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入院医療の外来シフトを推進せよ―GHC、魂の提言(2)

2015.7.7.(火)

 持続可能か危ぶまれる日本の医療。医療提供者たちは今、どうすればいいのか――。

 現役世代が高齢者世代を支える負担がピークに達し、現状のままでは社会保障財政が破綻しかねない2025年。GHC社長の渡辺さちこと、米国グローバル財団のアキよしかわは、この年を乗り越えて日本の医療を持続可能にする提言や11の病院改革事例などを盛り込んだ「日本医療クライシス―『2025年問題』へのカウントダウンが始まった」を上梓しました(関連記事はこちら

 メディウォッチでは、本書のメーンテーマ「第4章 日本の医療を持続可能にする3つの提言」の一部を紹介しています。第2回目は「入院から外来へのシフトを進めるための3つの方策」です。

(1)短手3の点数引き下げと同時に、外来点数を引き上げよ


手術のイメージ(写真AC)

 2014年度診療報酬改定では、標準化の進んだ医療技術について全包括支払いの「短期滞在手術等基本料3」(短手3)が導入されました。「DRG本格導入の先駆け」と言われる仕組みです。

 この短手3の点数設定について、渡辺は「甘すぎる」と指摘します。例えばD413「前立腺生検法」を外来で行った場合、初診料や検査料を積み上げた医療機関の収入は3万1584円となります。しかし、この検査を入院(短手3)で行った場合には11万7370円の報酬が得られ、これはGHCの分析によると「3日間入院した場合の出来高点数に相当する」ことが分かりました。両者には3.7倍の格差があります。

 もちろん、入院にはリスクの高い症例が集まるため一定程度高い報酬設定がなされることは当然ですが、この格差の下では「外来へのシフト」はなかなか進まないでしょう。

 渡辺は、「入院にはリスクの高い症例が集まる」「入院では相応のコストが掛かる」とした上で、「短手3の点数を大幅に下げ、一方で外来の点数を引き上げることにより、外来へのシフトを進める必要がある」と提言します。

(2)「全病院患者構成補正」を見直せ

 現在、DPCの機能評価係数IIの1つである「効率性係数」は、在院日数の短縮に向けた努力をしている病院を評価するものです。しかし、疾患によって平均在院日数は異なりますから、単純に平均在院日数のみで比較すると「在院期間が短い疾患の患者」割合の高い病院が有利になってしまいます。こうした不合理を是正するために、効率性係数を計算する際には、病院ごとに異なる疾病構成を調整するために「全病院患者構成補正」が行われます。

 ところで、あるDPCのII群病院では、大腸がんの術後化学療法の9割を外来で行っており、入院は「リスクが高くやむを得ない症例」に限定しています。患者のQOLや、医療費の適正化など、さまざまな要素を考慮した上でのことです。

点滴イメージP

 しかし、リスクが高い症例は必然的に入院期間も長くなるため、全病院患者構成補正を行うと、この病院の効率性係数は低くなってしまうのです。

 「これでは経営的に不利だ」として、化学療法の外来シフトを躊躇する病院も出てきそうです。DPCのII群病院の要件である「診療密度」についても、同様のジレンマがあります。

 渡辺は「全病院患者構成補正という『公正』な仕組みが、外来シフトを妨げる要因にもなっている」と指摘し、何らかの対策を採る必要があると訴えます。

(3)「外保連手術指数」を強化せよ

 さらに渡辺は、外保連手術指数の強化を図るべきとも提案します。

 DPCII群の要件である「高度な医療技術の実施」は、外保連手術指数と手術件数をベースに判断されます。外保連手術指数は、「難易度の低い手術を外来にシフトすれば、病院の評価が上がる」構造になっているので、これをさらに強化することで外来シフトが進むと考えられるからです。

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【連載】GHC、魂の提言
Vol.1◆医療提供体制を適正化する6つの条件
Vol.2◆入院医療の外来シフトを推進せよ
Vol.3◆「医療の価値」を高める政策の姿とは(仮、7/12掲載予定)