Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

病床過剰は事実だが、病床機能の転換奨励する補助金で地域医療守るべき―日慢協・武久会長

2015.5.22.(金)

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、21日に開いた定例記者会見で「現在、病床過剰であることは間違いないが、診療報酬で病床数などを絞っていく手法では地域医療が崩壊してしまう。地域医療を守るために、転換奨励金(補助金)などを医政局予算として確保し、急性期から慢性期への転換を促していくべき」との見解を示しました。

日本慢性期医療協会の武久洋三会長

日本慢性期医療協会の武久洋三会長

在院日数延ばして病床稼働率確保するのは姑息

 武久会長は、「日本では20万-30万床の病床が過剰と想定される。これは間違いない」と指摘。その根拠として、厚生労働省が3月4日の中央社会保険医療協議会総会に、「医療機関が『受け入れ条件が整えば退院できる』と考える患者が11万5000人いる」とのデータを示したことを挙げ、「医療機関自らがそう思うのであるから、実態はもっと多い」との見方を示しました。

3月4日の中央社会保険医療協議会・総会で厚生労働省が示した資料。患者調査を基に、医療機関は「受け入れ条件が整えば退院できる患者」数を11万5000人と見込んでいると分析

3月4日の中央社会保険医療協議会・総会で厚生労働省が示した資料。患者調査を基に、医療機関は「受け入れ条件が整えば退院できる患者」数を11万5000人と見込んでいると分析

 また、厚労省の「病院報告」では、2014年12月に一般病床の稼働率が平均60.9%に激減しました。その後75%前後に持ち直しますが、一方で、平均在院日数は1.5日延びています。武久会長はこの点にも触れ、「素直に考えれば、14年改定における7対1の経過措置が終了して病床稼働率が大きく下がった。これでは経営が成り立たないので病院側が在院日数を延ばして、病床稼働を維持したとみることができる」と指摘。

2015年1月、一般病床の利用率は10ポイント以上上昇したが、例年12月に利用率が下がる傾向にあるため、長期的視点での分析が必要

2015年1月、一般病床の利用率は10ポイント以上上昇したが、例年12月に利用率が下がる傾向にあるため、長期的視点での分析が必要

2015年1月、いずれの病床でも平均在院日数は軒並み伸びている

2015年1月、いずれの病床でも平均在院日数は軒並み伸びている

 武久会長は「このような姑息(こそく)とも言える手段で病院側が経営を維持しなければならない状態は異常だ。こうした診療報酬で病床数を絞っていく手法では地域医療が崩壊する。急性期から慢性期、慢性期から介護施設に移行する場合の『転換奨励金』を医政局が確保し、医療機関や患者が路頭に迷わないようにすべき」と提案しました。

 「病床過剰」を医療団体のトップが認めるのは極めて異例ですが、武久会長は「事実は認め、その上で(転換奨励金などの)新たな提案をしなければいけない」と強調しています。

 ところで、病床機能の転換を促すために、厚労省は「地域医療介護総合確保基金」を都道府県が設置するための予算を14年度予算から確保しています。

 しかし、武久会長や同協会の池端幸彦事務局長は「基金は都道府県がコントロールしており、総花的に『地域連携ネットワーク』などに補助がなされるケースが多く、個別の病院の機能転換を推進するようには動いていないのが実際だ」と述べ、基金とは別個に「転換奨励金」予算を確保すべきと強調しました。

【関連記事】

16年度改定、急性期病床の「高度な医療必要な患者受け入れ」を評価-中医協総会

日慢協が医療・介護施設の実態を横断的に調査

 診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」の委員である池端事務局長は、「分科会が行う15年度調査では慢性期病床は対象となっていないが、医療療養病床における医療内容などを早急にきちんと調べる必要がある」と述べ、次の2つの対応を取ることを説明しました。

日本慢性期医療協会の池端幸彦事務局長

日本慢性期医療協会の池端幸彦事務局長

▽14年度改定で療養病棟にもDPCデータの提出が認められ、地域包括ケア病棟ではデータ提出が必須となっているので、それらを活用した療養病棟における医療内容の実態を調査分析するよう厚労省に求める

▽厚労省が10年に行った「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査」に類似した調査を日慢協が行い、厚労省の調査から5年後の現時点の状況を把握し、入院医療分科会に提示する(緊急アンケートを6月にも行う)

 この背景について池端事務局長は、▽介護療養の廃止方針は変わっていない▽病床機能分化が進む―ために、今後、医療療養病床が大幅に増えると予想される点を挙げました。さらに、医療法の「療養病床における看護配置の経過措置」(12年3月末時点で、「看護職員4対1、看護補助者4対1」を満たしてない場合、「看護職員6対1、看護補助者6対1」「看護職員と看護補助者を合わせて3対1」という緩和措置を18年3月末まで認める)に関連し、25対1の療養病棟の状況などを調べる必要もあります。

 池端事務局長は、「入院医療分科会は技術的課題の整理のみに議題が絞られているが、こうしたデータを基に、慢性医療の課題などを探っていく必要がある」と述べました。

【関連記事】

5月から入院医療の現状分析や技術的課題の検討始まる―中医協の入院医療分科会

病院ダッシュボードχ 病床機能報告