ICUの看護必要度A項目、厚労省の見直し案を診療側も了承―中医協総会
2015.12.17.(木)
特定集中治療室(ICU)の重症度、医療・看護必要度(看護必要度)について、「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」は1点のまま、他の項目は2点に引き上げ、重症患者を「A項目4点以上かつB項目3点以上」に見直すという厚生労働省の提案について、16日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会で、診療側の委員が正式に了承するコメントを発表しました。
ICUの施設基準では、「ICU用の看護必要度A項目が3点以上かつB項目が3点以上の重症患者が、常に入室患者の8割以上」などの要件が定められています。
ところで、ICUの入室患者のうち「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」の3項目のみで「看護必要度A項目3点以上」をクリアしている患者(以下、3項目のみの患者)では、他の患者に比べて、医師による指示の見直しや看護師による直接看護提供の頻度が低く、包括範囲の出来高点数が低いという特徴があります。厚労省では、「比較的状態が安定している患者が多い」と見ています。
さらに一部のICUでは、3項目のみの患者割合が50%を超えており(つまり状態の安定した患者が多く入室するICUがある)、厚労省は見直しが必要と判断しました(関連記事はこちら会)。
11月4日に開催された中医協総会では、厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長から次のような見直し案が提示されています(関連記事はこちら)。
(1)A項目のうち「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」は現行どおり1点のままとする
(2)A項目のうち、その他の項目は2点とする(現行は1点)
(3)A項目に関する重症患者の基準を、「A項目4点以上」とする(現行は3点以上)
この見直しを行った場合、A項目に関する重症患者の割合は、現行の約88%から約76%に、12ポイント低下します。またB項目を加えた重症患者の基準を満たす患者の割合は、現行の87%から74%へと13ポイント低下することも分かりました。診療科別に見ると、内科7ポイント減(90%から83%)、循環器系16ポイント減(88%から72%)、外科10ポイント減(83%から73%)という状況です
見直し案について目立った反対意見は出ていませんが、診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)から、「同じ3項目のみの患者であっても、循環器系の患者では重症度が高い可能性がある。丁寧なシミュレーションが必要なのではないか」との指摘がなされていました。
宮嵜医療課長はこの指摘に答えるため、16日の中医協総会に、ICUの入室患者を「循環器系の診療科(循環器外科・心臓血管外科)」「外科(循環器外科・心臓血管外科以外)」「内科」に区分して比較した資料が提示しました。
▽「循環器系」について、3項目のみの患者とそれ以外の患者を比較すると、3項目のみの患者のほうが包括範囲出来高点数が低く、医師の指示見直し・看護師による直接看護提供の頻度は少ない。これは「外科」「内科」と同様である
▽3項目のみの患者割合はICUによってばらつきがあるが、「循環器系」で特に多いなどの傾向は見られない
つまり、万代委員の心配する「循環器系の診療科では3項目のみの患者の重症度が高い」という状況は伺えませんでした。
万代委員はこの分析結果について「懸念は払しょくされた」とコメント。診療側として厚労省案を了承した格好です。
ただし万代委員は「医師による指示の見直しの頻度が少ない」ことが、すなわち「患者の状態が安定している」ことを意味するものではないとして、今後、検討していくべきと注文を付けています。
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