平均在院日数を維持(微増)した上で病床利用率は上昇―病院報告、15年7月分
2015.11.16.(月)
一般病床を始め病院病床の平均在院日数は若干の増加にとどまる一方で、病床の利用率は高まっている―。こうした状況が、13日に厚生労働省が発表した2015年7月分の病院報告から明らかになりました。
平均在院日数の減少は、一般に病床利用率の低下につながるため、在院日数短縮に取り組むと同時に、集患など利用率の維持・向上に向けた対策をとる必要があります。15年6月の病院報告では、「平均在院日数が減少する中で、利用率も向上している」ことが分かりました。7月のデータからは「平均在院日数は微増、利用率が向上」という状況が示されており、二つの対策が継続されていることが伺えます。
厚労省は、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を毎月集計し「病院報告」として公表しています。15年7月の状況を見てみましょう。
(1)の1日平均患者数は、病院全体では入院125万3222人(前月比1837人、0.1%増)、外来141万288人(同2万6540人、1.8%減)で、入院は微増、外来は減少しています。患者数は季節や稼働日数に大きな影響を受けるため、長期的な視点で増減を考える必要があります。診療所の療養病床では入院6537人(同2人、0.03%減)となりました。
このうち病院の一般病床を見てみると、入院患者数は66万7161人で、前月に比べて1956人・0.3%増加しました。また、病院の療養病床では、入院患者数は29万1510人で、前月に比べて500人・0.2%とわずかながら減少しました。
(2)の平均在院日数に目を移すと、病院全体では28.2日で、前月から0.1日とわずかに延びました。病床種別に見ると、▽一般病床15.9日(前月比0.1日増)▽療養病床158.9日(同2.7日増)▽介護療養病床318.2日(同14.0日増)▽精神病床262.7日(同6.2日増)▽結核病床68.2日(同1.3日増)―とすべてでわずかに延びています。また、有床診療所の療養病床は102.3日で、前月に比べて3.3日延びています。
在院日数の短縮は、医療費の効率化や、院内感染リスクの解消やADL低下の防止など医療の質の向上につながるため、政府の重要政策の1つに位置付けられています。前月(15年6月)には、全体で2.9日、一般病床で1.6日、療養病床で12.7日と大幅な短縮が見られました。今回の微増は、その反動と見ることもできそうです。
前述のように、疾患の季節変動や患者構成は大きく変化するため、平均在院日数も暦月ごとの変動があり、長期的な視点で見ていく必要がありますが、「前月(15年6月)の大幅減」「今月(15年7月)の微増(実質的な維持)」は好ましいと状況と言えるのではないでしょうか。
ところで平均在院日数の短縮は、患者数の減少、つまり病床利用率の低下、減収に繋がります。このため、地域の医療機関との連携を強化したり、救急患者の受け入れを進めるなどの集患対策や、場合によっては病床規模の縮小や機能転換などの多角的な対策が求められます。ちなみに、GHCアソシエイトマネジャーの湯原淳平は、「300床病院が在院日数を1日短縮、稼働率維持には1か月36人の新規患者獲得が必要」と分析しています(関連記事はこちら)。
この点、(3)の月末病床利用率に目を移すと、病院全体では79.5%で、前月に比べて0.4ポイント上昇しています。今年1月(79.9%)から2月(79.5%)にかけて0.4ポイント減、2月から3月(79.3%)にかけて0.2ポイント減、3月から4月(79.1%)にかけて0.2ポイント減、4月から5月(76.9%)にかけて2.2ポイントと、4か月連続して低下していましたが、15年6月(79.1%)は2.2ポイント増加、15年7月(79.5%)は0.4ポイント増加となっており、下げ止まりは確実と言えそうです。
病院の病床種別に見ると、▽一般病床73.8%(前月から0.5ポイント上昇)▽療養病床88.6%(同0.1ポイント上昇)▽介護療養病床92.0%(同0.2ポイント上昇)▽精神病床86.7%(同0.3ポイント上昇)▽結核病床37.0%(同0.4ポイント上昇)―となっており、すべての種別で上昇していることが分かります。
15年7月のデータを「平均在院日数を維持(微増)して、病床利用率を上昇させた」と好意的に見れば、前月の「平均在院日数を短縮と、病床利用率の上昇を同時に成し遂げた」状況と合わせて、適正な病床管理と集患が順調に進んでいると見ることができます。ただし、これらのデータはやはり「歴月の変動」が大きく、今後の推移を長期的に見守るとともに、病院の「利用率上昇に向けた取り組みの分析」を十分に行う必要があります。
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