過剰な内部留保は社福事業などに再投下-社福法人改革案まとまる
2015.2.16.(月)
社会福祉法人制度の改革案がこのほどまとまりました。改革の柱として(1)公益性・非営利性の徹底(2)国民に対する説明責任(3)地域社会への貢献-の3本が立てられており、特に「過剰な内部留保を蓄えている」との指摘がある点に対して、「全財産から事業継続に必要な最低限の財産を除いたものを、福祉サービスに再投下する」ことを提言しています。
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社会福祉法人は公益性の高い法人として税制優遇措置が講じられています。その一方で「過剰な内部留保(利益剰余金)が蓄えられている」との指摘があり、適切に説明責任を果たすことが求められています。
改革案は、社会保障審議会・福祉部会が12日にまとめたもので、こうした点については「介護保険や措置制度といった公的制度により安定した収入を得られるという事業特性を踏まえると、必要最低限の財産を除き、社会福祉事業または公益事業に再投下することが適当」とし、具体的には次のように考えるべきと提言しています。
▽全財産(貸借対照表上の純試算から基本金・国庫補助等積立金を除いたもの)から、事業継続に必要な最低限の財産(控除対象財産額)を「福祉サービスに再投下可能な財産額」(再投下財産額)と位置付ける
▽控除対象財産額は、土地、建物、設備など「社会福祉事業に活用する不動産」や「事業の再生産に必要な財産」(建て替えや大規模修繕に必要な自己資金)のほか、「必要な運転資金」を基本とする
▽再投下財産額は、(1)社会福祉事業(利用者負担の軽減や小規模事業への投資を含む)(2)地域公益事業(3)その他の公益事業-の順に再投下すべく、その計画作成(再投下計画)を義務付ける
▽再投下計画は、評議員会(議決機関)の承認を得た上で、公認会計士・税理士の確認書を付して所轄庁が承認する
また、社会福祉法人が地域の福祉施策の推進にあたって大きな役割を果たすことから、「地域協議会」の開催が求められます。地域協議会には▽地域ケア推進会議など既存の協議会の代表者▽地域住民▽所轄庁・関係市町村-の参加を求め、地域の福祉ニーズを把握することになります。
さらに、財政規律におけるガバナンスを強化するために、▽役員報酬などに関する評議員会によるけん制▽役員報酬基準・関係当事者との取引内容の公表▽外部監査の活用▽会計制度の整備と浸透▽財務諸表などの公開▽関係者への特別の利益供与禁止-などの制度化も提言しています。
一方、改革案では、経営組織の在り方を次のように見直すことも提言しています。
▽評議員会を議決機関として法律上位置付け、「理事・幹事・会計監査人の報酬、選任・解任などの重要事項」に係る議決権を付与する
▽評議員の選任・解任は定款で定める方法によることとし、理事・理事会による選任・解任はできないようにする
▽評議員会の構成は、「中立公正な立場から審議を行える者」であることを重視する
▽理事の義務と責任を法律上明記する(善管注意義務、忠実義務、法人への損害賠償責任、特別背任罪の適用など)
▽理事長を「代表権を有する者」として位置づけ、権限と責任を法律上明記する(業務の執行、理事会への職務執行状況の報告など)
▽理事会を「法人の業務執行に関する意思決定機関」として位置付け、権限を法律上明記する(業務執行の決定、理事の職務執行の監督、理事長の選定・解職、計算書類・事業報告の承認など)
▽理事の定数について「6人以上」を法律上明記し、同族支配禁止の徹底や学識経験者の配置などについても法令上に明記する
▽収益10億円以上、あるいは負債20億円以上の法人に会計監査人の設置を義務付ける