アベノミクスの目的は「人生を豊かにする」こと、経済再生は手段である―安倍首相
2016.1.12.(火)
アベノミクスは経済・財政の再生を打ち出しているが、それは手段に過ぎない。経済・財政の再生で得られた果実を国民全員で分け合い、人生を豊かにしていくことが目的である―。四病院団体協議会が8日に開いた賀詞交歓会で、安倍晋三・内閣総理大臣はこのように訴えました。
また塩崎恭久厚生労働大臣は、今年4月に予定される診療報酬改定について、「課題はたくさんある。プライマリケアの推進、がんや認知症・小児の在宅医療、救急医療などに力をいれていかなければいけない。一方で、重症患者の少ない急性期病棟の評価を適正化するなど、合理化もしなければいけない」との考え方を強調しました。
四病院団体協議会は、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会で構成される病院団体で、さまざまな医療政策について病院団体の考えを提言しています。
四病協では8日に賀詞交歓会を開き、来賓として安倍首相や塩崎厚労相、日本医師会の横倉義武会長などが挨拶しました。
安倍首相は、「今年は丙申に当たるが、60年前の丙申年には『もはや戦後ではない』と宣言した、有名な経済白書が発刊された。戦後の回復から、新たな成長への転換を意識したものである。アベノミクスでは一定の成果が出ており、その果実を国民の生活基盤に投入したい」と意気込みを語りました。
特に、新たなアベノミクスの3本の矢の1つである「介護離職ゼロ」に向けて力を入れていくことを強調。安部首相は「団塊ジュニアが介護離職をしなくてもすむ日本を作りたい。そこでも医療・予防に力を入れることはもちろんだ。世界に冠たる国民皆保険を守りたい」と強調。さらに「改定率について、なんとかこの会に出席できる水準を維持した」との述べ、会場の笑いを誘いました。
最後に安倍首相は、「経済・財政の再生・成長は手段に過ぎない。その果実を国民全員が享受し、人生を豊かにしていくことが目的である」と強く訴えました。
また塩崎厚労相は、2016年度の次期診療報酬に触れ「医療現場の課題はたくさんある。プライマリケアの推進、がんや認知症、小児の在宅医療、救急医療などに力をいれていかなければいけない。その一方で、急性期と言いながらも重症患者の受け入れが少ない病院については適正な評価をきちんとするという合理化もしなければいけない」と主張。7対1入院基本料の施設基準を一定程度、厳格化する考えを述べています。
さらに、次期改定では「アウトカムに着目した評価」も重視されています。例えばリハビリについては、事実上、効果(アウトカム)を条件とした点数設定を一部導入すべきか否かについて議論が行われています。塩崎厚労相は、「アウトカム評価を、どこまでエビデンスに基づいて行えるかに注目している」と述べています。
日医の横倉会長は、病院と診療所の連携の重要性を訴えています。横倉会長は「かかりつけ医が、難解な医療情報を翻訳することで、医師と国民との格差を埋めていきたい。病院には、是非、かかりつけ医をサポートする役割を担ってほしい」と要望しました。
また診療報酬改定については、「医療機関経営は厳しい。一方で、国民の健康守るための費用を潤沢に提供できるほど、わが国の財政はよくない」とし、「医療人も覚悟を決めなければいけない」との考えを述べました。「何が何でもプラス改定」ではないという姿勢が伺えます。
四病協の代表として挨拶した、医法協の加納繁照会長は、消費税問題、診療報酬改定など課題が山積する状況を見据えた上で、申年に因んで『見ざる、言わざる、聞かざる』を引き合いに「四病協は、良く見て、聞く耳を持ち、大きな声で発言していきたい」と強調しました。
また日病の堺常雄会長は、「医療法と診療報酬は車の両輪に当たると思う。前者については病床機能報告制度など抜本的な改革が行われた。診療報酬についても、2年後の同時改定に向けて抜本的な見直しをしてほしい」と要望しています。
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