重症度評価、手術直後は「A項目重視」の公算-診療側委員「方向性正しい」
2015.9.9.(水)
中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会が9日開かれ、2016年度の診療報酬改定に向けて入院医療の見直しをめぐる議論をスタートさせました。意見交換では、「重症度、医療・看護必要度」の取り扱いなどがテーマになり、手術を受けた直後の入院患者の状態を評価する際、患者のモニタリングや処置といった指標(A項目)を重視する方向性に前向きな意見が上がりました。こうした見直しへの目立った反対意見はありませんでした。
この日は、診療報酬調査専門組織・入院医療等の調査・評価等分科会の武藤正樹・分科会長(国際医療福祉総合研究所長)が、分科会による中間取りまとめの内容を報告しました。入院医療の見直しの方向性をめぐる議論は、基本小委の後に開かれた中医協・総会に引き継がれ、今後は年末にかけて本格化する見通しです。
重症度、医療・看護必要度は、入院患者に医療的な処置や看護ケアがどれだけ必要かを数値化したものです。現在は、呼吸ケアや心電図モニターを使用したかなどを記録する「患者のモニタリングおよび処置等」(A項目)と、寝返りを打てるか、座位を保持できるかといった身体機能を評価する「患者の状況等」(B項目)の2つの観点で評価しています。
これに対して、診療報酬調査専門組織・入院医療等の調査・評価等分科会による調査では、医師が指示を見直したり、看護師が頻繁に観察したりしなければならない患者の割合は、A項目のみに着目して評価する方が、現在の方法よりも高くなることが分かりました。これは、入院患者の状態を評価する際、評価のウエートをA項目に置く方が急性期医療の現場の実態に見合っていることを示す結果です。
武藤分科会長は、身体への負担が少ない術式の普及や、早期リハビリテーションが促進されるのに伴って、手術を受けた患者は早い段階でB項目の評価が低下する傾向にあると指摘しました。武藤分科会長はその上で、「(分科会では)A項目を使って手術直後を評価してはどうかという議論があった」と説明しました。
また、厚労省保険局の宮嵜雅則医療課長は、「(分科会には)入院患者の重症度、医療・看護必要度を、もう少し的確に幅広く拾うにはどうすればいいかの観点でご議論いただいている」と述べ、具体的な取り扱いは中医協で話し合うよう促しました。
意見交換では、診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)が、こうした見直しについて、「現場感覚的にも、入院患者を早く改善させるとB項目はすぐに該当しなくなる。方向性としては正しい」との認識を示しました。一方で、万代委員は現在のA項目の中身について、「内科と外科のバランスが悪い」と述べ、実態を反映させて見直す必要があると強調しました。
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