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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

短時間労働者の社会保険適用16年10月に拡大、激変緩和措置を検討―医療保険部会

2015.10.5.(月)

 来年(2016年)の10月から、社会保険が適用される短時間労働者の対象が拡大されます。このため、一部の医療保険者では負担が増加することから、厚生労働省は激変緩和措置を検討しています。

 具体的には「適用拡大される短時間労働者は、正規職員の0.01人分に換算」して、被用者保険の中で解決することになる見込みです。

10月2日に開催された、「第89回 社会保障審議会 医療保険部会」

10月2日に開催された、「第89回 社会保障審議会 医療保険部会」

外食産業や小売業の健保組合では負担が大幅に増加

 健康保険や厚生年金などの社会保険は、現在「週30時間以上、企業などに勤務する」人が適用対象となります。

 このためパート労働者などの多くは、社会保険には加入できず、収入に応じて被扶養者となる(例えば夫の社会保険に被扶養者として加入する)か、自ら国民健康保険などに加入する必要があります。

 この点について政府は、「パート労働者も被用者であり、社会保険(被用者保険)を適用してセーフティネットを強化し、社会保険における格差を是正する」必要があると考え、短時間労働者の社会保険適用を16年10月から拡大することを決めました。

 具体的には、▽週20時間以上勤務する▽月額賃金が8.8万円以(年収106万円以上)である▽勤務期間が1年以上となる見込みである▽従業員501人以上の企業に勤めている―場合に、社会保険の適用となります。学生は適用除外されます。なお、この場合は強制加入となり、「国保に加入する」などの選択肢はありません。

短時間労働者の社会保険適用拡大により、25万人程度が新たに社会保険(健康保険や厚生年金)に加入すると見込まれている

短時間労働者の社会保険適用拡大により、25万人程度が新たに社会保険(健康保険や厚生年金)に加入すると見込まれている

 厚労省は、適用拡大の対象者は25万人程度と見込んでおり、主に外食産業や小売業などで影響が大きいと考えられます。こうした業種の医療保険者や年金保険者では「賃金の低い加入者」が増加することになります。しかし、例えば医療費などは賃金水準とはリンクしないため、「保険料率を大幅に引き上げなければ、保険財政が破たんしてしまう」可能性が出てきます(保険料収入はごくわずか増加するが、保険給付費が大幅に増加する)。

 一方で、これまで被扶養者となっていた人が被保険者となるため、パート職員の少ない業種などの医療保険者では、保険給付費が減少し、財政が好転することになりそうです(保険料収入は変わらないが、保険給付費が減少する)。ちなみに、厚労省の試算では、健保組合で負担が増加しますが、他の医療保険では負担が減少します。この点について白川修二委員(健康保険組合連合会)や高橋睦子委員(日本労働組合総連合会副事務局長)らは「国保の負担が減少し、国庫負担も減少する。その分は、被用者保険の財政補填に充てるべき」と要望しています。

短時間労働者の社会保険適用拡大により、健康保険組合全体で230億円の負担増となり、他の医療保険では負担減となる

短時間労働者の社会保険適用拡大により、健康保険組合全体で230億円の負担増となり、他の医療保険では負担減となる

健康保険組合の中でも、飲食サービス業や小売業では負担が増加するが、パートが少ない業種では負担減となる見込み

健康保険組合の中でも、飲食サービス業や小売業では負担が増加するが、パートが少ない業種では負担減となる見込み

 このため、厚労省は「適用拡大される短時間労働者を、正規職員の0.01人分とカウントする」仕組みを導入して、保険料率の激変を緩和するとの考えを2日に開いた社会保障審議会の医療保険部会に提案しました。被用者保険の中で、負担の増減を分かち合う仕組みです。

短時間労働者の社会保険適用で、大幅に保険料上昇が見込まれる健保組合があることから、被用者保険内部で財政調整を行う

短時間労働者の社会保険適用で、大幅に保険料上昇が見込まれる健保組合があることから、被用者保険内部で財政調整を行う

 例えば、全国でコンビニエンスストアなどをチェーン展開する企業の健保組合(14組合の平均)では、適用拡大によって、16年度の保険料率が126.85‰から134.38‰に7.53ポイントも上昇する見込みです。

 ここに「適用拡大対象者を0.01人分とカウントする」との激変緩和措置を導入すると、保険料率の上昇幅を1.84ポイントに抑えることが可能となります。

激変緩和措置の試算結果(14のチェーンストア系健保組合)

激変緩和措置の試算結果(14のチェーンストア系健保組合)

 この仕組みについて、白川委員は特段の異論こそ述べませんでしたが、厚労省に対し「適用拡大対象者を25万人と見込んでいるが、より直近の数字で計算しなおす必要がある。また、退職者医療制度などの見直しを併せて進める必要がある」と注文を付けています。

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