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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

ライター・三竦の霞ヶ関ウォッチ 社会医療法人の特養参入阻んだのは…

2015.4.6.(月)

 社会福祉法人にのみ運営が認められている特別養護老人ホーム(特養)。実は医療法人制度改革の検討が行われた2005年、運営主体に社会医療法人を加える案が浮上していたが、いまだ実現していない…。医療法人の附帯業務拡大をめぐる経緯を、
霞ヶ関ウォッチャーの三竦氏が振り返る。

介護保険スタートで大きく変わった医療法人の「附帯業務」

 医療法人は病院・診療所・介護老人保健施設を運営するために設立されたものだが、医療法人を運営すると、患者の治療だけでなく予防・健康づくり支援や、医学の研究、医療従事者の養成といった病院などの運営に当然、付随する業務もあるだろう。そこで、こうした業務を「附帯業務」として医療法第42条に位置付けた。

 これにより、例えば、医学の研究だけを行うために医療法人は設立できないが、病院・診療所・介護老人保健施設のいずれかを運営している医療法人は、附帯業務として同条各号に明記された業務を行うことができると整理された。また、同条第6号には、医療法人が附帯業務として「保健衛生に関する業務」を行えることとし、その具体的な内容を局長通知で定めることで、医学・医療の発展による新たな業務を随時追加していくことになった。

 ところが、2000年の介護保険法施行によって附帯業務の内容が大きく影響を受ける。これによって介護サービスが広まっていく中、医療法人も介護サービスの提供主体として位置付けられ、附帯業務が大幅に拡大されることになった。その根拠となったのが「保健衛生に関する業務」に基づく局長通知である。結果として、局長通知にさまざまな附帯業務が盛り込まれることになったが、同時に法令上の根拠があいまいなまま、「拡大解釈」によって医療法人の附帯業務が増えていく危うさも指摘された。

 このため、05年の医療法人制度改革の検討に当たっては、医療法人が行う附帯業務の考え方を抜本的に整理することになった。その結果、社会福祉事業の実施主体として医療法人を明確に位置付けるため、医療法に明記することになったのである。これにより、医療法人が保健・医療・介護・福祉事業を複合的に担う主体と法律上位置付けられた。

経営に長けた医療法人の参入に危機感

 実はこの改革の動きには後日談がある。社会福祉事業については、ケアハウスを除く施設系の第一種事業のすべてを社会医療法人(ケアハウスは通常の医療法人でも実施可能)、通所系の第二種事業を社会医療法人と通常の医療法人に容認する方向だった。医療療養病床や介護療養病床を持つ社会医療法人が特別養護老人ホームを運営するようになれば、医療法人と社会福祉法人に法人を分けることなく両者を一体的に運営でき、経営上のメリットも大きいだろうとの考えだ。療養病床の削減にもつながるという背景もあったのかもしれない。

 しかし、経営に長けた医療法人が特別養護老人ホームに参入する動きに社会福祉法人側が危機感を抱いたため、実現できなかった。それ以降、社会医療法人による特養の開設がいまだに認められないのは残念だ。

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