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小児へのピボキシル基含有抗菌薬投与、低カルニチン血症・低血糖症に最大限の留意を―日本小児科学会

2019.8.23.(金)

 小児へのピボキシル基含有抗菌薬(フロモックス、メイアクトMS、トミロン、オラペネムなど)投与は、1-6日の短期間であっても低カルニチン血症・低血糖症が生じる恐れがある。低ケトン性低血糖症が生じた場合、カルニチン欠乏症の可能性も念頭に、必要に応じて「カルニチンの血中濃度を測定」「L-カルニチン製剤の投与」などを検討する―。

 日本小児科学会は8月20日に、こうした内容の提言「ピボキシル基含有抗菌薬の服用に関連した低カルニチン血症に係る注意喚起」を公表しました(日本小児科学会のサイトはこちら)。

一律の「カルニチンの血中濃度を測定」「L-カルニチン製剤の投与」は推奨されない

 ピボキシル基含有抗菌薬(以下、PCAB)には以下のような製品がありますが、2012年に「幼児以外の小児には、短期間の投与でも低カルニチン血症に伴う低血糖が発現する」恐れのあることが報告されました。これに伴い、「使用上の注意」が改訂され、日本小児科学会薬事委員会および医薬品医療機器総合機構から注意喚起が発出されています。

▼セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物(販売名:フロモックス小児用細粒、同錠、ほか後発品多数)
▼セフジトレン ピボキシル(販売名:メイアクトMS小児用細粒、同MS錠、ほか後発品多数)
▼セフテラム ピボキシル(販売名:トミロン細粒小児用、同錠、ほか後発品あり)
▼テビペネム ピボキシ(販売名:オラペネム小児用細粒)
▼ピブメシリナム塩酸塩(販売名:メリシン錠、2013年に販売中止)

 
 しかし、その後もPCABとの関連が疑われる低カルニチン血症・低血糖症が報告されており、日本小児科学会の薬事委員会の調査によれば、「2012-18年に、7日以内の短期間PCAB投与の小児症例において、PCAB投与との関連が疑われる低カルニチン血症・低血糖症が22名(0-12歳、中央値1歳、男児9名・女児13名)に認められた」ことが分かりました。

 事態を重く見た日本小児科学会・薬事委員会は、次のような留意事項をまとめ提言しています。

(1)PCABとの関連が疑われる低カルニチン血症の発症は、月単位の長期ばかりでなく、「短期間(1-6日)の服用例」でも認められる

(2)まれに脳症など重篤になることがあり、後遺症を残す例もある

(3)カルニチン欠乏に伴う典型的な症状は▼低血糖▼意識障害▼痙攣―である。低ケトン性低血糖症が生じた場合には、「カルニチン欠乏症ではないか」という点を念頭に置いて、カルニチンの血中濃度を測定することが望ましい

(4)カルニチン欠乏症が疑われた場合には「L-カルニチン製剤(販売名:エルカルニチンFF内用液、同FF錠ほか)の投与」(1日、体重1kg当たり40-60mg)が推奨され、特に意識障害を認める症例では「L-カルニチン製剤(販売名:エルカルニチンFF静注シリンジほか)の静脈内投与」が有用と考えられる

 
 さらに日本小児科学会・薬事委員会では、最新の知見や診療報酬点数表などを踏まえ、次のような点にも留意することを求めています。

▽PCAB服用後の低血糖発症は、▼製剤の種類▼性別▼投与期間▼併用薬の有無や期間▼基礎疾患の有無や種類―などで特段の傾向はない

▽カルニチン欠乏状態にあっても血中カルニチンが低下していない、ときには高値であるケースも報告されている

▽PCAB処方にあたっては「カルニチン欠乏症の診断・治療指針2018」を参考として、病態に沿った症例ごとの対応が期待され、「一律にカルニチン濃度測定を行う」「予防的にL-カルニチン製剤を投与する」ことは奨励されない

▽PCAB服用に関連する血中カルニチン測定は、「公的医療保険の適用外」となる可能性がある

▽PCAB投与に伴う低カルニチン血症の予防を目的としたL-カルニチン製剤の処方は適応外使用となる可能性がある(「公的医療保険の適用外」となる可能性がある)

▽2017年より「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が掲げられ、症例ごとに「抗菌薬投与の必要性」を検討し、次いで「抗菌薬の種類選択」を行った上で、PCABが適正に使用されることが求められる

 

 

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