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国内外のトップランナーが語る「がんに負けない社会」の作り方

2015.5.21.(木)

 がんに負けない社会を構築するには、どうしたらいいのでしょうか――。長年、死因1位であり続け、患者、患者の家族、患者の友人や職場の仲間たちの生活を一変させる可能性が高い「がん」。そんな人々の生活の根底を揺るがしかねない疾病に、国を挙げた対策が進行中です。米国でも地域社会のさまざまなリソースと連携したがん患者のサポートプログラムが注目を集めています。

働く世代や小児への対策を充実

 「がん患者を含む国民が、がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会」こそ、がん対策推進基本計画(基本計画)の目指す方向性です(詳細はこちら)。基本計画は、2006年に定められた「がん対策基本法」に基づき進められてきた政府が策定するがん対策です。現在、12年から16年度までを対象とした第2期基本計画が進行中で、6月にはその中間評価報告書がまとまる予定です(関連記事『がん死亡率20%減の目標達成は困難、2段構えで評価する方向探る―がん対策推進協議会』※そのほかの関連記事はこちら)。

がん研有明病院の門田守人院長

がん研有明病院の門田守人院長

 重点的に取り組むべき課題として基本計画で掲げられているのは、(1)放射線療法、化学療法、手術療法のさらなる充実と、これらを専門的に行う医療従事者の育成(2)がんと診断された時からの緩和ケアの推進(3)がん登録の推進(4)働く世代や小児へのがん対策の充実――の大きく4つ。これらにより、がんによる死亡者数の減少やがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上、がんになっても安心して暮らせる社会の構築などが目指されています。

 基本計画を推進してきたキーマンは、がん対策推進協議会の会長でがん研有明病院の門田守人院長。「働く世代や小児へのがん対策の充実」を新たに加え、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」の実現に向けて取り組んできました。

質の高い患者支援サービス「キャンサーナビゲーション」

 一方、米国ではがん患者の不安に徹底して向き合い、質の高い患者支援サービスを提供する「キャンサーナビゲーション」に注目が集まりつつあります。全米屈指の優良病院であるクィーンズメディカルセンター(ハワイ州ホノルル)などで活用されており、現在、ハワイ州のがん患者の45%が同センターで治療を受けています。

 米国立がん研究所(NCI=National Cancer Institute)によると、キャンサーナビゲーションは「医療の消費者(患者、生存者、家族、医療提供者)に対し、ヘルスケアシステムを通じて患者の進路を指し示し、質の高いケアに対する障壁をなくす支援」と定義されています(関連記事『がん患者の不安と徹底して向き合い導く「キャンサーナビゲーション」って何だ?』)。

 がん患者の医療から生活まで広い範囲で支援することが最大の特長で、「がんに負けない社会」の実現に向けた有力なサポートプログラムとして機能しつつあります。クィーンズメディカルセンターによるキャンサーナビゲーションのキーマンの一人が、外科部長のポール・モーリス氏です。

米クィーンズメディカルセンターのポール・モーリス外科部長

米クィーンズメディカルセンターのポール・モーリス外科部長

 モーリス氏は「生命・健康を扱う医療機関こそが品質保証をしなければならない。QI(Quality Indicator)はケアの質向上のためのドライバーである」と考えており、がんの種類ごとに詳細なQIを蓄積しています。具体的には、データ提出のスピードと内容を評価する「成績表」を医師ごとに作成し、成績が悪いと「クィーンズメディカルセンターの設備使用を認めない」などのペナルティーが適用されます。つまり、QIが医療の質向上と連動する仕組みなのです(関連記事『患者と家族を全人的に支援、キャンサーナビゲーションとは-クィーンズメディカルセンターでGHCが研修(3)』)。

国内外のトップランナーが講演

 GHCはがん研有明病院との共催で、国内外のトップランナー、門田院長とモーリス外科部長を招いて7月24日(金)、がんセミナーをがん研究会吉田富三記念講堂(東京都江東区)で開催します。国内外の先進事例に基づき、「がんに負けない社会」を考える研修会です。ぜひご参加ください。

◆「がん医療の質を向上する政策と臨床」研修会
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