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認知症患者の情報、連携シート活用し関係機関間で共有を―国立長寿医療研究センター

2018.2.19.(月)

 我が国の認知症対策を充実させるために、認知症疾患医療センターや病院などの「機関間」、さらにそこで働く「専門職種間」で、質の高い連携を進めていく必要がる。連携推進のために、行政は▼人材育成等に関する責任主体の明確化▼連携シートの普及促進―などを行うべきである。また、個別認知症患者のニーズに対応するために「ICT活用」や「創薬」などの技術革新も進める必要がある。行政は、認知症患者の意見なども踏まえて技術革新を進めてほしい—。

国立長寿医療研究センターの「認知症医療介護推進会議」(会長:鳥羽研二・国立長寿医療研究センター理事長)は2月16日に、このような内容を盛り込んだ提言を加藤勝信厚生労働大臣に宛てて行いました(研究センターのサイトはこちら)。

2025年、65歳以上の5人に1人が認知症高齢者に

高齢化の進展とともに、認知症患者が増加していくことが予想されています。認知症高齢者数は、2012年には約462万人で、「65歳以上高齢者の約7人に1人」ですが、2025年には約700万人となり、「65歳以上高齢者の約5人に1人」になる見込みです。

最新の推計では、2015年に認知症患者は730万人となる。65歳以上では、5人に1人が認知症患者となる計算。

最新の推計では、2015年に認知症患者は730万人となる。65歳以上では、5人に1人が認知症患者となる計算。

 
このため国(厚生労働省)は、認知症対策についてスピード感をもって充実させる必要があると考え、2015年1月に新たな認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)を策定しました。次の7本の柱を立て、▼医療水準の向上▼家族支援▼研究―などを総合的に進めていくこととしています(関連記事はこちら)。
(1)認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進(例:認知症に関する正しい知識と理解を持ち、地域や職域で認知症の人や家族に対してできる範囲での手助けをする【認知症サポーター】の育成など)
(2)認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供(例:かかりつけ医の認知症診断などを支援する【認知症サポート医】の養成、認知症の鑑別診断や適切な医療提供を行う【認知症疾患医療センター】の設置、粗暴行動などへの対処法を示す【BPSDガイドライン】の設置など)
(3)若年性認知症施策の強化(例:【全国若年性認知症コールセンター】の設置や、【若年性認知症ハンドブック・ガイドブック】の作成など)
(4)認知症の人の介護者への支援(例:認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有しお互いを理解し合う【認知症カフェ】の設置など)
(5)認知症を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
(6)認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発、および成果の普及推進
(7)認知症の人やその家族の視点の重視
認知症を早期診断し、早期対応するための体制を充実。2018年には認知症初期集中支援チームを全市町村に設置する。

認知症を早期診断し、早期対応するための体制を充実。2018年には認知症初期集中支援チームを全市町村に設置する。

医療・介護等の有機的な連携を推進するために、地域のコーディネーター役を務める認知症地域支援推進員を全市町村に配置

医療・介護等の有機的な連携を推進するために、地域のコーディネーター役を務める認知症地域支援推進員を全市町村に配置

 
 ところで、我が国において認知症治療・研究の牽引役となる国立長寿医療研究センターでは、日本認知症学会や日本老年精神医学会などの「学会」、日本医師会や日本看護協会などの「職能団体」、さらに患者団体、それぞれの代表が参加する「認知症医療介護推進会議」(以下、推進会議)を設置し、より質の高い認知症対策の推進に向けた議論を行っています。

今般、下部組織で検討してきた▼医療・介護の「連携推進」▼ロボットの開発、ICT活用、創薬等の「技術革新」―の2点を、認知症対策に活かしていくよう、国に提言を行っています。

専門職種間、機関間で、認知症患者に関する情報連携をさらに進める必要がある

前者「医療・介護連携」については、まず「初期段階の相談に応じる専門職」の能力向上を含めた機能強化が必要と指摘します。認知症治療の最重要事項として「早期発見」が指摘されます。「単なる物忘れなのか、あるいは認知症なのか」は判断しにくく、家族などが早期に相談できる体制を構築することが重要です。

このため、初期相談先として▽認知症疾患医療センター▽病院▽診療所▽地域包括支援センター▽市町村窓口▽認知症初期集中支援チーム―などがありますが、推進会議は、これらで働く専門職種において「情報連携を行う体制のさらなる機能強化が必要」と指摘しています。さらに、認知症患者には医療・介護サービスを併せて利用しているケースが多く、「サービス機関間の連携」も重要になると強調します。

さらに推進会議は、この「専門職種間」「機関間」の連携を強化するために、行政(国、都道府県、市区町村)に対して、「人材育成などに関する責任主体の明確化」「地域の社会資源や人材(医療機関や認知症サポーターなど)、データなどの施策への活用」「認知症患者の家庭での状況や必要な医療、介護等に関する情報をまとめ、全国の医療・介護保険サービス事業所等で活用できるような連携シートの普及促進」「診療報酬・介護報酬での評価」、などを要請しています。

また推進会議自体も、▽多職種間の共通認識の醸成、相談対応力向上に向けた認知症患者・家族のニーズ整理▽連携の効果測定のためのアウトカム評価の研究―を進めることを宣言しています。

創薬やロボット開発に当たっては、認知症患者の意見を吸い上げる仕組みが必要

後者の「技術革新」については、その重要性は述べるまでもありませんが、推進会議では「認知症患者の意見を踏まえる」「個別ニーズに適合する」ような形で、技術革新を進めてほしいと要望しています。

もちろん開発者側はそうした点にも十分に配慮していますが、なかなか認知症患者や家族には見えてきません。そこで、研究者・開発者に対し「最新技術に関する正しい情報を、わかりやすく提供する」ことなどを要望しています。さらに、国に対して、「認知症カフェなどを活用した認知症患者の意見吸い上げ」体制の構築を要請しました。

なお、推進会議自身は、▽認知症医療介護推進フォーラムにおいて技術革新の現状をわかりやすく伝える公開講座を開催する▽所属団体を通じた情報提供の仕組みを構築する▽情報提供に伴うアフターケア、フォロー体制を構築する—ことを宣言しています。

 
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