ウシ由来の補填材用いた半月板治療、先進医療に導入されるが、安全性を慎重判断―中医協総会
2015.7.8.(水)
新たに「欠損を有する半月板損傷に対するコラーゲン半月板補填材を用いた治療法」が先進医療に導入されます。
重度の半月板損傷では「切除術」が用いられますが、多くの症例では、将来的に変形性膝関節症を続発してしまいます。そこで、薬事法の承認を受けていない「コラーゲン半月板補填材」を用いて半月板を修復することで、関節軟骨が保護され変形性膝関節症の防止が期待できるため、先進医療への導入が認められました。
ただし、長期観察データがないことから、最初の5例について8週間後に安全評価を行い、その結果によっては臨床研究全体の中止を含めた計画の見直しを行うことなどが条件となっています。
重度の半月板損傷で、縫合では本来の形状に修復できないほどの欠損がある場合、現在は半月板を切除する以外に有効な治療法がありません。しかし、この方法では中長期的に変形性膝関節症を続発する可能性が高いことから、有効な温存治療法が模索されていました。
今般、ウシの組織由来のコラーゲン半月板補填材を用いて欠損した半月板を修復し、温存する治療法を大阪大学医学部附属病院が開発し、先進医療として申請されました。本技術と術後24週間のリハビリテーションによって、欠損部に半月様の組織が再生され、関節反骨保護の効果が表れると期待されています。35例の症例にこの治療を試み、有効な結果が得られた場合にはさらに治験を行い、その後、薬事承認を申請する考えです。
しかし、ウシの組織由来の半月板補填材は、これまでヒトに投与されたことがない、いわゆる「first in human」の医療材料であり、安全性に不安が残ります。
このため、先進医療会議でも「臨床試験は慎重に、かつ倫理的および科学的に行われる必要がある」などの条件を付した上での承認となりました。
大阪大学医学部附属病院では、こうした指摘を重く受け止め次のような対応を取るとしています。
▽安全性の観点からの試験継続の可否判断基準を設ける
▽最初の5例について術後8週後に安全性を評価し、試験継続の可否を判断する
▽安全性に問題がある場合には、臨床研究全体の注しを含めて、計画を見直す
▽半月板修復の程度を、スクリーニングおよび術後24週にMRIを用いて評価する
本技術の先進医療導入は、8日の中央社会保険医療協議会総会に報告されましたが、花井十伍委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は「これは第一層臨床試験を、保険財源を使って行うものと解せるが、先進医療と臨床研究との切り分けを明確にする必要がある」と指摘しています。
この日の中医協では、2014年度に実施された前回の診療報酬改定の結果検証に関する調査票も了承されました。
06年度の診療報酬改定(調査対象は04年度改定)から、テーマを絞って改定の影響・効果を調べ、その結果を次の改定に生かす取り組み(結果検証調査)が行われています。14年度改定については、影響・効果が出やすい分野を14年度に、影響・効果が出るまでに時間のかかる分野を15年度に調査します。
15年度には7つの調査が行われ、今回、そのうちの2つの調査票が了承されました。微修正の上、7月中に対象医療機関に発送されます。残りの5つ調査については、6月24日に開かれた前回会合で既に了承されています。
▽胃ろうの造設などの実施状況(前回改定で厳しくなった胃ろう造設や、経口摂食への取り組みなどを調べる)
▽後発医薬品の使用促進策の影響および実施状況
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