国立大学病院の経常利益は年々縮小、財政支援や診療報酬改定での手当てを―文科省
2016.1.8.(金)
2014年度、国立大学附属病院全体の収益は1兆1938億円、費用は1兆1745億円で193億円の黒字となったが、前年度に比べて黒字幅は102億円・34.6%減少している―。こういった状況が5日、文部科学省から発表されました。
文科省は「年々、黒字(経常利益)が縮小している。医療負担に見合った診療報酬改定や教育・研究充実の視点からの財政支援が必要」と訴えています。
まず、2014年度における国立大学附属病院全体の収益を見てみると、前年度に比べて417億円・3.6%増加して1兆1938億円となりました。
内訳を見ると、病院の収益が9925億円(前年度に比べて2.8%増)で最も大きく、収益全体の83.1%を占めています。
次いで大きいのが運営費交付金収入の1305億円で、前年度に比べて104億円・8.7%増加しました。
このほか、▽受託研究等収益など186億円(前年度比23.1%増)▽寄付金収益92億円(同0.4%減)―などがあります。
一方、費用について見てみると、前年度に比べて520億円・4.6%増加しています。
内訳を見ると、診療経費が最も大きく6656億円(前年度比280億円・4.4%増)。次いで人件費4477億円(同209億円・4.9%増)、教育研究費203億円(同13億円・7.4%増)、受託研究費等176億円(同35億円・25.5%増)、財務費用139億円(同18億円・11.9%減)などとなっています。
収益から費用を差し引いた業務損益を見ると193億円の黒字となっています。しかし、収益が3.6%伸びた一方で、費用がこれを上回る4.6%増となったため、黒字幅は前年度に比べて102億円・34.6%減少しました。
病院収益の増加の中には、2014年度の診療報酬改定で行われた「消費増税に伴う特別のプラス改定分」も含まれています。しかし、国立大学附属病院のような急性期医療を担う大規模病院では、物品の購入量などが多く、消費増税による負担増をプラス改定で十分に賄えていないことが分かっています(関連記事はこちら。
今回の国立大学附属病院の決算からも、この状況を伺い知ることができそうです。
なお、国立大学附属病院における経常収益は増加基調にありますが、費用がこれを上回って伸びているため、業務損益は▽2010年度557億円▽11年度446億円▽12年度407億円▽13年度296億円▽14年度193億円―という具合に黒字幅(経常利益)が縮小傾向にあることも分かりました。
文科省では、▽高度先端医療の提供に必要な医薬品・医療材料の購入、人員体制の整備▽2014年4月の消費増税―などによって診療経費が増加して経常利益が減少し、「設備整備などの投資的経費の確保が厳しい」ことを説明。
その上で「医療負担に見合った診療報酬改定や教育・研究充実の視点からの財政支援が必要」と訴えています。
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