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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

病院全体の平均在院日数は33.2日、短縮傾向も都道府県間のバラつき大きい―2014年・患者調査

2015.12.18.(金)

 2014年の1日当たりの入院患者数(推計)は131万8800人で、3年前(2011年)に比べて2万2200人減少しており、人口10万対の受療率は1038となった。また平均在院日数は病院33.2日で3年前に比べて1.1日減少しているが、都道府県間のばらつきが依然として大きい―。このような状況が、17日に厚生労働省が公表した2014年の「患者調査」から明らかになりました。

 患者調査は、医療機関を利用する患者の傷病などの状況を明らかにするもので、3年に1度行われます。「どの地域に、どのような疾病が多いのか」「年齢によって、どのように疾病構造が異なるのか」などを詳細に知ることができます。病院にとって、地域のニーズを把握するために極めて重要なデータと言えます。

精神疾患、循環器系疾患、がん、骨折などで入院患者の6割弱占める

 2014年の患者調査は、6402の病院、5893の一般診療所、1278の歯科診療所を対象に行われました。

 まず2014年の1日当たり推計患者数(10月21日から24日のいずれか1日)を見てみると、入院131万8800人(3年前の前回調査比2万2200人減)、外来723万8400人(同2万2100人減)となりました。

 年次推移を見ると、入院では2008年調査から減少を続けており、外来では2005年調査からほぼ横ばいとなっています。年齢階級別に見ると、65歳以上で入院・外来とも増加が続いています。

施設種類別に見た推計患者数の年次推移、入院について2008年(平成20年)調査以降、減少傾向が続いていることが分かる

施設種類別に見た推計患者数の年次推移、入院について2008年(平成20年)調査以降、減少傾向が続いていることが分かる

 入院患者について傷病に着目してみると、▽精神及び行動の障害(26万5500人)▽循環器系の疾患(24万100人)▽新生物(14万4100人)▽損傷、中毒及びその他の外因の影響(13万1300人)―が多い状況は変わっていません。この4分類で入院患者全体の59.3%を占めています。それぞれが入院患者全体に占める割合は、▽精神及び行動の障害(20.1%、前回調査比1.0ポイント減)▽循環器系の疾患(18.2%、同0.5ポイント減)▽新生物(11.0%、同0.2ポイント減)▽損傷、中毒及びその他の外因の影響(10.0%、同0.7ポイント増)―となっています。

 次に入院患者の重症度を見ると、全体では(1)生命の危険がある5.7%(前回調査比0.1ポイント減)(2)生命の危険は少ないが入院治療を要する74.3%(同0.5ポイント増)(3)受け入れ条件が整えば退院可能13.6%(同0.1ポイント増)(4)検査入院1.1%(同増減なし)(5)その他5.4%(同0.4ポイント減)―という状況です。前回調査に比べて、(3)のいわゆる「社会的入院」は75歳以上で0.6ポイント減少していますが、35-64歳では逆に0.9ポイント増加しており、詳細な分析が待たれます。

年齢階級別に見た入院(重症度など)の状況別推計入院患者数の構成割合、高齢になると「受け入れ条件が整えば退院可能」(社会的入院)の割合が大きくなる

年齢階級別に見た入院(重症度など)の状況別推計入院患者数の構成割合、高齢になると「受け入れ条件が整えば退院可能」(社会的入院)の割合が大きくなる

入院受療率、最高の高知と最低の神奈川で3.24倍の格差

 次に人口10万対の受療率を見てみましょう。人口の増減などの影響を除外できます。

 全国の受療率は、入院1038(同30ポイント減)、外来5696(同88ポイント増)となりました。

 年齢階級別に見ると65歳以上で高くなっています(これが高齢者の医療費が高騰する大きな要因です)が、年次推移を見ると65歳以上の受療率は入院・外来ともに下がっていることが分かります。

年齢階級別に見た受療率(人口10万対)の年次推移、特に65歳以上で入院・外来ともに受療率が顕著な減少傾向にあることが分かる

年齢階級別に見た受療率(人口10万対)の年次推移、特に65歳以上で入院・外来ともに受療率が顕著な減少傾向にあることが分かる

 傷病分類別に見ると、患者数と同様に▽精神及び行動の障害(209)▽循環器系の疾患(189)▽新生物(114)▽損傷、中毒及びその他の外因の影響(103)―で受療率が高いことが分かります。

 さらに都道府県別に受療率を見てみると、入院では、▽高知2215(全国の2.13倍)▽鹿児島1885(同1.81倍)▽長崎1812(同1.75倍)―などで高く、逆に▽神奈川683(同0.66倍)▽埼玉723(同0.70倍)▽千葉745(同0.72倍)―などで低くなっています。最高の高知と最低の神奈川の格差は3.24倍で、前回調査に比べて0.02ポイントとごくわずかですが縮小しましたが、「西高東低」の状況は変わっていません。

 外来では、▽佐賀6850(全国の1.20倍)▽和歌山6570(同1.15倍)▽熊本6550(同1.15倍)―などで高く、逆に▽沖縄4317(同0.76倍)▽千葉4901(同0.86倍)▽石川4921(同0.86倍)―などで低くなっています。最高の佐賀と最低の沖縄の格差は1.59倍で、前回調査と同水準です。

都道府県別(患者住所地)に見た受療率(人口10万対)、特に入院で「西高東低」の傾向が著しいことが分かる

都道府県別(患者住所地)に見た受療率(人口10万対)、特に入院で「西高東低」の傾向が著しいことが分かる

平均在院日数、最長は高知の48.8日、最短は神奈川の24.9日

 一方、2014年9月中に退院した患者について平均在院日数を見ると、慢性期や精神科病院なども含めた病院全体では33.2日となりました。3年前の前回調査に比べて1.1日減少しており、年次推移を見ても着実に減少していることがわかります。

施設の種類別に見た退院患者の平均在院日数の年次推移、平成に入ってから減少傾向にあることが分かる

施設の種類別に見た退院患者の平均在院日数の年次推移、平成に入ってから減少傾向にあることが分かる

 傷病分類別に平均在院日数(診療所も含めた全体)を見ると、▽精神及び行動の障害291.9日(前回調査に比べて4.2日減)▽神経系の疾患82.2日(同6.0日増)▽循環器系の疾患43.3日(同2.0日減)―などが長くなっています。より細かく見ると、▽統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害546.1日▽血管性及び詳細不明の認知症376.5日▽アルツハイマー病266.3日▽気分[感情]障害(躁うつ病を含む)113.4日▽慢性閉塞性肺疾患68.1日▽慢性腎不全62.9日▽高血圧性疾患60.5日―などが長い状況です。

 次に、一般病床について在院期間別の推計退院患者数の構成を見ると、▽0-14日が70.6%(同1.3ポイント増)▽15-30日が16.5%(同0.3ポイント増)▽1-3か月が10.9%(同0.5ポイント減)▽3-6か月が1.5%(同0.3ポイント減)▽6か月以上が0.5%(同0.1ポイント減)―となっており、在院日数の短縮化が進んでいることが分かります。

病床の種類別に見た在院期間別の推計退院患者数の構成割合、一般病床では「1-14日」が70.6%、「15-30日」が16.5%で、1か月以内の退院が9割弱を占めるが、一部に長期入院患者もいる

病床の種類別に見た在院期間別の推計退院患者数の構成割合、一般病床では「1-14日」が70.6%、「15-30日」が16.5%で、1か月以内の退院が9割弱を占めるが、一部に長期入院患者もいる

 また、退院患者について「入院前の居場所」と「退院後の行き先」をクロス分析してみると、「家庭に帰る」人の割合は、「家庭から入院した人」では90.1%なのに対し、「他の病院・診療所から入院(転院)した人」では42.8%にとどまることが分かりました。2016年度の次期診療報酬改定に向けて、「療養病棟の在宅復帰機能強化加算について、自宅からの入院患者よりも、他院の急性期からの入院患者の在宅復帰を高く評価してはどうか」との検討が進んでいますが(関連記事はこちら)、今回のデータから「他院からの入院患者の在宅復帰」が難しいことがより明確になったと言えるでしょう。

自宅(家庭)から入院した患者の9割は自宅へ復帰できるが、他院からの転院患者では4割強した自宅へ復帰できていない

自宅(家庭)から入院した患者の9割は自宅へ復帰できるが、他院からの転院患者では4割強した自宅へ復帰できていない

 さらに、都道府県別の平均在院日数(診療所も含めた全体)を見てみると、▽高知48.8日▽鹿児島47.1日▽徳島46.7日―で長く、逆に▽神奈川24.9日▽愛知25.7日▽千葉・宮城26.9日―で短くなっており、依然として大きなばらつきがあります。

在宅医療、中でも「訪問診療」が2008年以降急増

 最後に在宅医療の状況を見てみると、2014年10月21から24日のいずれか1日に在宅医療を受けた患者数は15万6400人で、前回調査に比べて4万5700人増加しています。

 2008年以降、急激に増加している状況が伺えますが、内訳をみると「往診」にそれほど大きな変化はなく、「訪問診療」が急増していることが分かります。

 「集合住宅に過剰に訪問診療を行い、診療報酬の一部を集合住宅の経営者にキックバックする」という不適切な事態が明らかになり、2014年度の診療報酬では「同一日同一建物への訪問診療料などを大幅に厳格する」見直しが行われました(2016年度には更なる見直しが予定されている、関連記事はこちら)。今回のデータからは、この診療報酬見直しによる影響は伺えないようです。

在宅医療を受けた推計外来患者数の年次推移、2008年(平成20年)の調査以降、訪問診療が急増し、結果、在宅医療全般が大きく増加している

在宅医療を受けた推計外来患者数の年次推移、2008年(平成20年)の調査以降、訪問診療が急増し、結果、在宅医療全般が大きく増加している

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