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認知症対策、自治体と地元医師会が連携して情報連携ツールの作成・普及を―厚労省

2016.6.28.(火)

 認知症対策に積極的に取り組んでいる地域では、認知症サポーター養成講座の対象者を「認知症が疑われる人に対応する機会の多い人」に絞り込むことで、より意欲のあるサポーターを養成しているほか、自治体と地域の医師会が連携して作成した「医療介護情報連携ツール」の普及、介護家族の負担を軽減するための「認知症カフェ」の開催などを行っている―。

 こういった状況が、厚生労働省が24日に公表した「認知症の本人及び家族への地域資源を活用した支援に関する調査―自治体における新オレンジプランの実施状況について―」から分かりました(厚労省サイトはこちら、報告書はこちら)。

 厚労省は、こうした先進事例を参考に全国の自治体や関係者で認知症対策をさらに推進するよう期待しています。

2015年1月に策定した新オレンジプラン(認知症対策)、先進自治体の取り組みを調査

 高齢化の急速な進行に伴い、認知症高齢化も急激に増加すると見込まれています。厚労省は、2025年には認知症高齢者が約700万人になると試算。これは「65歳以上高齢者の約5人に1人が認知症となる計算です。

 こうした状況を重視し、安倍晋三内閣総理大臣は2014年11月に塩崎恭久厚生労働大臣に「認知症施策を加速させるための戦略」を策定するよう指示。塩崎厚労相は新オレンジプランを昨年(2015年)1月に策定(オレンジプランの改訂版)しました。そこでは、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」ことを基本的な考え方に据え、次の7つの柱と具体的な施策を打ち立てています(関連記事はこちら)。

(1)認知症への理解を深めるための普及・啓発の促進(認知症サポーターの養成・活動支援など)

(2)認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護などの提供(早期診断・早期対応のための「認知症初期集中支援チーム」の設置や、医療・介護関係者間での情報共有の推進など)

(3)若年性認知症施策の強化

(4)認知症の人の介護者への支援

(5)認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進

(6)認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデルなどの研究開発と、その成果の普及の推進

(7)認知症の人やその家族の視点の重視

新オレンジプランの概要

新オレンジプランの概要

 厚労省は今般、新オレンジプランに沿って認知症対策に積極的に取り組んでいる4つの自治体(北海道砂川市、岩手県岩手郡岩手町、兵庫県川西市、熊本県山鹿市)を対象に、どのような取り組みを行っているかを調査。その結果を公表し、各自治体での今後の参考にしてほしいと期待しています。

認知症サポーター養成講座、対象者を絞ることも有用

 (1)の認知症サポーターは、「認知症に関する正しい知識と理解を持ち、地域や職域で認知症の人や家族を出来る範囲で手助けし、認知症高齢者などにやさしい地域づくりを推進する」役割を担います。

 自治体などでは認知症サポーターを養成するための講座(認知症サポーター養成講座)を開催しています。講座の対象者は地域住民全般が中心となりますが、4自治体では「対象者を絞った」講座も開催していることが分かりました。

 砂川市では「認知症が疑われる人に対応する機会がある事業者」を、岩手町では「民生委員、保健推進員」、川西市では「民生委員、福祉委員」、山鹿市では「小中学校、高等学校」を対象とした講座の開催を行っています。

 こうした対象を絞った講座では、カリキュラムを専門特化したりすることができ、より質の高いサポーター養成が可能になると考えられます。

 さらに山鹿市では、認知症サポーターの役割を発展させた認知症地域サポートリーダーの育成を行っています。具体的には、▽認知症本人による講演▽小規模多機能型居宅介護施設における実習▽介護専門職による講話―を通じて、より実践的な支援方法などを学びます。

認知症初期集中支援チーム、さまざまなネットワーク活用し支援対象者の把握を

 認知症対策では、可能な限り早期に診断し(認知症の原因疾患の診断など)、適切な治療を早期に開始することが重要です。

 このため新オレンジプランでは、(2)の認知症初期集中支援チームをすべての市町村に配置するという目標を立てています。支援チームは、▽認知症専門医1人▽保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士など2名―で構成され、支援の対象者と家族を訪問して、初期の支援を包括的・集中的に行い、後の専門支援チームに適切な引き継ぎを行うことが期待されています。

 砂川市では、地域包括支援センターと認知症疾患医療センターの両機関に支援チームの運営を委託。▽地域包括支援センターの主任介護支援専門員▽認知症疾患医療センターの認知症サポート医・認知症看護認定看護師―という精鋭で支援チームを構成し、往診などの必要性や家族の意向を踏まえた訪問介護の調整などを積極的に行っています。

 また砂川市では「地域包括支援センターの総合相談」「認知症の家族会に寄せられた相談」などさまざまなネットワークを通じて、支援対象者の把握に努めているといいます。一般に「支援対象者の把握」が難しいと考えられますが、こうした取り組みは大いに参考になります。

 さらに砂川市では、支援チームから介護事業所や地域包括支援センターに介護を引き継いだ後に¥も、支援対象者・家族に連絡を行い、「入院・入所」「介護サービスの利用」などの状況を把握し、課題がある場合には医療・介護サービス事業者と連携した対応をとっています。

北海道砂川市における認知症初期集中支援チームの運営方法と、支援対象者の把握方法

北海道砂川市における認知症初期集中支援チームの運営方法と、支援対象者の把握方法

自治体と医師会、専門機関で「顔の見える関係」を構築し、情報連携ツールを作成

 また認知症高齢者の対応では、(2)にあるように医療・介護関係者や家族が「認知症の人の情報」をきちんと共有することも重要です。このため砂川市・岩手町・川西市では、自治体と地域の医師会が連携して「医療介護情報連携ツール」を作成、これを関係者で効果的に活用しているといいます。

 川西市では、市・医師会・大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室が20回にも及ぶ検討会を開いて、ツールの内容と普及方法を協議。この検討会を通じて、3者の間に「顔の見える関係」が構築され、利用開始後も普及に向けた取り組みを協力して実施できているといいます。

 川西市のツールでは、自宅での介護者となる家族が、医療・介護専門職とコミュニケーションをとりやすくなるよう工夫されており、家族から認知症の病態に関する疑問を医師に質問する」「介護の悩みをケアマネジャーに相談する」などの利用もなされています。

 さらにツールの利用促進に向けて、川西市では毎月1回、▽認知症の人とその家族▽ケアスタッフ―を対象とした連絡会を実施。連絡会には川西市医師会も協力し、医師による「認知症の病態」などをテーマとしたミニレクチャーも行われています。

兵庫県川西市と川西市医師会、大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室が協同作成した医療介護情報連携ツール

兵庫県川西市と川西市医師会、大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室が協同作成した医療介護情報連携ツール

家族の精神的負担を緩和するため、認知症カフェなどの開催を

 ところで認知症対策では「家族支援」も重要なテーマの一つです。認知症の家族が介護に疲れきってしまい、虐待、ひいては殺害(心中)に及ぶケースもあるからです。

 砂川市でもこの点を重視し、認知症の家族会と共同して「認知症カフェ」を開催。そこでは、介護者(家族)が介護経験者などと交流することで、悩みや苦しさを共有しています。

 また岩手町でも在宅で認知症に人を介護している家族を対象に「介護者リフレッシュ教室」を開催。孤立しやすい介護者(家族)の精神的な支援も実施しています。

岩手県岩手町が開催する「介護者リフレッシュ教室」に寄せられた、利用者(介護者)の声

岩手県岩手町が開催する「介護者リフレッシュ教室」に寄せられた、利用者(介護者)の声

 

 厚労省は、こうした先進事例の全国展開を期待するとともに、各自治体に対して▽社会における認知症への理解を含める工夫▽家族介護者の負担を軽減する取り組みの推進▽医療・介護職間での相互理解の推進▽地域住民が認知症支援の取り組みに参加する工夫―にも取り組んでほしいと要望しています。

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