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メディ・ウォッチはGemMed(ジェムメド)に生まれ変わりました 運営会社 GLOBAL HEALTH CONSULTING

医療提供体制を適正化する6つの条件―GHC、魂の提言(1)

2015.6.28.(日)

 持続可能か危ぶまれる日本の医療。医療提供者たちは今、どうすればいいのか――。

 現役世代が高齢者世代を支える負担がピークに達し、現状のままでは社会保障財政が破綻しかねない2025年。GHC社長の渡辺さちこと、米国グローバル財団のアキよしかわは、この年を乗り越えて日本の医療を持続可能にする提言や11の病院改革事例などを盛り込んだ「日本医療クライシス―『2025年問題』へのカウントダウンが始まった」を上梓しました(関連記事はこちら)。

 本書のメーンテーマ「第4章 日本の医療を持続可能にする3つの提言」の一部を紹介します。1回目は「医療提供体制を適正化する6つの条件」です。

(1)DRGを拡大せよ

 入院医療費を適正化するには、「急性期病床は急性期の病態に使用する」という原則を徹底することが必要です。急性期の段階を乗り越えた患者が、コストの高い急性期病床からいち早く回復期などの病床へ転棟したり、在宅復帰したりすることは、入院医療費を抑制する上で最も効果的な視点だからです。つまり、急性期病床における在院日数の短縮が必要なのです。

 その有効策の1つと考えられるのが、DRGの拡大です。DRGは米国などで導入されている制度で、1日当たり包括払いである日本のDPCに比べて、1入院当たり包括払いです。1日当たりだと必要以上に長く患者を入院させるインセンティブが働いてしまいますが、1入院当たりであればいち早く転棟や退院させようとするインセンティブが働きやすいのです。

 日本でもDRGと同じ「短期滞在手術等基本料3」(短手3)がありますが、これを治療プロセスの標準化が可能な疾患にさらに拡大することは、即効性のある医療費抑制策です。DRGを拡大することは、医療費が最も多く掛かるICU(特定集中治療室)など高度急性期病床の適正使用を促すと考えられます。本書では、次期診療報酬改定でDRG化される可能性が高い手術や検査の一覧も掲載しています。

(2)「素泊まり入院」をなくせ

 急性期病床の在院日数を短縮するには、「素泊まり入院」をなくすことも有効策の1つです。素泊まり入院とは、ほとんど医療行為を行わない入院のことです。

 「投薬、注射、処置、検査、画像診断」の5つの医療資源がいずれも投入されていないケース(定義1)、このうち投薬を除く4つの医療資源投入がないケース(定義2)の2つについてGHCが調査(14年7-9月、400病院を退院した約82万症例のデータを使用)したところ、素泊まり入院の割合は定義1で平均5.4%、定義2で平均22.2%を占めました。

(3)「看護必要度」の生データ提出を義務付けろ

 「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)は、高コストな急性期病院の収益の柱となる「7対1看護体制」の重要な施設基準の1つです。ただ、病院が測定する看護必要度の精度に重大な問題があることに、GHCは気付きました。

 看護必要度は、患者のモニタリングや処置から患者の重症度を測るためのデータですが、現状ではこのデータは病院が自己申告する仕組みで、過少申告や過剰申告が驚くほど多いことが分かっています。看護必要度データの精度の問題が、7対1看護体制が本当に必要な病院で看護師が不足したり、本当は7対1看護体制が不要なのに高点数の診療報酬を獲得するため手厚い看護配置を敷いたりする病院が少なからずあるということです。

 GHCではこうした看護師のミスマッチが起こらないよう、DPCデータと同じように看護必要度の生データの提出を義務付けるべきだと主張しています。

(4)「診療密度」の誤ったメッセージを是正せよ

 病院の「急性期らしさ」を測る指標の1つに「診療密度」(1日当たり包括範囲出来高平均点数)があります。診療密度は高度医療を提供するDPCII群の病院を決める実績要件の1つですが、一方で医療を過剰に提供したり、低コストな後発医薬品の導入に消極的だったりする病院でこの値が高く計算されるという矛盾をはらんでいます。

 本来、診療密度の要件によって、在院日数を短縮させ、出来高換算で高点数の診療を増やす方向に誘導することが期待されていました。しかし、実際には「在院日数は短縮させずに診療密度を上げる行動」も見受けられるようになりました。こうした不適切な「操作」は、DPCデータを活用すれば是正できます。厚生労働省には不適切な「操作」を是正するためにも、適切な対応に期待します。

(5)術後患者の入院受け入れの妥当性を検証せよ

 術後患者の入院受け入れについて、必ずしも必要とは考えられない事例もあることも検証すべきです。

 例えば、「短手3」にある白内障の手術は、国内でも約半数が外来で実施されています。しかし、厚労省が公開している13年度のDPCデータを見ると、1541病院のうち16病院で手術のない入院を受け入れています。術後の観察入院と考えられますが、急性期病床をこのような目的で使用することに疑問を感じずにはいられません。

(6)大病院は入院特化と専門外来のみに

 患者の「大病院志向」も無駄な医療を発生させ、医療費負担を高めている要因の1つです。こうした患者の大病院志向を是正するためには、病院側よりも患者側への働き掛ける方が有効に働く可能性があります。

 病院へのペナルティーでは、外来単価が下がる分、患者の数を増やして収入を維持しようとするなど思わぬ行動を誘発する可能性が考えられます。一方、病院の診療報酬を減額すると、患者側の負担が軽く済むので大病院志向の抑止力につながらないかもしれません。現時点では、紹介状を持たない患者への定額負担の導入が注目されていますが、患者教育のさらなる充実やメディアの果たす役割に期待します。

【連載】GHC、魂の提言
Vol.1◆医療提供体制を適正化する6つの条件
Vol.2◆入院医療の外来シフトを推進せよ
Vol.3◆「医療の価値」を高める政策の姿とは(仮、7/12掲載予定)