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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

「民間病院は『欠席裁判』避け、声をあげよ」、経営分析システム勉強会で大道日病副会長

2018.8.8.(水)

 日本病院会は7月24日、出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」の勉強会を開催しました。同システムを活用した経営改善事例が紹介されたほか(事例詳細はこちら)、2018年度診療報酬改定を踏まえた経営戦略について、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルタントが講演しました。

日本病院会の大道道大副会長

日本病院会の大道道大副会長

 冒頭であいさつした日本病院会の大道道大副会長は、各地で開催されている「地域医療構想調整会議」に触れ、「民間病院は関係ないと考えていると、『欠席裁判』で重要なことが決まってしまう」と指摘。その上で、「民間病院も自病院のポジショニングを明確にした上で、積極的に調整会議に参加し、声をあげよ」と警鐘を鳴らしました。

3軸が交差するポジショニング

 持続可能な医療提供体制の再構築に向けて、各都道府県は地域医療構想の実現を急いでいます(関連記事『公立・公的病院と民間病院が競合する地域、公立等でなければ担えない機能を明確に―地域医療構想ワーキング(1)』)。そのため、各地で開催されている調整会議に関係者が集い、データを踏まえた議論をした上で、各医療機関が自主的に機能分化を目指すことが求められます。

 大道副会長は、「調整会議で議論される病床最適化は『自分たちには関係のない公立病院のこと』と考えている民間病院も多いのではないか」と指摘。その上で、「『欠席裁判』で重要なことが決まってしまわないよう、事務長の尻を叩いてでも、積極的に調整会議に参加し、声をあげることが非常に重要」と指摘しました。

 「声をあげる」ことで重要なこととして、大道副会長は「3軸が交差するポジショニング」の考え方を紹介。3軸とは、(1)「規模」「体制」「機能」など自病院ができることを知る(2)自病院がやりたい医療は何かを知る(3)地域から求められている医療は何かを知る――の3つ。この3軸が交差するポジショニングが明確になれば、「今後、さらに慎重に決定しなければならない自病院の方向性や病床戦略が見えてくるはずだ」(大道副会長)と述べました。

加算一つで年間200万円の増収

 勉強会では、JHAstisのユーザーである愛仁会リハビリテーション病院(大阪府高槻市、264床=回復期210床、障がい54床)、板倉病院(千葉県船橋市、一般:91床)が成功事例を発表しました(事例詳細はこちら)。

 JHAstisは、自病院のポジショニングを確認するため、以下の5つのレポートで構成されています(関連記事『日病の経営分析レポートJHAstis、300床規模の病院で年200万円の増収実績』)。

  1. 月次レポート:主要経営指標の分析や加算取得など経営指南書を毎月配信
  2. 定期レポート:他院とのベンチマーク分析など有益な分析情報を提供
  3. 回復期レポート:回復期病棟ならではの切り口でデータ分析
  4. 経年比較レポート:病院長などの代表者に向けて半期ごと変化をレポート
  5. 臨時レポート:診療報酬改定の重要論点と自病院の影響に絞って徹底解説
JHAstisレポートによるベンチマーク分析のイメージ

JHAstisレポートによるベンチマーク分析のイメージ

 愛仁会リハビリテーション病院は、診療情報管理室の越智敏之室長が講演。越智氏は、「2つの課題に対する解決策としてJHAstis 導入を決断した」と述べ、その内容について説明しました。

愛仁会リハビリテーション病院診療情報管理室の越智敏之室長

愛仁会リハビリテーション病院診療情報管理室の越智敏之室長

 1つ目の課題は、「回復期病床を有する医療機関と、自病院を比較・分析できる方法はないか」。JHAstisにはベンチマークと回復期のレポートがあるため、院内の主要会議で他病院と比較・分析する活用が可能です。そのため、経営幹部はもちろん、各専門職の視点からの検討や議論ができるようになりました。これにより、病床戦略の判断材料になったほか、例えば薬剤管理指導料の算定率が84.5%(届出病院平均は33.1%)と高水準を維持しています。

 もう一つの課題「比較・分析から提案・実行までの一連の作業を、効率的かつ効果的に行う」についても、「レセプトデータの提出だけでレポートを受け取れるので、事務作業も少なくて済み、視覚的にも分かりやすいので、現場への追加説明もほとんどいらない」(越智氏)と評価しています。

 板倉病院は、医事課の原田和徳課長が講演。薬剤管理指導料の見直しによる加算収益増などについて解説しました。

板倉病院医事課の原田和徳課長

板倉病院医事課の原田和徳課長

 薬剤管理指導料は、2つの視点で算定率の改善を進める方法が有効です。業務の集約化▼業務の権限委譲▼人員体制の強化――などで薬剤管理指導に充てる時間を底上げすることが1つ。もう一つは、情報収集の効率化▼テンプレートの活用――などで薬剤管理指導1件当たりの時間を短縮することです。同院は、薬剤管理指導料の直近の算定件数を確認しつつ、上記のようなノウハウをJHAstisのレポートから学び、大幅な薬剤師の業務見直しを実施。その結果、算定件数が1~3割増加したことで、年間換算で200万円の収益増になっただけではなく、医療の質も向上させることにつながりました。

 原田氏はJHAstisについて、「他病院と比較した自院の立ち位置を即座に把握することで、『外』の変化を知り、新たな収益増を検討したり、次のステップへと進む経営方針を決定したりすることができる」としました。

JHAstis参加病院、募集中

 このほか、経営戦略とJHAstis活用について、GHCコンサルタントが講演しました。

 経営戦略については、「10月からの覚悟を持った病床区分の決め方」と題してGHCマネジャーの冨吉則行が講演。2018年度の診療・介護報酬が同時改定されて半年後の10月に経過措置は終わり、新制度が本格的にスタートします。そのことを踏まえて、歴史的な抜本改革が断行された入院基本料とその対応策などについて解説しました。

GHCマネジャーの冨吉則行

GHCマネジャーの冨吉則行

 JHAstisの活用方法については、GHCアソシエイトマネジャーの澤田優香が「数字を読み解く~JHAstisレポートの有効な使い方~」と題して講演。参加病院ごとに実際のレポートを活用し、具体的な経営改善案の考え方を学びました。

GHCアソシエイトマネジャーの澤田優香

GHCアソシエイトマネジャーの澤田優香

 JHAstisは現在、参加病院を募集中です。ご興味がある方は是非、日本病院会のJHAstis紹介ページをご確認ください(紹介ページはこちら)。

解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。
解説を担当したコンサルタント 澤田 優香(さわだ・ゆうか)

sawada 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのアソシエイトマネジャー。看護師、保健師。
聖路加看護大学卒業後、集中治療室の勤務を経て、入社。看護必要度分析、看護業務量調査、DPC別診療科検討、病床戦略分析、マーケット分析などを得意とする。自由分析ソフトを用いた分析では、社内で右に出るものはいない。多数の医療機関(東京医科大学病院と関東中央病院の事例紹介はこちらこちら)のコンサルティングを行うとともに、社内のアナリスト育成や「病院ダッシュボードχ」の開発でも中心的な役割を担っている。
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