法」(総報酬割)に全面移行

 ところで、総報酬割の比率を引き上げると、協会けんぽへの国庫負担額が減少します。この減少額を、(1)の「国保への財政支援強化」に優先的に用いることが今回の改革案に盛り込まれています。

 この改革内容について健康保険組合連合会や日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会は「被用者保険の中で生じた財源を国保にまわすことは理解できない」と強く反対しており、現在でもその姿勢を崩していません。しかし、厚労省保険局の大島総務課長は「国保は国民皆保険の砦であり、財政の安定化が喫緊の課題である」と説明し、理解を求めました。

 なお、鈴木茂晴委員(日本経団連・社会保障委員会共同委員長)からは「後期高齢者の医療費をどう負担するかに議論の焦点が合わせられてきたが、増え続ける給付費の抑制を考えなければ、制度を維持できなくなる。給付費の効率化・適正化を迅速にしなければならない」との要望が出されています。

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