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16年度薬価制度改革に向け、9月にも業界団体からヒアリング実施―中医協・薬価専門部会

2015.7.23.(木)

 2016年度に予定される次期薬価制度改革に向けて、中央社会保険医療協議会の薬価専門部会は、9月にも業界団体からヒアリングを実施する方針です。

 また歯科診療報酬については、周術期の口腔機能管理などに関する医科歯科連携をどう推進していくかなどが重要テーマとなっています。

7月22日に開催された、「第105回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

7月22日に開催された、「第105回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

薬価算定組織は「先駆導入加算」の見直しなど要望

 22日開かれた薬価専門部会には、算定ルールに則って新薬の薬価を設定する薬価算定組織の清野精彦委員長から次期薬価制度改革に向けて次のような意見が述べられました。

(1)薬事制度と一貫性を持った先駆導入加算の見直し

(2)開発要請・公募品目の外国平均価格調整

(3)新規性の乏しい医薬品の取り扱い

(4)市場拡大再算定の見直し

 (1)の先駆導入加算は、「外国に先駆けてわが国で最初に薬事承認された画期性・有用性のある医薬品」を評価するもので、前回14年度改定で導入されました。具体的には、次の要件を満たすことが必要です。

▽外国(米国、英国、ドイツ、フランスに限る、以下同)およびわが国のいずれかの国において承認されている既存の薬剤とは異なる新規の作用機序を有する

▽外国に先駆けて、我が国で最初に薬事承認を取得した

▽わが国だけで流通する見込みの医薬品でないことが外国での開発状況(開発計画を含む)や治験届等により確認されている

v▽画期性加算または有用性加算(I)の適用を受ける

 これは、わが国の新薬開発能力を高め、真に医療現場で必要とされている有用な新薬を普及させることを目的としていますが、厚生労働省は同じ視点に立って、14年6月に「革新的医薬品等の実用化を促進するための『先駆けパッケージ戦略』」を打ち出し、15年度から試行されます。

先駆けパッケージ戦略の概要、(1)先駆け審査指定制度と(2)未承認薬迅速実用化スキームの大きく2つで構成されている

先駆けパッケージ戦略の概要、(1)先駆け審査指定制度と(2)未承認薬迅速実用化スキームの大きく2つで構成されている

 この『先駆けパッケージ戦略』の1つに、一定の要件を満たす新薬について審査期間を大幅に短縮(通常12か月を6か月に短縮)するなど、優先的な取扱いをする「先駆け審査指定制度」があります。その要件は、以下の通りです。

▽治療方法が画期的である

▽一刻も早い実用化求められている疾患を対象としている

▽対象疾患にかかる著明な有効性がある

▽世界に先駆けてわが国で早期開発・申請される

先駆け審査指定制度の対象となる医薬品は、4つの要件を満たさなければならない

先駆け審査指定制度の対象となる医薬品は、4つの要件を満たさなければならない

 清野委員長は、両者は目的を同じくするものであるため、加算の対象を「先駆け審査指定品目」とし、加算の名称を「先駆け審査指定加算」とするよう求めました。あわせて、加算率も現行の「一律10%」から「品目に応じて10-20%」とすることや、原価計算方式で算定された品目も対象に加えるよう要望しています。

 また(4)の市場拡大再算定は、▽年間の販売額が予想額の2倍以上▽年間販売額が150億円超―となった医薬品について、薬価を最大25%引き下げるという仕組みです。

 ただし、具体的な要件はやや複雑で、例えば原価計算方式以外の方法で薬価算定された品目では、上記の基準に該当しても「使用方法や適用対象患者に変化がない場合は、再算定の対象としない」などの規定もあります。

 清野委員長は、市場拡大再算定の現行ルールには不合理な点があるとし、別の取り扱いを検討するよう要望しています。

 なお、この市場拡大再算定に対して製薬メーカーサイドは「売上が伸びるのは、その製品が優れているからである。優れた製品を開発したにもかかわらず、売れすぎているので価格を引き下げるというルールは、新薬開発意欲を阻害する」と強く批判しており、今後の検討が注目されます。

周術期口腔管理に関する医科・歯科連携が重要課題

 歯科診療報酬については、同日の中医協総会で、厚生労働省保険局医療課の田口円裕歯科医療管理官から次のような論点が示されました。

7月22日に開催された、「第301回 中央社会保険医療協議会 総会」

7月22日に開催された、「第301回 中央社会保険医療協議会 総会」

(1)周術期口腔機能管理における医療機関間(病院歯科と歯科診療所など)の連携

(2)地域包括ケアにおいて、適切な歯科医療を提供していくための主治歯科医師の機能・役割

(3)特別な対応が必要な患者(例えば認知症の患者など)、全身的な疾患を有する患者などの対応に関する評価

(4)口腔機能の評価、口腔機能の獲得・成長発育、維持・向上(回復)の観点に着目した歯科治療

(5)歯周病、う蝕(虫歯)などに対する歯科治療

 このうち(1)は、周術期、とくにがん患者に対して口腔機能管理を行うことで予後などが大きく改善することが知られており、前々回の12年度改定で【周術期口腔機能管理料】が新設されました。また、前回14年度改定では、周術期の口腔機能管理について医科・歯科連携を進めるために、医科医療機関に対する【歯科医療機関連携加算】が創設されるなどしています。

前回2014年度(平成26年度)の歯科診療報酬改定において、周術期口腔管理の医科・歯科連携を強く促す方向性が示された

前回2014年度(平成26年度)の歯科診療報酬改定において、周術期口腔管理の医科・歯科連携を強く促す方向性が示された

周術期口腔管理における、場面別の診療報酬のイメージ(手術を行う病院に歯科がある場合)

周術期口腔管理における、場面別の診療報酬のイメージ(手術を行う病院に歯科がある場合)

周術期口腔管理における、場面別の診療報酬のイメージ(手術を行う病院に歯科がない場合)

周術期口腔管理における、場面別の診療報酬のイメージ(手術を行う病院に歯科がない場合)

 しかし、連携状況ヲ厚労省が調査したところ、連携を行っている歯科は「病院併設の歯科」であることや、地域間の格差が極めて大きいことなどが分かりました。

周術期口腔管理に関する診療報酬の算定回数は増加しているが、ほとんどは病院併設歯科が連携対象となっている

周術期口腔管理に関する診療報酬の算定回数は増加しているが、ほとんどは病院併設歯科が連携対象となっている

周術期口腔機能管理について、診療報酬の算定状況は都道府県間で大きく異なる

周術期口腔機能管理について、診療報酬の算定状況は都道府県間で大きく異なる

 また、病院の規模別にみると、大規模な病院ほど連携が進んでいることも明らかになっています。

病院の規模が大きいほど、医科・歯科連携による周術期の口腔機能管理が実施されている

病院の規模が大きいほど、医科・歯科連携による周術期の口腔機能管理が実施されている

 この点について遠藤秀樹委員(日本歯科医師会常務理事)は、「今後、小規模の病院や、歯科のない病院において、地域の歯科診療所との連携が重要になってくる」とし、診療報酬上の対応を求めています。

 一方(2)の主治歯科医機能について、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「多くの人は、気に入った歯科に継続して通う。それだけで主治歯科医として報酬上の評価を行うことはできない。要件をきちんと設定する必要がある」と述べています。

 なお、金価格などの上昇を受け、歯科用貴金属価格が15年10月から下表のように引き上げられます。

金価格高騰などを受け、2015年10月から歯科用貴金属の価格を一部改定(ブルーの網掛け部分)

金価格高騰などを受け、2015年10月から歯科用貴金属の価格を一部改定(ブルーの網掛け部分)

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