財務省、診療報酬本体の引き下げ主張-7対1入院基本料の大幅厳格化も
2015.10.30.(金)
財務相の諮問機関である財政制度等審議会(財政審)の財政制度分科会が30日開かれ、財務省は、技術料・サービスなどへの評価に当たる診療報酬本体を2016年度の診療報酬改定で引き下げるよう主張しました。同省では、06年度以降の物価・賃金動向に比べて診療報酬本体が「高止まりしている」という見方を示していて、アベノミクスの成果で今後、物価・賃金の上昇が見込まれるとしても「一定程度のマイナス改定が必要」と指摘しています。
財務省はまた、地域ごとの病床の機能分化や医療費の地域差是正につなげるため、診療報酬の点数や算定要件の設定を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」といった病床機能とリンクさせる必要性も強調しました。その上で、7対1入院基本料の算定要件を一層厳しく見直すよう求めています。
7対1入院基本料の算定要件は14年度の診療報酬改定でも厳格化が行われましたが、財務省は、分科会が30日に開いた会合の中で、「依然として病床の機能分化は進展していない」との見方を示し、追加での対応を求めました。具体策としては、7対1入院基本料の算定要件に手術件数など実績の基準を組み込んだり、現在は「15%以上」とされている重症患者の受け入れ割合の基準を大幅に引き上げたりすることを挙げています。
また療養病棟入院基本料については、医療区分2、3の要件を厳しくする一方で、医療区分1の患者が多い病棟向けの入院基本料を引き下げたり、医療従事者の配置基準を緩和したりするよう求めました。
医療必要度が比較的高い医療区分2と3として算定されるケースが多い上に、これらの地域格差が特に大きいことが分かっていて、財務省では、入院患者の状態や必要な医療処置の解釈や取り扱いが地域によって異なることが一因だととらえています。
そこで、医療区分2と3の算定要件を厳格化するとともに、医療区分1の患者が多い病棟向けの入院基本料の点数設定と人員配置を介護施設並みにすることで、医療の必要度が低い医療区分1の患者の受け皿を介護施設などにシフトさせ、療養病棟による受け入れは、本来の医療区分2と3の患者に集中させる狙いがあるとみられます。
財政審では、16年度予算の編成に向けた考え方(秋の建議)を11月中にもまとめることにしていて、引き続き議論を具体化させます。
政府が6月に閣議決定した「経済・財政再生計画」(財政健全化計画)では、消費増税に伴う充実分を除く社会保障費の伸びを、高齢化による0.5兆円程度(年間)に抑制させる方向性を掲げています。
財務省では、診療報酬関連の見直しに後発医薬品の使用促進などを組み合わせることで、16年度の社会保障費の伸びを目標の範囲内に抑えたい考えです。
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