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重症患者の受け入れ割合、看護配置と相関なし-看護必要度勉強会で分析

2015.8.28.(金)

 看護必要度やDPCのデータを使い、参加病院の看護スタッフの勤務実態などをベンチマーク分析する「看護必要度勉強会」をGHCが27日、福島県郡山市内で開きました。全国18の急性期病院の循環器内科、消化器外科、整形外科を対象に、「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)が高い重症患者の受け入れの割合と看護師の配置状況を分析した結果、両者に相関関係は認められませんでした。看護必要度は本来、それぞれの入院患者に医療処置や看護ケアがどれだけ必要かを測る概念ですが、看護スタッフの配置を決める際、実際にはこの値があまり考慮されていないことを示唆する結果です。

■診療報酬に配慮して配置決めるケースも

2015.8.28GHCをウォツチ、医療現場をウォッチ 看護必要度勉強会① 看護必要度勉強会は、看護業務の改善(標準化)につなげる狙いでGHCが滋賀医科大医学部付属病院と共同で原則年1回開き、看護必要度やDPCのデータを使って参加病院の看護業務の状況を比較分析しています。

 6回目となる今回は、「看護必要度×業務量データから見えるもの」がテーマでした。14年10月-15年3月の看護必要度データを全国の18病院が提出。これを使ってGHCが各病院の3診療科を対象に、看護スタッフの勤務実態を比較した結果や、看護の業務量を調査した結果を報告しました。参加病院の業務量調査を実施したのは今回が初めてです。

 まず、非常勤を含む看護師や看護助手の配置人数と重症患者の受け入れ割合を分析したところ、これらに相関は認められませんでした。さらに、重症患者の割合と看護スタッフの1勤務(日勤)当たりの労働時間との間にも相関がないことが分かりました=図表1=。

20150827_第6回看護必要度共同勉強会_分析資料_社内版①

 看護必要度は入院患者に医療的な処置や看護ケアがどれだけ必要かを数値化したもので、呼吸ケアを行ったかどうか、心電図モニターを使用したかなどを記録する「患者のモニタリングおよび処置等」(A項目)と、寝返りを打てるか、座位を保持できるか、車いすなどに移乗できるかといった身体機能を評価する「患者の状況等」(B項目)の2つの観点から評価します。

 本来は入院患者の看護の必要量を判断するツールですが、08年度の診療報酬改定に伴って7対1入院基本料の算定要件に、この値が高い重症患者を一定割合以上、受け入れることが組み込まれました。これをきっかけに現在では、診療報酬とリンクして議論されたり、急性期病院の機能の高さを示す指標として使われたりすることが多くなっています。

 今回、看護必要度と業務時間の関係を詳しく分析すると、循環器内科では、A項目の得点が高いほど業務時間が長くなる傾向だったのに対し、整形外科での業務時間はB項目の得点に左右されやすい可能性があることが分かりました。消化器外科では一定の傾向は認められませんでした。

 参加病院によるグループディスカッションでは、入院患者の身体機能を評価するB項目の通年での点数を踏まえてスタッフを配置しているという病院もありました。ただ、入院患者の状態よりも7対1入院基本料の算定や、病床の稼働状況に配慮して配置を決めているという病院が大半でした。

 これらの結果を報告したGHCコンサルタントの簗取萌は、「(重症患者の受け入れ割合が)7対1入院基本料の要件として使われたことで、看護必要度の意味合いは、本来的な位置付けから変わってきている」と述べました。

■記録業務が現場の負担に、業務効率化のカギはベンチマーク分析

 看護業務の標準化と効率化の糸口を探るため、この日の勉強会では、業務状況の比較分析の結果も報告しました。各病院の看護スタッフによる1日の業務内容を「見える化」すると、一連の看護業務の中でも、バイタルサインの推移などを書き込む経過表の作成や看護必要度の入力といった「記録業務」にかける時間のウエートが最も大きいことが分かりました。これ以外の業務で現場の大きな負担になっているのは、経過観察やナースコールへの対応、報告業務などです。

 また、記録業務にかける時間には病院によって非常に大きな格差があり、最短の病院が1人1日当たり30分台だったのに対し、中には約140分をかけているケースもみられました=図表2=。記録業務の中身に踏み込んで詳しく分析すると、経過表の作成とともに「その他の記録業務」の負担が大きいことが分かり、分析結果を報告したGHCコンサルタントの澤田優香は、「その他の記録の中に何が含まれるのかを把握できると、業務の効率化につながるのではないか」と述べ、業務効率化のカギはベンチマーク分析だと強調しました。

20150827_第6回看護必要度共同勉強会_分析資料_社内版②

 このほか病院ごとの看護業務の分析では、記録のボリューム自体が大きかったり、新人教育やナースコールへの対応などに追われて、記録をつけ始めるのが午後4時以降にずれ込んだりする病院では、長時間の残業が発生しやすいことが分かりました。

 グループディスカッションでは、看護スタッフが2人1組になってケアと記録を同時にこなすパートナーシップナーシングシステム(PNS)を採用しているという病院もありました。ただ、以前はPNSを取り入れていたという東北地方の病院では、短時間正規雇用の普及など勤務形態の多様化に伴って、このシステムを維持できなくなったということです。

 記録業務について、参加者からは「看護必要度のセミナーに行くと、実際にやったことを記録しないと看護は評価されないし、(トラブルが起きたとき)自分たちの身を守るのは記録だけと言われる。それだと(業務の)簡素化はなかなか難しいが、標準化や効率化をなるべく考えたい」という声もありました。

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分析と発表を担当したコンサルタント 簗取 萌(やなとり・もえ)

yanatori 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルタント。看護師、経営学修士(MBA)。
国立看護大学校看護学科卒業。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。ナショナルセンターの集中治療室での勤務を経て、MBA取得後、現職。DPC環境下における病院戦略、クリニカルパス、看護必要度などデータに基づいた実証的分析、クリティカルケア領域の経験を踏まえた実践的な分析などを得意とする。名古屋第一赤十字病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「AERA」など雑誌(掲載報告はこちら)、新聞への取材協力多数。「月刊ナースマネジャー」に「一歩先を行く! 師長のための医療看護トレンドナビ」を好評連載中。
澤田 優香(さわだ・ゆうか)

yanatori 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルタント。看護師、保健師。
聖路加看護大学卒業後、集中治療室の勤務を経て、GHCに入社。看護必要度分析、看護業務量調査、DPC別診療科検討、病床戦略分析、マーケット分析などを得意とする。数多くの医療機関のコンサルティングを手掛けるとともに、社内のアナリスト育成や看護関連プロジェクト(看護必要度勉強会など)などにも精力的に取り組む(東京医科大学病院の事例紹介はこちら)。