地域包括ケア病棟、1日単価低い病院が積極導入―GHC調べ
2015.1.19.(月)
2014年度の診療報酬改定に伴って新設された地域包括ケア病棟(病床)の導入が、1日当たりの平均単価が低い病院を中心に広がっている状況がGHCの調べで明らかになりました。特に1日単価2500点以下の延べ日数が長い病院で、この病棟を積極的に整備していて、今回の分析を担当したGHCのアナリスト鈴木祐貴は、「軽症の症例が多くて手術症例の割合が低いか、本来は単価が高い症例だったとしても、後方病院が周辺にないため入院が長引くケースが多いのではないか」と話しています。
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GHCでは、地域包括ケア病棟を導入済みの48病院を14年4-9月に退院した9万6249症例と、地域包括ケア病棟を未導入の365病院を同年7月に退院した23万858症例を分析し、「1日単価2500点以下の延べ在院日数の割合」と「1日単価」の平均値で、これら413病院を4つのタイプに分けました=図表=。
その結果、地域包括ケア病棟(病床)を導入している病院の大半は1日当たり単価が全病院の平均(6万80円)を下回っていて、この値を超える病院による導入はわずかでした。
特に導入に積極的なのが図の第2象限(左上)の病院です。この領域の病院は「1日単価」が低く「2500点以下の延べ入院日数の割合」が高いタイプで、急性期の病棟で7対1入院基本料などの算定を継続するため、今後も導入に踏み切るケースが多いと考えられます。
これに対して第4象限(右下)の病院では、急性期の病棟で高回転を維持しながら高単価の症例も確保できているため、地域包括ケア病棟を導入する必要性はそもそも低いとGHCではみています。
一方、地域包括ケア病棟で受け入れている症例を診療科別に集計すると、「整形外科」がトップで、これに「内科」が続きました。脳神経外科や外科、神経内科の症例も多いものの、整形外科と内科で全症例の7割超を占めました。
GHCの湯原淳平アソシエイトマネジャーは、「整形外科の入院では重症度が術後早い段階で下がりやすい。急性期の病棟で7対1などの算定を維持しようと、輸液管理や術後処置が不要になり、リハビリを除くと定期薬以外の治療を終えた段階で、地域包括ケア病棟に転棟させるケースが多いのではないか」と話しています。
疾患(MDCの上6桁)別の症例数のトップ3は、「股関節大腿近位骨折」「誤嚥性肺炎」「脳梗塞」でした。股関節大腿近位骨折がトップなのも、入院が長引きがちなのに手術後は重症度が低下しやすく、急性期病棟からの転棟が盛んなためと考えられます。
地域包括ケア病棟(病床)の創設は、急性期の病棟を退院した患者や容体が急変した在宅患者を受け入れて在宅復帰を促すのが狙いで、14年度の診療報酬改定で目玉の一つになりました。GHCの集計では、14年10月現在、国内の全病院の1割強が地域包括ケア病棟(病床)を導入済みです。
※ 詳しい分析結果は、GHCが発行する会員向けのPDFレポート 月刊「メディ・ウォッチ」(毎月10日発行)の2015年1月号に掲載されています。
●地域包括ケア病棟を導入済みの48病院を14年4-9月に退院した9万6249症例
●地域包括ケア病棟を未導入の365病院を14年7月に退院した23万858症例
●地域包括ケア病棟入院料、地域包括ケア入院医療管理料の算定症例を「地域包括ケア病棟の入院症例」と定義
●地域包括ケア病棟(病床)の導入は、1日当たりの平均単価が低い病院を中心に広がっている。
●地域包括ケア病棟(病床)で受け入れている診療科別の症例数は、「整形外科」と「内科」が多く、この2診療科で全体の7割を占める。
●疾患別の症例数トップ3は、「股関節大腿近位骨折」「誤嚥性肺炎」「脳梗塞」の順。
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