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適応外の抗がん剤を用いた医療技術、審査スキームが課題―中医協総会

2015.3.19.(木)

 中央社会保険医療協議会の総会が18日開かれ、在宅専門の医療機関や先進医療などについて議論を行いました。

 在宅専門医療機関に対しては「慎重に検討すべき」との意見が診療・支払側の双方から出され、2016年度の次期診療報酬改定論議の中で検討していくこととなっています。

 また、ドラッグラグの解消に向けて、医療上の必要が高いと判断された抗がん剤については先進医療への導入の適否を外部機関(国立がん研究センター)で行っています。これをさらに迅速に行うために「抗がん剤の適応外使用全般を先進医療評価委員会で審査する」ことを厚労省が提案しましたが、委員から批判が出たため、あらためて検討することとなりました。

3月18日に開催された、「第293回 中央社会保険医療協議会・総会」

3月18日に開催された、「第293回 中央社会保険医療協議会・総会」

適応外の抗がん剤を使う医療技術、どう審査すべきか

 外来診療を行わず在宅医療を専門に行う医療機関については、14年6月に閣議決定された規制改革実施計画でも「14年度中(15年3月まで)に結論を得て、必要な措置を取る」ことが決まっています。

 このため厚生労働省は18日の総会で、「外来応需体制を取る」ことを原則とした上で、高齢者増に対応するために、次の対応を取れる場合には在宅を専門に行うことができるとしてはどうかと提案しました。

(1)保険医療機関は、被保険者が相談などに容易に訪れることができ、相談があった際に対応する体制を確保する。また、緊急時を含め、保険医療機関に容易に連絡を取れる体制を確保する。

(2)往診・訪問診療を、地理的に区分された提供地域内で行うとともに、その地域をあらかじめ明示し、その範囲内の被保険者について、求めに応じて、医学的に必要な往診や、訪問診療に関する相談を行い、正当な理由なく診療を拒否しない。(例えば、特定の施設の居住者のみを診療の対象とはできない)

 しかし、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「在宅医療を充実する方向で中医協は一致しているが、新たな取り組みを行うには現状のデータなどを示してから行うべきで、いきなり方向性のみを示されても判断できない」として、この提案に対する回答を保留。診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)も白川委員に同意したため、結論は先送りとなりました。16年度の次期改定に向けて検討していくこととなります。

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在宅専門医療機関、結論は保留

 13年6月に閣議決定された日本再興戦略を受け、「未承認等であるが、医療上の必要性の高い抗がん剤を用いた先進医療B」のうち、先進医療会議で「先進医療としての適格性」が認められた技術について、国立がん研究センターで技術的妥当性などの審査を行う枠組みが中医協で固められています。有用な抗がん剤を用いた治療が迅速に患者に届けられるようになると期待されています。

 これは「ドラッグラグ」の短縮を目的としたものですが、現在までに、この枠組みを活用して実施可能となった医療技術はありません(医療上の必要性が高い抗がん剤は、これまでにパクリタキセルを用いた胃がん治療など3薬剤・5案件あります)。

 そこで厚労省は、この枠組みを活性化するために、現在の「医療上の必要性が高いと判断された抗がん剤を使用する技術」だけでなく、「抗がん剤の適応外使用を伴う技術」についても、先進医療の迅速評価に必要なエビデンスが一定程度そろっていると考えられることから、この枠組みで審査してはどうかと提案しました。厚労省保険局医療課の佐々木健企画官は、「医療上の必要性が高いと判断されるまでにも一定の時間がかかるため、この枠組みで迅速な評価が可能になる」と説明しています。

先進医療の外部評価の対象となる抗がん剤に関する厚生労働省の提案

先進医療の外部評価の対象となる抗がん剤に関する厚生労働省の提案

 しかし支払側の花井十伍委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)から「医療上の必要性があると判断された抗がん剤以外に、患者や学会から要望が出ているのだろうか。安全性に問題はないのか」といった疑問が提示されました。診療側の中川委員も花井委員の見解に賛同したため、この提案についても結論は先送りとなっています。

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東日本大震災に伴う特例措置、9月まで延長


 

 この日は、東日本大震災に伴う被災地特例措置も議題となりました。震災の被災地では、医療従事者の不足や、1医療機関当たり患者数の増加(医療機関や介護施設等の減少に伴う集中)などが続いており、診療報酬上、看護配置や平均在院日数の要件など医科・歯科合わせて26の特例が設けられています。

 復興とともに特例の必要性は薄れてきていますが、15年1月時点で28の医療機関(岩手5件、宮城8件、福島14件、群馬1件)で特例が活用されています。厚労省は、こうした点を踏まえて、次の対応を取ることを提案。診療、支払の双方がこの提案を了承しています。

▽特例措置は、被災の影響で施設基準等を満たせなくなった場合の利用を原則とし、例えば、特例措置の利用で新たな施設基準の要件を満たすことなどは認めない。

▽福島県内の保険医療機関は、厚生局に届け出の上、15年9月末まで特例措置を利用できる

▽その他の都道府県の保険医療機関については、現に利用している特例措置を厚生局に届け出の上、15年9月末まで利用を継続できる

医薬品や材料の加算、定量化に向けた研究を継続

 なお、同日に開かれた中医協の薬価専門部会と保険医療材料専門部会には、「加算の定量化」に向けた研究結果が報告され、今後、薬価・材料価格を設定する上での参考値とすることや、引き続き研究を行うことが了承されています。

 医薬品、材料のいずれでも加算の要件を細分化し、それぞれにポイントを付与し、どれだけのポイントを獲得できたかで加算率を設定するというものです。例えば医薬品では、次のように要件とポイント設定が行われます。

▽対象疾病の治療方法の根本的な改善が示される:10ポイント(a1)

▽対象疾病の治療方法の著しい改善が示される:4ポイント(a2)

▽対象疾病の治療方法の改善が示される:1ポイント(a3)

▽希少疾病用医薬品として指定された効能・効果または指定難病を主たる効能・効果とする医薬品:2ポイント(b1)

▽小児に対する適応を効能・効果または用法・用量に明示的に含む医薬品:1ポイント(c1)

▽対象疾病に対して治療手段を提供する初めての医薬品:2ポイント(d1)

▽世界に先駆けて日本で初めて承認された医薬品:1ポイント(e)

▽既存治療と比較した革新性などの程度が特に高いと薬価算定組織が認める:1-4ポイント(f)

「医薬品加算の定量化に関する研究」における、加算要件の細分化とポイント(その1)

「医薬品加算の定量化に関する研究」における、加算要件の細分化とポイント(その1)

「医薬品加算の定量化に関する研究」における、加算要件の細分化とポイント(その2)

「医薬品加算の定量化に関する研究」における、加算要件の細分化とポイント(その2)

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