市立函館をデータで分析 急性期機能の高さは良好×連携推進や効率化に課題-全自病学会
2015.10.14.(水)
GHCは8日、北海道函館市内で開かれた全国自治体病院学会のランチョンセミナーで、市立函館病院(同市)を徹底分析した結果を発表しました。分析からは、同病院では入院や外来単価、手術料がほかの病院に比べて高く、「急性期病院の心臓部」と言われる手術室9室がすべて、月曜から金曜にかけてむらなく稼働していることが分かりました。ただ、入院期間短縮の取り組みを評価する効率性係数の評価が全国の同規模病院に比べて低く、ほかの医療機関から紹介されて受診する患者が少ないことなども分かり、GHC社長の渡辺幸子は地域連携の構築や医療の効率化が次のステップだと指摘しました。
一連の分析は、GHCが開発した次世代病院経営支援システム「病院ダッシュボード」によるものです。ランチョンセミナーでは、市立函館病院が手術室を急性期病院として適切に運営できているかどうかなどの分析をGHCがデモンストレーションしました。
まず、病院ダッシュボードの「手術分析」の機能を使い、今年2-7月の症例を検証しました。その結果、市立函館病院では手術料が50万円を超える症例の割合が、全国の同規模病院の水準に比べて高いことが分かりました。
また、手術室全体での稼働率(緊急手術を含む)は47.6%で、全国水準(47.7%)並みでした。手術室の稼働は、一般的に月曜に落ち込みがちとされますが、同病院での月曜から金曜にかけての稼働率は40%台から50%台の間でむらなく推移していました。
さらに、時間帯ごとの稼働率を見ると、1件目の手術の7割が午前9時までに入室していました。一方、手術の終了が午後5時以降にずれ込むケースは2割以下。手術を終えてから次の手術を開始するまでの「ターンアラウンドタイム」は過半数が30分以内で、日中の稼働のむらが小さく効率的な運営ができていることが分かります。
急性期病院による医療資源の投入が手術に集中するだけに、手術室は「急性期の心臓部」とも言われます。市立函館病院ではこの手術室を適切にマネジメントできているほか、複雑性係数の値も高いことが分かり、渡辺は「急性期度がかなり高い」と評価しました。
一方、3-7月に実施した心臓カテーテル検査の症例を「DPCケース分析」の機能で検証すると、抗菌剤の投与率(注射請求)は34.8%(同規模病院の水準は18.1%)という結果。トータルでの入院期間は3日の症例が大半を占めました。これに対して、全国の500床以上の病院では、入院期間2日の症例が3日に次いで多く、渡辺は市立函館病院にとってはパスの運用の見直しが課題だと指摘しました。
「患者エリア分析」の機能からは、紹介患者の割合が24.4%と同規模病院の61.0%よりも低いことが分かりました。渡辺は「入院に結び付けるチャンスを逃さないために単価の低い患者さんもどうしても診てしまいがちだが、こうした患者さんをほかの医療機関に紹介して地域連携のサイクルをつくるのが大切」と話しました。
このほか、出来高項目の算定状況を「見える化」できる「チーム医療plus」による分析では、退院後の介護保険との円滑な連携につなげるため、入院初期から身体機能を総合的に評価する「総合評価加算」などを取り上げました。この加算を算定するには、総合的な機能評価の研修(16時間以上)を修了した医師の配置が必要です。市立函館病院では加算を算定しておらず、渡辺は、こうした体制面を整備し切れていない可能性を示唆しました。
この医療圏内には市立函館病院を含めてDPC対象病院が7つあり、08-13年の5年間に7病院全体での入院の症例数は5.7%増えています。しかし、これら全体での病床利用率はこの期間に6.0%ダウン、平均在院日数は2.0%減少していて、急性期病床に対するマーケットはトータルでは縮小していることが分かりました。
この医療圏内では、医療ニーズが見込まれる高齢者人口が30年にかけて増加します。「地域の医療提供体制現状と将来 2014」(高橋泰氏、江口成美氏ら)では、11年から25年にかけて入院医療ニーズは全国ベースで26%増えると試算していますが、南渡島医療圏では急性期病床が現時点で大幅な過剰なため、国の誘導で入院期間の短縮が一層進めば、急性期病床の絞り込みは避けられません。
渡辺は「25年にかけて平均在院日数が9日前後まで減少すれば、入院医療のニーズの増加は相殺される。結果として急性期病床はさらに過剰になる」との見通しを示した上で、自病院の強みと弱みを踏まえながらポジションを見極めるよう呼び掛けました。
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