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「虐待による頭部外傷(AHT)」の診断結果、医学的根拠なき言説と区別せよ―日本小児科学会

2018.6.15.(金)

 「虐待による頭部外傷(AHT、Abusive Head Trauma)が原因で小児が死亡した」と診断された場合であっても、刑事裁判で、弁護側証人から「嘔吐物の誤嚥などによる窒息でもAHTと同様の所見が見られ、これが死因である」「出生に伴う無症候性の硬膜下血腫が、時間を経て再出血したことが死因である」などと医学的根拠のない証言・反論が行われることがある。AHTの診断は、あくまでも「医学的診断」であり、裁判官・裁判員が医学的根拠のない証言などと混乱をしないよう期待する―。

 日本小児科学会は6月13日に、▼米国小児放射線学会(SPR)▼欧州小児放射線学会(ESPR)▼米国小児神経放射線学会(ASPNR)▼米国小児学会(AAP)▼欧州神経放射線学会(ESNR)▼米国子ども虐待専門家協会(APSAC)—と「乳幼児の虐待による頭部外傷に関する共同合意声明」を行い、こうした方針を明らかにしました(小児科学会のサイトはこちら)。

 
 声明のポイントは、以下のとおりです。

▽2歳以下の小児において「致死的頭部外傷」がある場合、その主な原因は「虐待による頭部外傷(AHT)」は、2歳以下の小児における致死的頭部外傷の主要な原因である

▽AHTの診断は、病歴・身体所見・画像所見・検査所見に基づき多機関連携チームで行われ、医学的妥当性に争いはない。もっとも、▼硬膜下血腫▼脳実質・脊髄の変化▼多発多層性網膜出血▼肋骨骨折、その他の骨折—を併発し、「養育者から語られた病歴」がこれら所見と矛盾する場合には、包括的な検査を行い「AHT類似症状を来しうる病態」との鑑別を尽くす必要はある

▽にもかかわらず刑事裁判では、一般に受容されている医学文献とは全く相容れず、医学的根拠の全くない「▼脳静脈洞血栓症▼一次性の低酸素性虚血性脳損傷▼腰椎穿刺▼嘔吐物の誤嚥などによる窒息—が原因で、AHT同様の所見を呈する」「出生に伴う無症候性の硬膜下血腫が、出生後相当程度時間が経った段階で再出血を起こしショックに陥る可能性がある」との証言・反論などがなされることがあり、裁判官・裁判員の混乱を招いている

▽AHTの診断は、加害者の意図の証明や「殺人の診断」といった法的診断ではなく、あくまで医学的診断である。本声明が、「医学的エビデンスに基づく医師の意見」と「裏付けのない主張、仮説的言説」とを区別する上で裁判官や裁判員の一助となり、混乱を最小化することを期待する
 
 
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