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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

病院機能の選択は強制ではなく自己責任 だからこそ恐ろしい

2015.12.8.(火)

 GHCの湯浅大介マネジャーは5日、病院大再編時代を生き抜く戦略的病院経営をテーマに東京都内で講演し、地域医療構想を踏まえた医療提供体制の再編が各地で進む中、各地の急性期病院はこれから先、どのような機能をカバーしていくのかを自己責任で選択することになると指摘しました。湯浅は「国も都道府県も、どこをカバーしてほしいとは一切言わないが、(急性期の)必要病床数は確実に減る。自分たちがどこを目指すのかを定めずに病院運営を続けていると、いす取りゲームのいすがいつの間にかなくなってしまいかねず非常に恐ろしい。強制される方がはるかに楽」などと話しました。

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20151205_医療タイムス様セミナー_講演スライド_GHC湯浅③ (2) 湯浅はその上で、自病院の機能を決める上では自病院の現状と地域のニーズを見極める必要があると指摘し、このうち自病院の現状については、入院患者の「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)を正確に把握することの重要性を特に強調しました。

 看護必要度は、看護ケアが入院患者にどれだけ必要かや、患者のADLがどのような状況かを数値化したもので、現在は、呼吸ケアを行ったかどうか、心電図モニターを使用したかなどを記録する「患者のモニタリングおよび処置等」(A項目)と、寝返りを打てるか、座位を保持できるか、車いすなどに移乗できるかといった身体機能を評価する「患者の状況等」(B項目)の2つの観点から評価します。

 7対1入院基本料を算定するには、「A項目2点以上かつB項目3点以上」に該当する「重症患者」を常に15%以上入院させる必要があります。

 もともとは患者にどれだけの看護が必要かを把握する指標でしたが、現在は、急性期病院の機能を測るための大切な指標の1つとなっています。講演で湯浅は、医療現場での測定内容をDPCデータと比べると、実際には行ったはずの医療処置が看護必要度に反映されていなかったり、逆に、実際には行っていない処置が記録されていたりと、必ずしも精度が高くないと指摘しました。

 来年度の診療報酬改定で厚生労働省は、DPCデータ提出の一環として看護必要度の測定データの提出を新たに義務化する方針で、これによって「データに基づいたより的確な分析が可能になると考えられる」としています。

 この日の講演で湯浅が紹介したある公的病院のケースでは、血液製剤「コージネイトFSバイオセット注1000 1000国際単位溶解液付」の投与が看護必要度に全く反映されていないなど、DPCデータと看護必要度の評価の一致率が薬剤によって極めて低いことが分かりました。

 看護必要度の記録漏れは極論すれば7対1の返上につながりかねません。この病院では、評価漏れが解消すれば重症患者の割合が2ポイント程度上昇することも分かりました。湯浅は、担当看護師が交替するタイミングに評価漏れが特に起きやすいと指摘し、こうしたことを避けるため院内教育の大切さを強調しました。

 ただ、看護必要度データとDPCデータの不整合について、湯浅は「過剰評価の方が恐い」とも指摘しました。来年度以降、看護必要度データの提出が義務付けられることで過剰評価が明らかになれば、診療報酬の返還を迫られるケースも想定できるためです。湯浅は実際に過剰評価が疑われるケースも紹介し=図表=、「病院機能の選択と同じように、ここでも自己責任の要素が強くなる」と注意を呼び掛けました。

20151205_医療タイムス様セミナー_講演スライド_GHC湯浅①

■将来ニーズを想定して戦略立案

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解説を担当したコンサルタント 湯浅 大介(ゆあさ・たいすけ)

yuasa 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。グループ病院の財務分析、中央診療部門の業務改善、経営戦略室立上げ支援、コスト削減、病床戦略策定支援などを得意とする。諏訪中央病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティング、日経BP社「日経ヘルスケア」(掲載報告はこちら)などへの寄稿なども手がける。
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