財務省・宇波主計官、療養病棟の報酬引き下げ主張―医療区分1は介護施設並みに、16年度改定
2015.8.3.(月)
財務省主計局の宇波弘貴主計官(厚生労働第一担当)はメディ・ウォッチのインタビューに応じ、慢性期の入院患者を受け入れる療養病棟の入院基本料を引き下げる必要があるとの認識を示しました。中でも医療の必要性が低い「医療区分1」の受け入れが多い病棟については、人員配置基準と報酬を介護施設並みにすべきだと指摘していて、2016年度の診療報酬改定での療養病棟入院基本料の見直しを求めています。医療提供体制の再編が本格化するのに併せて、医療の必要性が低い患者の受け入れを介護施設などに円滑にシフトさせ、医療費の抑制につなげる狙いです。
宇波主計官はまた、療養病棟入院基本料に導入されている医療区分の取り扱いを見直す必要性も指摘しました。医療区分は、療養病棟の入院患者に医療がどれだけ必要かを判断するための仕組みで、入院患者の病気や状態、必要な医療処置などが判断の基準です。例えば難病指定されているスモンの患者や24時間持続点滴が必要な患者は、医療の必要度が最も高い医療区分3とみなされ、療養病棟入院基本料も高く設定されています=図表=。
しかし、各都道府県の入院受療率を医療区分ごとに見ると、医療必要度が比較的高い医療区分2や3としての算定が多く、しかも地域の格差が特に大きいことが分かっていて、財務省では、入院患者の状態や必要な医療処置の解釈や取り扱いが地域によって異なることが一因だととらえています。
宇波主計官は「多くの入院患者は本来、医療区分1に該当するのではないか」「(こうした状況を解消させるには)現在の医療区分2と3の要件を厳格化する必要がある」などと述べました。
16年度診療報酬改定に対するスタンスは、財務相の諮問機関「財政制度等審議会」(財政審)が11月ごろにまとめる16年度予算編成の考え方(秋の建議)に盛り込むことになっていて、財務省ではこれに併せて論点の具体化を進める方針です。
月刊「メディ・ウォッチ」の2015年8月号(8月10日発行予定)に掲載する予定です。
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