後発品の銘柄を指定し「変更不可」とする処方せん、改定前より倍増し45%に―中医協総会
2015.10.8.(木)
2014年度の前回診療報酬改定後に、「後発医薬品名で処方された医薬品で、変更不可」となっているものの割合が、改定前に比べて2倍に増加している。―こういった状況が、7日に開かれた中央社会保険医療協議会に報告されました。
変更不可の後発品処方が増えた原因は明らかになっていませんが、後発品の信頼性を高める取り組みがこれまで以上に必要と言えそうです。
厚生労働省は、診療報酬改定の効果・影響を検証し、次期改定に活かすために、2006年度から「結果検証調査」を実施しています。後発品の使用促進も結果検証調査の中で継続して調べられています。
14年度改定では、後発品の使用を更に進めるために、保険薬局における「後発医薬品調剤体制加算」の見直しなどが行われました。具体的には、従前▽後発品の調剤数割合が旧指標で22%以上なら5点▽30%以上なら15点▽35%以上なら19点―と3区分で設定されていた加算を、▽新指標で55%以上なら18点▽65%以上なら22点―と2区分に見直しています。旧指標と新指標は単純に比較できませんが、この見直し内容は「加算の要件を厳しくし、その分、評価を引き上げた」ものと言えます。
このため同加算を算定する薬局の割合は、改定前の74.3%から大幅に減少58.3%となりました。
後発品の使用促進は、医療費適正化に向けた最重要施策の1つに位置付けられています。このため厚労省は「先発品から後発品への切り替え」を推し進めようと考えており、▽薬局での調剤に当たって「後発品への変更を認めない場合」には、処方せんにその理由を記載しなければならない▽一般名での医薬品処方をした場合には加算を設ける―ことなどのインセンティブ措置が設けられています。
一般名処方が進めば、薬局で多種類の後発品を備蓄しておく必要もなくなるという効果もあります。
この点について結果検証調査からは、次のような状況が分かりました。
(1)一般名で処方された医薬品の割合は18.1%で、改定前よりも7.5ポイント増加した(一般名処方のうち、70.8%は後発品が選択された)
(2)先発品で処方された医薬品のうち「変更不可となっていない」医薬品は73.1%で、改定前よりも7.6ポイント増加した(後発品への変更は18.1%)
(3)後発品で処方された医薬品のうち「変更不可となっている」医薬品は44.8%で、改定前よりも約2倍に増加した
(1)と(2)からは「後発品の使用」が進んでいるように思えます。しかし(3)の結果は、「薬局において同じ成分の別銘柄後発品を選択することが難しくなっている」ことを意味しており、薬局の負担が重くなっている状況が伺えます。
この点について支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「後発品の使用促進が阻害されている。異常な事態ではないか」と指摘。
しかし診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は「後発品なら何でもよいという訳ではない。医師は信頼できる後発品の銘柄を指定して処方する」と述べ、白川委員に「異常事態」という発言を取り消すよう求めました。ちなみに、この後、中川委員の「発言取り消しを求める」という主張に、白川委員が「自由な討議を否定するのか」と噛みつき、本筋から離れた激論が交わさています。
厚労省は「変更不可の処方せんが倍増した理由は不明」と述べるにとどめていますが、今後の後発品使用促進を巡る議論の中で、このデータは重要なポイントになりそうです。
医療機関側が後発品採用の際に最も重視しているのは、診療所では「信頼できる後発品メーカーが扱っている」(15.3%)、病院では「後発品メーカーが品質の情報開示をしている」(19.2%)で、中川委員の発言にもあるように「後発品メーカーの信頼性」が重要なことが分かります。
また後発品の使用促進に向けて何が必要かを医師に尋ねたところでは、「厚労省による、後発品の品質保証が十分であることの周知徹底」が最も多く、診療所医師の57.4%、病院医師の62.3%がこの点を指摘していました。
一方、患者側を見ると、「薬剤費が安くなるのであれば後発品を使用したい」と考える割合が増加していますが、「いくら安くなっても使いたくない」という人も11.9%います。使いたくない理由としては、「効き目や副作用に不安」が62.4%と最も多くなっています。
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