医薬品の市場拡大再算定、PhRMAやEFPIAは撤廃を強く要望―中医協
2015.8.28.(金)
2016年度には薬価と保険医療材料の算定ルールも見直されます。26日の中央社会保険医療協議会では、薬価については業界団体からのヒアリングを実施し、保険医療材料については保険医療材料専門組織から意見発表が行われました。
薬価に関するヒアリングは、中医協の薬価専門部会で行われています。
医薬品メーカーなどが加入する日本製薬団体連合会(日薬連)は、主に次の2点を要望しました。
▽新薬創出・適応外薬解消等促進加算ルールの維持・継続
▽先駆導入加算の加算要件見直しと加算率の拡大
前者の新薬創出・適応外薬解消等促進加算は、10年度の薬価改正で試行導入されたもので、「先発品の薬価を一定程度維持することで先発品メーカーの体力を維持し、新薬などの開発を推進してもらう」ために導入されました。▽新薬として薬価収載された既収載品で、後発品が薬価収載されていない(薬価収載後15年まで)▽市場実勢価格と薬価との乖離率が、全薬価収載品の乖離率の加重平均値を超えない―先発品について改定前薬価の80%を維持する仕組みです。
中医協では加算対象を「真に医療の質の向上に貢献する医薬品」に限定してはどうかという意見も出されていますが、日薬連は「未承認薬などの解消は進んでおり、『真に医療の質の向上に貢献する』という点は現行ルールで担保されている」として、加算対象を制限すべきでないと強調しました。前回改定では「本格導入」を求めていましたが、今回は「現行(試行)の継続」とやや控えめな要望にとどめています。
また後者の先駆導入加算は、前回14年度の薬価改正で導入されたもので、「世界に先駆けて日本で承認を取得した医薬品」の価格を高く評価することで、新薬創出を促進しようという狙いがあります。
これについて日薬連は、加算の要件に「画期性加算・有用性加算(I)の適用」があるがこれはメーカーには予見できないとして改善を求めています。同時に加算率を現行の10%から引き上げることも要望しました。
またPhRMA(米国研究製薬工業協会)からは、次の3点が要望されました。
▽新薬創出・適応外薬解消等促進加算ルールの維持・継続
▽市場拡大再算定の撤廃、あるいは類似薬効比較方式で算定された医薬品に対象を限定する
▽17年の消費増税においては、市場実勢価格に基づく薬価改定は行うべきではない
このうち市場拡大再算定は、いわば「想定をはるかに超えて売り上げた医薬品の価格を特別に引き下げる」仕組みです。この点については「市場から評価された、質の高い医薬品の価格を強制的に引き下げる仕組みは、優れた医薬品を開発しようという意欲を失わせる」というメーカーサイドからの強い批判があり、今回、PhRMAも同旨の関係を改めて強調しました。
一方、EFPIA(欧州製薬団体連合会)の要望は次の4点です。
▽新薬創出・適応外薬解消等促進加算ルールの安定継続
▽新薬の加算評価の充実
▽市場拡大再算定の廃止
▽隔年での薬価改定継続(毎年の薬価改定は行わない)
後発品のシェアを数量ベースで80%に引き上げる方針が固まった中で、先発品メーカーは長期収載品(先発品)の売り上げが減少すると想定し、こぞって新薬創出等加算の継続などの要望を行っています。
これに関連し中川俊男委員(日本医師会副会長)は「後発品よりも、長期収載品の方が国民の信頼性は高い。後発品シェアを80%に引き上げることが本当に国民にとって良いのかあらためて考えるべきではないか」と問題提起しています。
特定保険医療材料の価格算定ルールは、中医協の保険医療材料専門部会で詰められます。26日の専門部会では、保険医療材料専門組織(算定ルールに則って、新規機器の価格算定を行う組織)から次のような意見が発表されました。
(1)内外価格差を是正するために、▽外国価格調整の比較水準となる「1.5倍」の引き下げ▽原価の内訳把握▽外国価格参照制度の比較水準を引き下げ―などを実施する
(2)イノベーションを適切に評価するために、▽既収載品と部分的に機能が類似している場合の柔軟な価格算定▽新たな機能を有した医療材料を用いた技術などの評価について専門組織から提案できる仕組み―を設ける
(3)実際の販売実績における市場規模を踏まえた償還価格の見直し
(3)は、薬価で説明した「市場拡大再算定」のような仕組みを材料価格にも導入してはどうかとの提案です。今後、材料専門部会で具体的な議論が行われます。
【関連記事】
16年度薬価制度改革に向け、9月にも業界団体からヒアリング実施―中医協・薬価専門部会
医薬品納入の「未妥結減算」、妥結率向上も「単品単価取引を阻害」―中医協の薬価・材料専門部会