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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

相澤病院をデータで徹底分析(1)-手術室は? 医療連携は?

2015.6.23.(火)

 GHC社長の渡辺幸子は18日、長野県・軽井沢で開かれた日本病院学会のランチョンセミナーで、急性期病院のトップランナーの1つとして全国的に知られる相澤病院(同県松本市)の運営実態を徹底分析し、「“できているはず”の経営・マネジメント」「機能分化と連携」「地域医療構想を視野に入れた自病院のポジショニング」という3つのテーマに沿って課題を洗い出しました。さらに、全国的にも珍しい病院の分割に踏み切った佐久総合病院の現状も分析しました。

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手術室のマネジメントは「極めて良好」

2015.6.18医療行政をウォッチ 日病学会③
 ランチョンセミナーの座長はGHCのマネジャー・井口隼人が務めました。また、一連の分析にはGHCが開発した次世代病院経営支援システム「病院ダッシュボード」の機能を使いました。

 まずは手術室の運営実態の分析です。相澤病院では2000年代前半には、手術室の稼働率が午前中に極端に低く、午後に入ってピークを迎え午後5時以降に手術がずれ込む、という日本の病院に典型的な運用でしたが、予定手術のマネジメントを徹底させたことで、4-5年をかけて大幅に改善しました。病院ダッシュボードの「手術分析」で見ると、現在では午前9時ごろに稼働率の最初のピークが来て、「昼の谷間」を挟んで午後2-3時に2回目のピークを迎え、午後5時以降の稼働は落ち着くという好循環のパターンが定着しつつあり、曜日によるばらつきもほぼ解消できています。

2015.6.18医療行政をウォッチ 日病学会①
 院内に8室ある手術室全体での稼働率は現在、月-金曜を通じて70%前後で推移していて、渡辺は、相澤病院による手術室のマネジメントが「極めて良好な状況にある」と評価しました。ただ、「昼の谷間」が見られたり、手術室によって稼働の変動が大きい部分もあったりするため、改善の余地がまだあるとも指摘しました。=図表1=。

 手術室では医療資源の投入が集中するだけに、渡辺はここが「急性期の心臓部」と指摘しました。その上で、「ブラックボックス」になりがちな手術室の稼働状況を「見える化」して、予定手術をどれだけ緻密にマネジメントできるかが急性期病院にとって重要な要素だと強調しました。

薬剤管理指導に年間7500万円のポテンシャル

 一方、薬剤管理指導や栄養管理指導など看護部、薬剤部、リハビリテーション科、栄養科などがチームで取り組む指導管理の取り組み状況を、病院ダッシュボードの「チーム医療plus」の機能を使って分析した結果、相澤病院では順調に取り組めている部分と改善を見込める部分がありました。

 例えば、医薬品の情報などを薬剤師が収集・伝達した場合に算定する「薬剤管理指導料2、3」の算定率は69.3%(14年4月-15年3月)で、この期間の全病院の平均56.2%を上回りました。また、特別食加算を算定可能な疾患のうち実際に算定していた割合は全病院の平均62.4%に対して相澤病院では平均72.7%と上位に位置しています。

 これに対し、退院後に必要な介護サービスを早い段階から見極めた場合に算定する「総合評価加算」の算定率は、全病院の平均50.4%に対し、相澤病院では14.4%で、158病院中134番目という結果でした。

 薬剤管理指導料2、3の算定率を最高の病院並みに引き上げられれば、相澤病院では年に7500万円程度の増収を見込めることが分かり、渡辺は「相澤病院ではかなりできているが、まだまだポテンシャルがある」と指摘しました。

 渡辺は、機能評価係数IIの評価を確保するための取り組みが今後は極めて重要になるとも強調しました。DPC対象病院の基本的な診療機能を評価する「暫定調整係数」が、18年度にかけて「基礎係数」と「機能評価係数II」に段階的に置き換わるためです。

 これまでのペースで置き換えが進むと、機能評価係数IIの評価は16年度には現在の「1.5倍プラスアルファ」に増えます。さらに、置き換えが完了する18年度には「2倍プラスアルファ」になる見通しです。相澤病院もこの点を重視していて、機能評価係数IIの7項目の合算値は現在、6.11%で全国141位です。

 中でも、14年度に導入された「後発医薬品係数」の評価のベースとなる後発薬の使用割合(数量ベース)は14年4月の38.1%から大幅に上昇し、同年8月以降は80%台で推移しています。ただ、診療科によっては後発薬の割合が足踏み状態のケースもあり、一層の使用促進の余地があることも分かりました。

地域の医療機関へ逆紹介を進めながら強化する連携体制

 相澤病院とほかの医療機関との連携の状況を把握するため、患者の退院先を病院ダッシュボードの「マーケット分析」で分析すると、自病院の外来(「自院外来」)が47.2%で、全病院の平均68.9%を大きく下回りました。これに対し、ほかの医療機関の外来(「他院外来」)と「転院」が計37.9%(全病院19.7%)で、他院への紹介が進み、約500病院との比較ではトップ10%タイルに位置していることが分かります。
2015.6.18医療行政をウォッチ 日病学会②
 さらに、もともとほかの医療機関から紹介された退院患者を逆紹介した割合(「他院紹介あり症例を他院に紹介した割合」)と、ほかの医療機関からの紹介がなかった退院患者を逆紹介した割合(「他院紹介なし症例を退院時に他院紹介した割合」)をほかの病院と比較分析すると、どちらも全病院の平均を大きく上回りました=図表2=。

 これらは、相澤病院によるほかの医療機関との連携体制の構築が進んでいることを示す結果です。

※日本の医療の課題について検証した「日本医療クライシス」(著者:渡辺さちこ/アキよしかわ 幻冬舎メディアコンサルティング刊)では相澤病院、佐久総合病院の事例も取り上げています(詳細はこちら)。ぜひご覧ください。

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解説を担当したコンサルタント 井口 隼人(いぐち・はやと)

iguchi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
筑波大学生物学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。病床戦略支援、人財育成トレーニング、DPC分析、がん分析、臨床指標分析などを得意とする。東京医科大学病院(事例紹介はこちら)、済生会宇都宮病院(事例紹介はこちら)、相澤病院、旭川赤十字病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「ダイヤモンドQ」(関連記事はこちら)など雑誌、テレビ、新聞などへのコメントも多数。
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