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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

法定の「前払金保全措置」講じていない有料老人ホームが6.0%・77件―2015年度・厚労省調査

2016.4.28.(木)

 有料老人ホームについては、老人福祉法で「施設の管理者の氏名と住所」「供与する介護などの内容」などを都道府県知事に届け出なければなりません(法29条第1項)。しかし、厚生労働省の調査によれば、昨年(2015年)6月末時点で1017件・8.7%の施設がこうした届け出を行っていないことが明らかになりました。

 また、前払金の保全義務違反やスプリンクラー未設置など、入所者の経済的・身体的安全に問題のある施設も依然としてあることから、厚労省は適切な指導を継続していく方針です。

有料老人ホームは設置前に知事への届け出が必要、未届け施設は1017件・8.7%

 有料老人ホームは、「老人を入居させ、入浴、排せつ、もしくは食事の介護、食事の提供またはその他の日常生活上必要な便宜であって、厚生労働省令で定めるもの(介護など)の供与をする事業を行う施設」のうち、老人福祉施設や認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないもの」と定義されます(法29条第1項)。

 閉鎖的な空間であり、虐待や不当な処遇などが行われる可能性が高いことから(関連記事はこちらこちら)、都道府県などが適切かつ迅速に関与するために、有料老人ホームの設置者には、設置前に都道府県知事に対して、▽施設の名称・設置予定地▽設置者の氏名・住所など▽条例、定款その他の基本約款▽事業開始の予定年月日▽管理者の氏名・住所▽供与される介護などの内容▽その他厚生労働省令で定める事項―を届け出ることが義務付けられています。

 しかし、2015年度の調査(有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査[第7会])の結果を見ると、未届け施設は1017件・8.7%に上っていることが分かりました。

 過去の調査結果を眺めると、未届け施設がやや増加していることが分かりますが、厚労省は「未届け施設の把握が一層進展した結果でもある」とし、都道府県に対し指導監督の徹底を求めています。

法定の届け出を行っていない有料老人ホームが一時期に比べて増加している。この背景には「未届け施設の積極的な把握」という点もある

法定の届け出を行っていない有料老人ホームが一時期に比べて増加している。この背景には「未届け施設の積極的な把握」という点もある

前払金保全措置の義務違反、福岡県で21件、千葉県で16件

 有料老人ホームでは、入居条件の1つとして「前払金の支払い」を求めるところもあります(前払金がない施設もある)。施設によっては1億円を超える入居金が必要なところもありますが、これ自体には問題はありません。

 前払金にはさまざまな形態がありますが、一般には「終身にわたって居住することを前提に支払う家賃」と解されています。このため、想定入所期間(施設により異なる)よりも前に退所する場合などには、前払金の一部が返還されなければいけません。

 このため老人福祉法は、有料老人ホームに対して「前払金の返還責務を負うこととなる場合に備えた、必要な保全措置」を義務付けています(法第29条第7項)。

 しかし、今般の調査では「2006年4月1日以降に設置され、前払金を徴収している有料老人ホーム」1284施設のうち、6.0%・77件で保全措置が講じられていないことが分かりました。保全措置義務違反の施設は、前年度調査では9.3%・117件、前々年度調査では11.7%・141件あったので、年々改善していますが、厚労省は「有料老人ホーム全体の信頼を揺るがしかねない」として、都道府県に対し厳正な指導を行うよう強く求めています。

法定の「前払金保全措置」を講じていない有料老人ホーム、年々減少しているが、2015年には6.0%あり、より厳正な指導などが求められる

法定の「前払金保全措置」を講じていない有料老人ホーム、年々減少しているが、2015年には6.0%あり、より厳正な指導などが求められる

 ちなみに、保全措置義務違反の施設が多いのは福岡県(21件)千葉県(16件)、長野県(6件)などです。

1000平方メートル未満の小規模ホーム、スプリンクラー設置に補助

 ところで、有料老人ホームで火災が起きた場合、歩行能力などに課題があり自力での避難が難しい入所者も少なくないことから、延べ床面積に関わらず、原則として「スプリンクラーを設置する」ことが義務付けられています(2015年4月1日以降、2017年度までの経過措置もあり)。

 厚労省は、「スプリンクラー設備の設置をする際には、補助金(地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金)を活用できる(ただし2016年度から延べ床面積1000平方メートル未満の小規模施設に限定)」ことを説明し、補助金の周知を図るよう都道府県に求めています。

 補助金額は1平方メートル当たり9260円で、消火ポンプユニットなどを合わせて設置する場合には232万円までの上乗せがあります。

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