財政審、診療報酬本体・介護報酬引き下げを提言―吉川会長「本丸は社会保障」
2015.6.1.(月)
財務相の諮問機関である財政制度等審議会(財政審)は1日、政府が6月中にもまとめる財政健全化計画に関する基本的な考え方をまとめ、麻生太郎財務相に提出しました。政府が国際公約に掲げている基礎的財政収支(プライマリーバランス)の2020年度までの黒字化目標を達成させるための財政健全化の道筋を提案していて、医療・介護関連では、診療報酬本体と介護報酬を引き下げてサービス単価を抑制すべきだとしています。麻生財務相は、経済財政諮問会議にこうした内容を報告します。
吉川洋会長(東京大学大学院経済学研究科教授)は同日、財務省内で記者会見し、消費増税に伴う負担増を国民に求める一方で、歳出削減に手を付けなければ国民の理解は得られないと指摘した上で、「歳出では社会保障が本丸になる」との認識を示しました。
財政審がこの日、取りまとめたのは「財政健全化計画等に関する建議」で、社会保障や地方財政、教育など分野ごとの歳出改革の方向性と具体策を盛り込みました。建議では、医療や介護など社会保障関係費の「自然増」について、真にやむを得ないのは「高齢化による伸び」に相当する年0.5兆円弱のみと指摘。その上で、消費税財源の活用分を除く社会保障費全体の毎年の伸びを、20年までこの範囲内に抑えるため、公的保険の給付範囲の見直しやサービス単価の抑制、医療の効率化などに取り組む必要性を強調しました。
このうち、サービス単価抑制の具体策として、診療報酬本体と介護報酬について、「メリハリを付けつつ、全体としてはマイナスとする必要がある」としました。また、薬価調査に基づく薬価引き下げの必要性も指摘し、ここで生まれる財源を診療報酬本体などに付け替えるべきではないとの考えを示しました。
財務省は、高齢化の影響を除く医療費の01年以降の伸びを年平均0.4%と試算していて、建議では、こうした実態を踏まえて診療報酬改定の在り方を検討していく必要があると強調しました。
サービス単価の抑制についてはこのほかにも、16年度に予定している次の診療報酬改定に向けて、引き続き論点を深掘りする方針を示しました。財政審では、今年秋ごろには16年度予算編成に対する考え方をまとめる方針で、これに向けて、今後はより踏み込んだ内容を打ち出す可能性があります。
一方、保険の給付範囲の見直しでは、国民皆保険を維持するためには一定額を常に保険免責にするか、月額上限の範囲内で一定額の窓口負担を求める新たな仕組みの導入を提案しました。公的保険の抜本見直しを実現できずに幅広くカバーして国民皆保険制度を持続させるなら、「サービス単価をさらに抑制することが必要」だとも指摘しました。
このほか医療提供体制については、診療報酬の点数が高い「7対1入院基本料」を算定する病床が過剰な高コスト構造になっているとあらためて指摘し、回復期など急性期以外のニーズの今後の高まりに対応する形に見直すべきだと提言しました。
さらに、人口当たりの病床数が多い都道府県ほど1人当たりの医療費や平均在院日数、入院受療率が高く「供給が需要を生む構造」になっていて、「適正化の余地が大きい」との見方を示しています。
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