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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

在宅医療専門クリニック、設置認可も診療報酬などは厳格に設定―中医協総会

2015.10.7.(水)

 在宅医療専門のクリニックについて、「あくまで現在の在宅医療提供体制を補完する」というカッコ付きで認めるが、その診療報酬は厳しく設定する―。こういった方向が、7日に開かれた中央社会保険医療協議会総会で固まってきました。

 厚生労働省は「同一建物居住者の割合」「要介護度別の患者の割合」「看取り件数」などを指標に、診療報酬を設定していく考えです。

10月7日に開催された、「第305回 中央社会保険医療協議会 総会」

10月7日に開催された、「第305回 中央社会保険医療協議会 総会」

一部の医療機関が在宅医療の大部分を担っている

 高齢化が進展する中で、病院以外の場所、たとえば自宅で人生の最期を迎える患者が増えてきています。これをサポートするためには、訪問診療をはじめとする在宅医療提供体制の充実が必要ですが、厚労省がNDB(ナショナルデータベース)を用いて調べたところ「訪問診療料を2015年5月に算定したクリニックは、クリニック全体の28%に過ぎない」ことや、「診療科別、地域別に見ると大きなばらつきがある」ことなどが分かりました。

訪問診療はクリニック全体の28%弱で実施されているに過ぎない

訪問診療はクリニック全体の28%弱で実施されているに過ぎない

 訪問診療の状況をより詳しく見ると、次のように「一部のクリニックが訪問診療の大部分を担っている」ことも明らかになっています。

▽訪問診療を行っているクリニックの過半数では「訪問診療の患者は1-10人」だが、「101人以上の患者」を見ているクリニックも一部にある

訪問診療を実施しているクリニックでも、過半数は患者数1-10人だが、一部には100人以上の患者を診ているところもある

訪問診療を実施しているクリニックでも、過半数は患者数1-10人だが、一部には100人以上の患者を診ているところもある

▽90%以上の診療所では在宅患者(往診などを含む)の割合は5%未満だが、75%を超えるクリニックも一部にある

ほとんどのクリニックで在宅患者の割合は総患者数の5%程度だが、一部では総患者の75%以上が在宅患者というクリニックもある

ほとんどのクリニックで在宅患者の割合は総患者数の5%程度だが、一部では総患者の75%以上が在宅患者というクリニックもある

▽在宅医療を行っている医療機関の4割は年間看取り患者数がゼロ人だが、年間21人以上の看取りを行っている医療機関も一部にある

在宅医療を行う医療機関の4割は看取りを1件も行っていないが、年間21人以上の看取りを行っている医療機関も一部にある

在宅医療を行う医療機関の4割は看取りを1件も行っていないが、年間21人以上の看取りを行っている医療機関も一部にある

▽訪問診療件数が51件以上のクリニックは、クリニック全体の3%に過ぎないが、その3%のクリニックが「訪問診療件数の約75%」「看取り件数の約45%」を実施している

訪問診療を月間51件以上実施しているクリニックは全体の3%に過ぎないが、そのクリニックが訪問診療件数の75%、看取り件数の45%を担っている

訪問診療を月間51件以上実施しているクリニックは全体の3%に過ぎないが、そのクリニックが訪問診療件数の75%、看取り件数の45%を担っている

診療側委員も「在宅医療専門クリニック」を条件付きで認める

 このように一部のクリニックでは、積極的に在宅医療や看取りに取り組んでいます。その中には、実質的に「在宅医療専門のクリニック」もあるようです。

 健康保険法では「外来を行わない保険医療機関」の設置を原則として認めていないことから、この在宅専門クリニックをどう考えるかが、今年春の中医協総会でも議論になりました。当時は、「不足する在宅医療を補うために、在宅専門という形態も過渡的に認めてよい」と考える支払側委員と、「毎回、患者の元を訪れる医師が変わるような在宅専門の医療機関は認めるべきではない」と述べる診療側委員で、意見の隔たりがありました(関連記事はこちら)。

 しかし7日の中医協総会で、診療側の鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「在宅医療は、かかりつけ医が外来医療の延長として実施することが基本である」と強調した上で、「現在の在宅医療提供を補完する」というカッコ付きながら在宅専門クリニックの設置を認めています。

 支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)も「かかりつけ医が外来医療の延長で行う在宅医療が基本という意見に賛成である。とりあえず導入し、在宅専門クリニックの状況を把握してはどうか」と述べました。診療側と支払側の意見が概ね一致しており、条件付きながら在宅専門クリニックを正面から認めることになりそうです。

 厚労省は「提供地域」「対象患者」「被保険者への周知」「医療機関の管理体制」「随時の相談体制」「緊急時の対応体制」などの要件を定め、フリーアクセスへの抵触を避けたい考えです。

 この点について診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「地方では、かかりつけ医が在宅医療を担っているが、そこに在宅専門クリニックが参入することに懸念を覚えている」と訴え、要件などを慎重に検討していくよう強く求めました。

診療報酬は「同一建物居住者」や「看取り」を勘案して厳格に設定

 では、在宅専門クリニックの診療報酬はどのように考えるべきでしょうか。

 厚労省の調査からは、次のように在宅専門クリニックの中にもいくつかのタイプがあることが分かってきました。

▽訪問診療を中心に行うクリニックは、「居宅の患者を中心に診療している」ところと、「高齢者住宅などの同一建物に居住する患者を中心に診療している」ところに二極化している

訪問診療を中心に行っている診療所は、「自宅居住者中心」と「集合住宅中心」に二極化している

訪問診療を中心に行っている診療所は、「自宅居住者中心」と「集合住宅中心」に二極化している

▽訪問診療を中心に行うクリニックは、「看取りを積極的に実施している」ところと、「看取りを実施していない」ところ

訪問診療を中心に行っているクリニックは、「看取りゼロ」と「看取り20件以上」に二極化している

訪問診療を中心に行っているクリニックは、「看取りゼロ」と「看取り20件以上」に二極化している

とに二極化している

▽訪問診療を中心に行うクリニックの4割程度は、「鎮痛薬の持続皮下投与」や「胸水・腹水穿刺」「モルヒネの持続皮下注射」については対応が困難である

訪問診療を中心に行ているクリニックの4割が「鎮痛薬の持続皮下投与」などを行うことができない

訪問診療を中心に行ているクリニックの4割が「鎮痛薬の持続皮下投与」などを行うことができない

▽訪問診療を中心に行うクリニックの中には、「要介護度の低い患者が6割以上」というところが一部にある

訪問診療を行っているクリニックの中でも「要介護度の低い患者」しか診ないところがある

訪問診療を行っているクリニックの中でも「要介護度の低い患者」しか診ないところがある

▽医療機関が併設・隣接している集合住宅は、訪問診療を受ける入所者が「10%未満」のところと、「100%」のところに二極化しており、後者では要介護度が低い患者も含めて、すべての入所者に訪問診療が提供されている実態がある

集合住宅に併設・隣接する医療機関の中には、その住宅のすべての入所者に対して、要介護度などに関係なく訪問診療を提供しているところもある

集合住宅に併設・隣接する医療機関の中には、その住宅のすべての入所者に対して、要介護度などに関係なく訪問診療を提供しているところもある

 これらから、在宅専門クリニックの一部には「集合住宅で要介護度の低い入所者を中心に訪問診療などを手広く行うが、看取りなどは実施しない」ところもあることが伺えます。

 こうした状況を踏まえて厚労省は、在宅療養支援診療所が在宅専門クリニックとなる場合には、「同一建物居住者の割合」「要介護度別の患者の割合」「看取りの件数」などに着目した診療報酬を設定する考えを示しています。

 この点、鈴木委員や白川委員は、「外来を行うかかりつけ医よりも効率的なクリニック運営が行えるので、その点を診療報酬にも反映させるべき」ことや、「同一建物居住者の割合が高い場合には、保険診療から排除すべき」ことなど、珍しく一致した要望を行いました。

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