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病院職員の生産性が確実に向上するデータ活用術、日病が経営分析勉強会を開催

2018.1.26.(金)

 日本病院会は1月18日、出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」の勉強会を開催しました(JHAstisの紹介ページはこちら)。グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルタント、太田衛が同ツールの概要と具体的な活用方法を紹介したほか、「メディ・ウォッチ」編集主幹の鳥海和輝が2018年度診療・介護報酬改定について解説しました。

 JHAstisの具体的な活用方法では、医師やコメディカルの生産性向上に着目。生産性向上に向けてどのような課題があり、どのような手法と手順で課題を解決していけばいいのか――。専門コンサルタントならではのデータ活用術を披露しました(JHAstisのお申込みはこちら)。

JHAstis勉強会の様子

JHAstis勉強会の様子

経営改善に向けた政策提言も

 JHAstis(Japan Hospital Association Strategy Tactics Information System=日本病院会戦略情報システム)は、出来高算定する日病会員病院の「経営の見える化」を目的とした日病の主力事業の一つ。2016年度からスタートしました。同事業に参加する会員病院は、提供される暗号化ツールを用いて患者情報などを匿名化した上で、レセプトデータを提出。提出後、経営分析レポートを毎月受け取れるという仕組みです。レポートの分析・配信はグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が担当しています。

 経営分析レポートは、自病院の主要経営指標の分析や加算分析といった「月次レポート」、他病院のデータと主要経営指標を比較(ベンチマーク)する「定期レポート」、回復期リハビリテーション病棟に特化した「回復期レポート」、診療報酬改定情報などを解説する「臨時レポート」があります。半期ごとに「経年比較レポート」を病院長などの代表者に向けて郵送するサービスも、2017年度から行っています。

経営分析レポートのイメージ(画像は「月次レポート」の一部)

経営分析レポートのイメージ(画像は「月次レポート」の一部)

 経営分析レポートのほか、定期的な勉強会も開催。今回の勉強会もその一環です。また、参加病院から得られたデータを活用することで、政策提言する狙いもあります。勉強会であいさつした日病の大道道大副会長は、「出来高病院の経営環境改善につながるような政策提言に打って出たい」と今後の抱負を述べました。

勉強会であいさつした大道日病副会長

勉強会であいさつした大道日病副会長

解決策はシンプルに、業務量を可視化

 勉強会の講演では、JHAstisの概要とその活用事例を太田が紹介。活用事例は生産性向上をテーマとして、医師、薬剤師、栄養管理士、理学療法士などのセラピスト、放射線技師などの生産性をどのようにして高めていくのか、その具体的な手法と手順について解説しました。

GHCの太田

GHCの太田

 そもそも病院職員の生産性向上は、非常に難しい課題です。人手不足に悩む病院は少なくなく、職員一人ひとりにかかる負荷は大きく、業務時間も長くなりがち。そうした中で単に生産性向上を掲げても、現場職員からの反発を招くのは必至です。こうした背景を踏まえて太田は、「シンプルに考え、具体的な業務量を可視化することで解決策が見えてくる」と指摘します。

 生産性は、「アウトプット/コスト」の図式で定義され、より少ない労力でより多くの収益を生み出すことで、生産性が向上したと言えます。例えば、病棟薬剤師の生産性向上ということで考えると、大きく収益に影響する薬剤管理指導の件数に着目することができます。そこから「薬剤管理指導の件数/薬剤師の人員」という図式で生産性の向上を考え、いかに少ない労力で薬剤管理指導の件数を増やせばいいかという視点で整理すると、(1)薬剤師一人あたりの薬剤管理指導に充てられる時間を増やす(2)薬剤管理指導一件当たりの時間を減らす――の2つの方法が見えてきます。

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 (1)については、具体的に言うと▽業務の集約化▽業務の権限委譲▽人員体制の強化――などがあります。例えば、業務の権限委譲の視点で見ると、「事務・管理業務」「在庫管理業務」「清掃」など必ずしも薬剤師が行わなくても構わない業務があります(図表参照)。薬剤師が薬剤師しかできない業務に集中できるよう、今ある業務を項目別に見直し、整理することで、効率化の糸口が見えてきます。

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 (2)については、▽情報収集の効率化▽テンプレートの活用――などが具体的な内容になります。ある病院の業務量を項目別にアンケート調査した事例(図表参照)を見ると、服薬指導の記録や患者資料作成にかかる時間に大きなバラつきがありました。これについて太田は、「バラつきが生じるのは、冗長な記録・記入をしがちな職員の存在が大きい。職員間の差をなくすためには、箇条書きが基本の記録や報告のテンプレートを用意することで、問題がある職員の記録や報告の時間短縮だけではなく、それらを見る側の時間短縮にもつながる」と指摘します。

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 生産性向上に必要なキーポイントに着目し、一つひとつの業務に掘り下げて適切に見直すことで、一見、多忙で改善が難しそうに見える病院職員の生産性であっても、十分に向上する余地が見えてくるのです。

改定の要点と収益への影響が分かる

 JHAstisは、こうした病院経営にかかわる課題に必要なデータを、誰でも分かりやすく、瞬時に把握できるように設計されています。参加病院へのアンケート調査では、9割の病院が改善活動のスタートにつながっているとしており、複数の改善事例も報告されています(参考記事『改善活動スタート 9 割、地域の医療・介護連携をサポート 「データを可視化」「強みと弱みが明確に」「病床戦略の重要資料」』『日病の経営分析レポートJHAstis、300床規模の病院で年200万円の増収実績』)。

 2月から4月にかけては、大好評いただいている「臨時レポート」を発行いたします。出来高病院が知るべき18年度診療・介護報酬改定の情報を詳説するとともに、個別の論点ごとに改定がどのような影響を及ぼすのか、病院ごとに実データを用いてシミュレーションするという内容になります(参考記事『同時改定を万全サポート、日病が経営分析レポート2017年度の募集開始』)。

 大変有益な臨時レポートは、JHAstis参加病院の特典です。効率的に改定の要点を知り、シミュレーションをしたいと考えている方は是非、JHAstisへの参加をご検討ください(JHAstisのお申込みはこちら)。

解説を担当したコンサルタント 太田 衛(おおた・まもる)

mamoru 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルタント。
大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学修士課程修了。大阪大学医学部発バイオベンチャー企業、クリニック事務長兼放射線・臨床検査部長を経て、GHCに入社。診療放射線技師、第一種放射線取扱主任者の資格を持ち、病床戦略、地域連携、DPC分析を得意とする。関東地方400~500床台の公的病院における病床戦略策定・機能分化実行支援などを行うほか、日本病院会が手がける出来高算定病院向け経営支援システム「JHAstis(ジャスティス)」の分析も担当する。
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