財政審、診療報酬本体引き下げ提言、社保費の伸びを5千億円弱に
2015.11.24.(火)
財務相の諮問機関である財政制度等審議会(財政審)は24日、社会保障費の2016年度の伸びを高齢化に伴う範囲内の5000億円弱に抑えるため、同年度に実施される診療報酬改定で本体部分を引き下げるべきだとの提言をまとめました。国と地方の財政の健全度合いを示す「基礎的財政収支」(プライマリーバランス)を20年度までに黒字化させる目標を達成するため、政府は社会保障改革の工程表を年内に取りまとめることにしています。財政審では、「高度急性期」など4つの病床機能ごとの定量的な基準を16年10月までに策定すべきだとも提言していて、これらが工程表にどれだけ反映されるかが焦点になります。
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財政審が取りまとめたのは16年度予算編成に関する建議で、麻生太郎財務相に同日提出しました。
政府が6月に閣議決定した「経済・財政再生計画」(財政健全化計画)では、18年度までの3年間を財政健全化計画の集中期間に位置付け、消費増税に伴う充実分を除く社会保障費のこの期間の伸びを、高齢化に伴う計1.5兆円程度に抑制させることを「目安」に掲げています。16年度はこの計画の初年度に当たり、財政審は、社会保障費の同年度の伸びを「5000億円弱」に抑える必要があると、財政健全化計画からさらに踏み込みました。
ただ、8月末の概算要求の段階では、これまでの改革の成果を見込んでも社会保障費は16年度に6700億円増加する見通しです。このため提言では、診療報酬本体の引き下げに後発医薬品の使用促進などを組み合わせることで、社会保障費の伸びを抑える必要性を打ち出しました。また、薬価調査の結果を踏まえた薬価引き下げは市場実勢価格を反映したものに過ぎず、これに伴う財源は「診療報酬本体の財源とはなり得ない」とも指摘しています。
16年度診療報酬改定での具体的な取り組みとしては、7対1入院基本料の算定要件や療養病棟入院基本料の取り扱いの厳格化を挙げました。一方、14年度に新設された「地域包括診療料」については、かかりつけ医を普及させる観点から要件緩和を求めています。
このほか14年10月にスタートした病床機能報告制度の成果を客観的に評価できるようにするため、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4つの病床機能ごとに、定量的な基準を遅くても16年10月には設定すべきだとの考えを示しました。
国と地方のプライマリーバランスを20年度までに黒字化させるため、政府は社会保障改革の工程表を年内に取りまとめることにしています。16年度予算について財政審は、財政健全化計画の「目安」から逸脱するようなことは「断じてあってはならない」とした上で、今回の提言を改革の工程表に適切に反映するよう政府に強く求めています。
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