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相澤病院をデータで徹底分析(2)-機能分化は? 医療のコストは?

2015.6.23.(火)

地域の病床ニーズは3割減の見込み、機能分化に先手

 相澤病院がある松本医療圏の市場分析の結果も示しました。病院ダッシュボードの「マーケット分析」で見ると、相澤病院は現在、入院全症例ベースでの圏内のシェアを信州大学医学部附属病院と二分している状況です。圏内の入院需要は15年から25年までに8.7%、35年までに13.8%増えると見込まれます=図表1=。

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2015.6.18医療行政をウォッチ 日病学会⑤
 ただ、DPC制度に参加している圏内の9病院の平均在院日数が13年時点の13.1日から、将来的に9日前後にまで短縮すると、急性期病床のニーズは25年には31.3%ほど逆に減少する見通しです。その上さらに入院医療の外来シフトが進めば、病床ニーズはますます減るため、渡辺は「病床の再編は必須」だと強調しました(関連記事病院大再編促す地域医療構想を乗り切る3つの条件、医療マネ学会でGHCが講演)。

 こうした中で相澤病院では、14年6月に回復期リハビリテーション病棟(50床)を急性期病床から機能分化させるなど、先手を打って病床再編を進めています。年度内には、地域包括ケア病棟のみの新病院(28床)も開院する予定です。

 相澤病院がGHCと共同で行った12年末の研究では、内科系疾患での急性期の病態を「入院期間IIIの平均資源投入金額(=状態が安定しているライン)を入院日から連続して超えている日数」と定義しました。一方、外科系疾患では、退院症例が1割を超える時点までを急性期の病態とみなし、これを基に、全502床の約半分に相当する255床を急性期病床の本来の必要数と算出しました。

 回復期リハ病棟の新設はこの結果を受けたもので、急性期から回復期までの治療を終えた脳血管系疾患の合計在院日数(同年8-10月)は平均55.3日と、全国ベースの平均120.8日(13年)を大幅に下回りました。整形外科系疾患の合計在院日数も47.0日(全国平均は80.9日)、廃用症候群でも40.0日(同82.8日)という結果で、同病院による効果的・効率的な医療の提供を示唆する結果です。
2015.6.18医療行政をウォッチ 日病学会⑥
 また、大腿骨頸部骨折で急性期病院からほかの病院の回復期リハ病棟に転棟した場合の医療費の合算は、全国ベースの平均351万円程度に対し、相澤病院で急性期と回復期のリハビリを完結させたケースでは平均210万円程度、相澤病院で急性期リハを提供しその後、在宅で訪問リハを行ったケースでは平均178万円程度にとどまりました=図表2=。

 渡辺は、このように急性期病床を退院した患者に在宅でリハビリを提供するケースについて、「患者さんからすると、入院期間が非常に短くなってしかも医療費の負担も少なく済んでいる」と効果を強調しました。

佐久総合病院、病院分割に早くも効果

 渡辺は、14年3月に佐久医療センターを本院から分割させた佐久総合病院にも言及しました。同病院による分割は、佐久医療センターを重症な症例の診療に特化させる一方、本院では比較的軽症な症例をカバーすることで、従来の「病院完結型医療」から「地域完結型医療」にシフトするのが狙いです。

 佐久医療センターでは高度な医療を提供するDPC病院II群や、診療所との懸け橋的な役割を果たす地域医療支援病院としての承認の取得を目指しています。病院の分割に伴って、本院では回復期リハ病棟を40床から48症に増床したほか、地域包括ケア病棟を40床整備するなど、病院と地域をつなぐ中間施設的機能を目指しています。

 佐久医療センターのDPC病床の平均在院日数は、14年7-12月には12.6日で、分割前の前年同期の15.5日から3日近く短縮しました。入院期間Ⅱ(DPCごとの平均在院日数)を超えて退院する症例割合も従来の36.0%から26.9%に減少し、機能評価係数IIの効率性係数の値が0.642%から1.045%にアップ。症例当たりの1日単価は6万484円から7万5518円に増え、さらに全身麻酔の手術の実施症例も同じ期間に1470件から1574件にまで増加しました。

 また、DPC対象病院がII群に入るためにクリアする必要がある6つの実績要件の値も分割後にそれぞれ順調に上昇していて、渡辺は「ほかのII病院の病院と比べても全くそん色ない。実績要件の定義が変わらなければ来年(16年度)の改定で希望通りII群に入る可能性が高いだろう」との見通しを示しました。

冠動脈ステント同じセットなのに7万円の価格差

 渡辺はこのほか、GHCが新たにリリースした病院ダッシュボードのオプションサービス「材料ベンチ」を使い、自治体病院による医療材料の消費量と購入単価を比較分析した結果も紹介しました(関連記事病院大再編促す地域医療構想を乗り切る3つの条件、医療マネ学会でGHCが講演)。

 材料ベンチは、全国2100病院の医療材料購入データを使って、購入量や購入金額を医療材料の銘柄ごとに比較分析できるサービスです。これを使って、冠動脈用ステントセットの購入単価を比較分析したところ、同じセットでも病院によって単価に7万円ほどの差があることが分かり、渡辺は「ステント1つだけでもこれだけのコスト削減ポテンシャルがある。医療材料の購入単価と消費量に必ずしも相関関係はない」と話しました。

※日本の医療が抱える課題をより詳細かつ広範囲に検証し、11病院の経営改善事例などをまとめた「日本医療クライシス」(渡辺さちこ/アキよしかわ著、幻冬舎メディアコンサルティング刊)がこのほど上梓されました(詳細はこちら)。相澤病院と佐久総合病院のケーススタディーも取り上げています。ぜひご覧ください。

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解説を担当したコンサルタント 井口 隼人(いぐち・はやと)

iguchi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
筑波大学生物学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。病床戦略支援、人財育成トレーニング、DPC分析、がん分析、臨床指標分析などを得意とする。東京医科大学病院(事例紹介はこちら)、済生会宇都宮病院(事例紹介はこちら)、相澤病院、旭川赤十字病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「ダイヤモンドQ」(関連記事はこちら)など雑誌、テレビ、新聞などへのコメントも多数。