糖尿病に伴う認知機能障害・老化に伴う認知機能低下、アミロイドβ変化とは独立に惹起―国立長寿医療研究センター
2019.8.27.(火)
糖尿病に伴う認知機能障害や老化に伴う生理的な認知機能低下は、アミロイドβ(Aβ)の変化とは独立に惹起される―。
国立長寿医療研究センターは8月22日、こうした研究成果を発表しました(研究センターのサイトはこちら)。
昨年(2018年)には認知症患者数は500万人を超え、「65歳以上高齢者の7人に1人が認知症」という状況です。こうした状況を重く見た政府は、認知症対策の充実・強化に向け、新オレンジプランを大改革した「認知症施策推進大綱」を取りまとめました
「認知症の人との共生」「認知症の予防(発症を遅らせる)」を目指し、(1)普及啓発・本人発信支援(2)予防(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援(5)研究開発・産業促進・国際展開―という5つの柱を打ち立てています。
今般、この5つ目の柱の1つ「研究開発」に関し、新たな知見が明らかになりました。国立長寿医療研究センター統合加齢神経科学研究部と理化学研究所脳神経科学研究センター・神経老化制御研究チームの共同研究チームが、次の2点を明らかにしたのです。
▼1型・2型糖尿病に伴う認知機能障害および老化に伴う生理的な認知機能低下は、アミロイドβ(Aβ)の変化とは独立に惹起される
▼アルツハイマー病(AD)患者の死後脳で発見されたインスリンシグナル主要調節因子、インスリン受容体基質1(IRS1)のセリンリン酸化の増加は、2型糖尿病および老化に伴う認知機能低下に連動する一方で、アルツハイマー病(AD)では、認知機能低下より前に生じるアミロイドの増加に関連する
アルツハイマー型認知症については、脳へのアミロイドβというタンパク質の蓄積と密接に関係すると推測されていますが、他の様々な要素が関連しており、発症の機序などは必ずしも明らかになっていません。
また糖尿病は、認知機能障害の重要なリスク要因であり、「糖代謝調節経路であるインスリンシグナルの脳での役割と認知機能との関係」に関心が高まっています。
今回の研究結果をベースに、新たな「認知機能障害の予防・治療法」開発への期待が高まります。
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