総合マネジメント体制強化加算、特別の会議開催や書類作成は不要―介護報酬改定Q&A
2015.4.6.(月)
厚生労働省が公表した「介護報酬改定Q&A」から、今回は地域密着型サービスのうち、定期巡回・随時対応型、小規模多機能型、看護小規模多機能型(以前に複合型)に関係する項目をピックアップしましょう。
これらのサービスでは、「総合マネジメント体制強化加算」の創設が大きなポイントとなりますが、▽個別サービス計画の見直しは、通常業務の中で適切な関係者によって行われればよく、見直しに当たってすべての関係者が集まる会議などを開く必要はない▽病院などに対する日常的な情報提供は、必要に応じて適時・適切に連携を図っていれば足りる―ことなどが明確にされました。
2015年度改定で新設された「定期巡回・随時対応サービスや看護小規模多機能型」(複合型サービスから改称)などの「総合マネジメント体制強化加算」は、「利用者の状態を常に確認しつつ、生活全般に着目して、日頃から主治医や看護師、ほかの介護サービス提供者との意思疎通を図る」ために特有のコストを評価するものです。
この背景には、「区分支給限度基準額」と、地域密着型における「報酬の高さ」の2点があります。介護保険制度では、居宅サービスの過剰な利用を防止するために、要介護度別に月ごとに利用できる保険サービスの上限(区分支給限度基準額)を設定しています。
一方、地域密着型では、複数のサービス(小規模多機能であれば「通い」「訪問」「泊まり」)を組み合わせているため、基本サービス費が比較的高く設定されています。このため、地域密着型を利用すると、すぐに上限額近くに達してしまい、利用促進が妨げられて
いました。そこで15年度改定では、前述した「地域密着型に特有のコスト」を基本報酬から切り離して「総合マネジメント体制強化加算」とし、これを区分支給限度基準額の外に出すこととしたのです。これにより、上限までの余裕が生まれ、福祉用具貸与などほかのサービスと併用しやすくなると期待されています。
総合マネジメント体制強化加算を算定するためには、次の2つの要件を満たす必要があります。
(1)個別サービス計画について、利用者の心身の状況や家族を取り巻く環境の変化を踏まえ、介護職員や看護職員等の多職種協働により、随時適切に見直しを行っていること
(2-1)病院・診療所等に対し、日常的に、情報提供を行っていること(定期巡回・随時対応型と看護小規模多機能型)
(2-2)地域における活動への参加の機会が確保されていること(小規模多機能型、看護小規模多機能型)
(1)の個別サービス計画の見直しは、多職種協働で行わなければなりませんが、Q&Aでは▽内容に応じて適切に関係者が関わればよい▽通常業務の中で、主治医や看護師、介護職員などの意見を把握し、これに基づいて見直しが行われればよい―ことを明確にしています。全職種が集まった会議やカンファレンスを開く必要はありません。
また(2-1)の病院・診療所などへの情報提供については、「○か月に1回」などの頻度を定める必要はなく、地域密着型の事業所と、病院・診療所の間で「必要に応じて適時・適切な連携を図る」ことで差し支えないことが明確にされました。また、加算を算定するために新たに書類を作成する必要もなく、サービス提供記録などから連携状況が確認できれば十分です。
厚労省老健局振興課の高橋謙司課長は「定期巡回・随時対応型などに求められる役割を果たしていれば、加算を算定できるようにしたい」と述べており、従来通り適切に地域密着型サービスを提供していれば、総合マネジメント体制強化加算の要件を自動的に満たすことになると考えられます。
また、看護小規模多機能型では、訪問看護サービスが必要な利用者の割合に応じて加算(訪問看護体制強化加算)と減算(訪問看護体制減算)が設けられました。
これは、同じ複合型サービスを提供していても、訪問看護の利用状況に大きなばらつきがあり、訪問看護の利用が少ないところでは「小規模多機能と同じサービスを提供しているだけなのに、高い報酬を得ている」という不公平を是正するためのものです。
訪問看護体制強化加算を算定するには、「算定日が属する月の前3か月において、利用者の80%以上に訪問看護サービスを提供していること」などの要件を満たさなければなりません。Q&Aでは、例えば6月からこの加算を算定するためには5月15日以前に、次のように実績割合を算出することが明らかにされています。
▽3月:実績割合を提出
▽4月:実績割合を提出
▽5月:15日までに届け出を行う必要があり、届け出日前の実績割合と届け出日以降の見込み割合を提出する
定期巡回・随時対応型などは、要介護度が高くなっても住み慣れた地域で暮らせるよう生活を支える「地域包括ケアシステム」の重要な構成要素です。定期巡回・随時対応型の利用者の容体が悪化し、医療保険の訪問看護を受ける場面も出てくるでしょう。
医療保険の訪問看護を受けている期間は、定期巡回・随時対応型(I)の(2)「訪問看護サービスを行う場合」の報酬(例えば要介護3では1か月当たり1万9686単位)は算定できず、定期巡回・随時対応型(I)の(1)「訪問看護サービスを行わない場合」の報酬(同1万6769単位)を日割りで計算することになります。
例えば、要介護3の利用者に、4月5-18日まで14日間、医師から医療保険の訪問看護の指示があった場合には、次のように計算します。
▽4月5-18日:552単位(サービスコード表に定められた、訪問看護サービスを行わない場合の日割り額)×14日=7728単位
▽4月1-4日、4月19-30日:648単位(サービスコード表に定められた、訪問看護サービスを行う場合に日割り額)×(4+12)日=1万368単位
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