介護療養の「機能強化型A」、要件の解釈変更で増加―日慢協調べ
2015.5.22.(金)
2015年度の介護報酬改定で新設された単位数の高い「療養機能強化型Aの介護療養型医療施設」の届け出が、厚生労働省が4月28日に示した介護報酬改定Q&A(Vol.2)以降、増加していることが、日本慢性期医療協会の調べで分かりました。
21日に開かれた日慢協の定例記者会見で、清水紘副会長は「Q&A(Vol.2)で療養機能強化型Aの要件について解釈の変更が行われた。これが増加の大きな要因と考えられる」との見解を明らかにしています。
療養機能強化型の介護療養は、「医療ニーズの高い中重度要介護者への対応」や「看取り・ターミナルケア中心の長期療養や、喀痰吸引、経管栄養等の医療処置を担う機能」を重視して15年度改定で新設されました。
機能強化型Aでは、例えば要介護5の入所者で、通常型の1日1251単位よりも5.5%高い1370単位が算定できるなど、高い報酬が設定されていますが、要件も厳しくなっています。具体的には、▽重篤な身体疾患を有する者・身体合併症を有する認知症高齢者の割合が50%以上▽喀痰吸引、経管栄養、またはインスリン注射を実施する者の割合が50%以上▽「回復の見込みがないと医師が診断」「ターミナルケア計画を作成」「医師・看護師・介護職員などが共同してターミナルケアを実施」のすべてを満たす入所者の割合が10%以上―などの基準を満たさなければなりません。
ところで「重篤な身体疾患を有する者」「身体合併症を有する認知症患者」のとらえ方について、厚労省は4月1日付の介護報酬改定Q&A(Vol.1)では、「1人の入院患者が喀痰吸引と経験栄養を実施している場合には、喀痰吸引などを実施している患者1人としてカウントする(喀痰吸引1人、経管栄養1人とはカウントできない)」と説明していました。
しかし、医療・介護現場から「この解釈は厳し過ぎる。これでは機能強化型Aを算定できる病院はごくごく限られてしまう」との悲鳴が上がったため、厚労省は4月28日付の介護報酬改定Q&A(Vol.2)で、「喀痰吸引と経管栄養の両方を実施していれば、2つの処置を実施しているため2人と数える」と考え方を変更したのです。
この解釈変更を受けて、日慢協が開院病院に「介護療養の状況」をアンケート調査したところ、次のような結果が明らかになりました。
▽機能強化型A
(4月1日時点)80病院・6141床で算定→(5月20日時点)110病院・9037床で算定
▽機能強化B(Aよりも要件は緩やかだが、報酬は若干低い)
(4月1日時点)34病院・3518床で算定→(5月20日時点)31病院・2970床で算定
▽通常型
(4月1日時点)108病院・8157床で算定→(5月20日時点)81病院・5797床で算定
機能強化型Aが、30病院・2896床増加しており、その内訳は、機能強化型Bからの移行が13病院、通常型からの移行が17病院です。
日慢協の清水副会長は、機能強化型Aの算定増について「解釈変更で、実質的に算定要件が緩和された影響を考えてよいのではないか」とコメントしています。
このほか解釈変更に伴い、「4月1日にさかのぼって機能強化型Aの算定が認められた」所が16病院あり、内訳は▽東京3▽富山2▽石川2▽京都3▽大阪1▽奈良1▽山口2▽長崎1▽沖縄1―となったことも日慢協の調べで明らかになりました。
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