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がん死亡率20%減の目標達成は困難、2段構えで評価する方向探る―がん対策推進協議会

2015.5.21.(木)

 がん対策推進基本計画に掲げられた「2015年までに、75歳未満のがんの年齢調整死亡率を20%減少させる」という目標の達成は困難―。このような推計結果が20日、国立がん研究センターと同センターのがん対策情報センターからがん対策推進協議会に報告されました。

 協議会には、「05から15年までの10年間の死亡率の変化」という現在の指標と、「総合的ながん対策がスタートした07年から17年までの10年間の死亡率変化」という新たな指標の2段構えでがん対策を評価する方向も示されています。

5月20日に開催された、「第50回 がん対策推進協議会」

5月20日に開催された、「第50回 がん対策推進協議会」

喫煙率低下と健診受診率向上が進まず

 わが国のがん対策の支柱となる「がん対策推進基本計画」(現在は12-16年が対象期間の第2期)では、全体目標として「75歳未満のがんの年齢調整死亡率を10年間で20%減少させる」ことを掲げています。具体的には、05年の死亡率である92.4(人口10万対)を、15年に73.9(同)にまで下げることを意味します。

 しかし、国立がん研究センターの推計では、15年の死亡率は76.6と推計され、減少幅は「17%減」にとどまることから、目標達成は極めて難しい状況であることが分かりました。

 目標値である「20%減」は、▽自然減により10%▽喫煙率半減により1.6%▽がん検診受診率50%の達成により4.0%▽がん医療の均てん化により4.7%―の合計として設定されました。

 実際の状況を見ると、自然減の10%は「1990年-2005年のトレンド」から設定したもので、達成することができそうです。しかし、「喫煙率」は目標値の「50%減」に対し実際は「26%減」となる見込みで、死亡率への寄与は0.2%にとどまります。また、「健診受診率」も目標値の「50%以上」に対して、13年の実測値では「32.7-47.5%」という状況で、死亡率への寄与は2.5%にとどまっています。

 一方、「均てん化」の状況は今年度末に集計されるため、具体的な数値は現時点では明らかになっていません。若尾文彦参考人(国立がん研究センターがん対策情報センター長)は「死亡率が17%減となるので、そこから逆算すると、自然減10%が維持されるとすれば、均てん化による寄与は4.3%となる計算だ」と説明しました。

07年を起点とする10年間の死亡率変化も指標の1つに

 このような「目標達成が極めて困難」という状況を受け、門田守人会長(がん研究会有明病院院長)や中川恵一委員(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)は、「がん対策推進基本計画が定められ、総合的ながん対策がスタートしたのは07年からである。素直に考えれば07-17年の10年間の死亡率減を指標とすべきではないか」との考え方を示しました。

 第1期の基本計画で「05-15年の10年間の死亡率減」を指標とした理由は、がんの死亡や罹患に関するデータが揃うまでに2-4年がかかるところにあります。つまり、07年に基本計画を定めた時点では、05年のデータが最新のものであったことから、05年を起点として10年間の死亡率減が目標値とされたのです。

 すると、05-06年の2年間は基本計画策定前のデータであることから、門田会長らの「実際に総合的な対策を行った07年を起点として、指標を考え直すこともあり得る」との考えにつながってきます。

 しかし、堀田知光委員(国立がん研究センター理事長)や若尾参考人は、「過去の議論で05年を起点とすることが決まっており、それを動かすのは好ましくない。目標未達成という点をネガティブに考えず、今後、禁煙対策や健診受診率向上など充実すべき対策の議論に注力すべきではないか」との見解を述べました。

 こうした意見を受け、厚生労働省健康局がん対策・健康増進課の担当者は、次のように2段構えで、死亡率減少を評価することを提案しています。

(1)中間評価では、既に基本計画で設定されている「05年から15年までの10年間の死亡率変化」という指標で達成状況を押さえ、次期基本計画の対策を今後検討していく

(2)基本計画に沿った総合的ながん対策が始まった07年から17年までの10年間の死亡率変化という新たな指標によって、がん対策の効果を検証する

 (2)については、「17年の死亡率データ」がそろうのは19年になるため、どのような検証を行うかなどは今後さらに検討されることになります。

子宮頸がん予防ワクチン、定期接種勧奨の再開は

 ところで、がんの種類別に見ると、多くは死亡率が減少する傾向にあります。しかし子宮頸がんについては、死亡数・罹患数ともに増加していることから、堀田委員は「協議会が無策であってはいけない」として、子宮頸がん予防ワクチンの推進を図るべきではないかとの見解を投げ掛けました。

 子宮頸がんは、ワクチンによって高確率で予防できることが分かっており、わが国でも定期接種化(対象者は無料で予防接種が受けられる)されました。しかし、被接種者の一部に強い痛みや失神などの副反応が疑われる症状が出たことから、厚労省は現在、積極的な定期接種の勧奨を控えています。

 この点について、多くの委員から「リスクを説明した上で定期接種を勧奨し、子宮頸がん予防を推進すべき」との指摘が出されました。その中で堀田委員は、「副反応は、あらゆる医療に伴うもので、もちろん補償はしっかり行わなければならない。しかし、それを前提とした上で正しい施策は進めていかなければ、国の方向を誤ることになりかねない」と述べ、定期接種の勧奨再開に向けて協議会も動くべきではないかとの見解を投げ掛けています。

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