償還価格と実勢価格の乖離率、医薬品は8.8%、医療材料は7.9%―中医協総会
2015.12.4.(金)
2015年9月に行われた医薬品と医療材料の価格調査結果(速報値)が、4日に開かれた中央社会保険医療協議会・総会に報告されました。償還価格(薬価・材料価格)と市場実勢価格との乖離率は、医薬品では約8.8%、医療材料では約7.9%となっています。
厚生労働省は調査結果を基に、薬価と医療材料の価格改定に向けた検討を行います。
医療用医薬品と特定保険医療材料については、保険償還価格が設定されています(薬価、材料価格)。医療機関などでこれらを使用した場合、償還価格に従った支払いが行われます。
一方、医療機関などが卸業者から医薬品や医療材料を購入する場合には、自由取引であるため、その価格(市場実勢価格)はまちまちです。
すると、医薬品などを低価格で購入すれば、その価格と償還価格との差は医療機関などの利益になります。
この点、保険診療は国民の納めた税金や保険料、さらに患者負担で賄われていることから、購入価格と償還価格の差が大きな場合には、償還価格を引き下げることが求められます。これが、2年に一度行われる薬価改定・材料価格改定の重要な役割の1つとなっています。
改定に当たっては、医薬品や医療材料を医療機関がいくらで購入しているのかを把握しなければいけません。このため厚労省は、改定の前年に市場実勢価格の調査を実施しており(薬価調査、材料価格調査)、今般、調査結果の速報値が中医協総会に示されました。
まず医薬品については、市場実勢価格と薬価との乖離率が平均して約8.8%ありました。2年前の前回調査では、平均乖離率が約8.2%でしたので、価格の乖離が広がっている状況です。
投与形態別に見ると、▽内用薬は9.4%▽注射薬は7.5%▽外用薬は8.2%―と若干のばらつきがあります。なお歯科用薬剤については、マイナス1.0%の乖離があり、これは「薬価よりも高い価格で歯科医療機関が購入している」ことを意味します。厚労省は、この理由について「精査していないので正確なところは不明」と答えるにとどめています。
また薬効群別に見ると、▽消化性潰瘍剤13.3%▽その他アレルギー用薬12.3%▽高脂血症用剤12.0%▽血圧降下剤11.4%―などで、乖離率が大きいことが分かりました。
なお、後発医薬品の使用割合(数量ベース)は約56.2%で、前回調査(約46.9%)よりも10ポイント近く伸びています。政府は「2017年央に後発品割合を70%以上に、18から20年度末までのなるべく早い時期に80%以上とする」との目標を掲げており、達成までには、さらに15ポイントほど伸ばす必要があります。
一方、医療材料については、平均乖離率が約7.9%となっています。前回調査(約8.9%)よりも乖離幅は縮小しています。ちなみに、再生医療等製品の価格も調査対象に加わったことから、調査名が変わっています。
この結果を受けて、薬価と医療材料はどの程度引き下げられ、医療保険財政にはどのような影響が出るのでしょうか。
薬価については、薬価と乖離率の差をまるまる埋める(引き下げる)のではなく、調整幅2%分を残す(引き下げない)ので、平均で6.8%の引き下げになると考えられます。現在、医療費はおよそ40兆円で、そのうち薬剤費が9兆円と仮定すると、9兆円×マイナス6.8%=6120億円の引き下げになると、極めて大雑把に推計できます。
また、材料価格についても、乖離率から調整幅(4.0%)分を残した3.9%の引き下げになると考えられます。同様に、材料費が1兆円と仮定すると、1兆円×マイナス3.9%=390億円の引き下げになると考えられます。
つまり薬価・材料価格の引き下げで、2014年度の医療費を6500億円程度圧縮できることになります。医療費の4分の1は国が負担しており、さらに14年度予算ベースに換算すると、1500億円程度、国費を軽減できる計算になります。もっとも、薬剤費・材料費は仮定のもので、今後の薬価・材料価格制度の見直しによって、この金額は大きく変わってくる可能性があります。
以前は、この価格引き下げ分を診療報酬本体の引き上げ財源に使っていましたが、財政制度等審議会は「本体に回すことは許されない」と主張しており、年末にかけての改定率論議が熱くなりそうです。
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