在宅医療的ケア児とその兄弟姉妹への定期予防接種、在宅医療機関の訪問診療時に可能とすべき―日本小児科学会
2019.8.6.(火)
在宅医療的ケア児は、その兄弟姉妹などから感染症に罹患し重症化するケースが多く、「在宅医療的ケア児とその兄弟姉妹」への定期予防接種が非常に重要である。この点、居住地と異なる「小児在宅医療を提供する医療機関」の訪問診療時に定期予防接種を受けようと思っても、市町村によっては▼定期予防接種そのものを認めない▼兄弟姉妹への定期予防接種を認めない―ところもある。市町村の理解を得られるよう、協力をお願いしたい―
日本小児科学会は8月1日に、日本医師会の横倉義武会長に宛ててこうした内容を盛り込んだ要望書「在宅で医療的ケアを必要とする児及びその同胞に対する定期予防接種の実施に関する要望書」を提出しました(学会のサイトはこちら)。
在宅医療的ケア児と兄弟姉妹への定期予防接種、受けやすい環境の整備を
難病等で在宅療養を行っている「在宅医療的ケア児」が感染症に罹患すると、重症化の可能性が高く、定期予防接種(定期接種)が非常に重要となります。
ところで、在宅医療的ケア児は外出の機会が限られるため、感染ルートは主に「兄弟姉妹から」となります。このため、「在宅医療的ケア児の兄弟姉妹」への定期接種も非常に重要です。
この点、在宅医療的ケア児の保護者は、「在宅医療的ケア児の介助」等に忙しく、その兄弟姉妹のために割ける時間が限られます。このため、在宅医療的ケア児への訪問診療の際に、在宅医療的ケア児はもちろん、その兄弟姉妹へも定期接種を行ってほしいとのニーズが少なからずあります。日本小児科学会も、「在宅医療的ケア児の普段の健康状態、家庭状況などを熟知している在宅小児かかりつけ医によって、在宅医療的ケア児とその兄弟姉妹が、訪問診療の際に安心して負担なく定期予防接種を受けられる」環境の整備が重要であると指摘します。
ただし、在宅医療的ケア児に医療を提供する医療機関は、まだそれほど多くないため、「居住地とは異なる地域の医療機関に在宅医療提供を依頼する」ケースが多くなります。この「居住地とは異なる地域の医療機関」で定期接種を受けることについて、市町村によっては、▼定期予防接種そのものを認めない▼兄弟への定期予防接種を認めない―ところもあると日本小児科学会は指摘。
厚生労働省健康局長による定期接種実施要領(2013年3月30日付の「予防接種法第5条第1項の規定による予防接種の実施について」)では、「通常の方法で定期接種を受けることが困難な者等が定期接種を受けることを希望する場合、予防接種を受ける機会を確保する観点から、居住地以外の医療機関と委託契約を行う、等の配慮をする」ことを市町村に求めています。また日本小児科学会では、前述のように多忙な保護者が、「兄弟姉妹を医療機関の外来に受診させる」ことの負担の大きさは計り知れないことから、在宅医療的ケア児はもちろん、その兄弟姉妹への定期接種について、「受けやすくする配慮」を行うべきと訴えます。
さらに、こうした事態を是正するためには「日本医師会の協力が必要不可欠である」と考え、次の2点について要望を行っています。
(1)都道府県医師会に在宅医療的ケア児を取り巻く現状と問題点を理解してもらうとともに、円滑な定期予防接種の実施に向けて各医師会管内の市町村と協力し調整するよう要望してほしい
(2)定期接種実施要領の趣旨に鑑み、実施主体である市町村に対し、医療機関の所在地にかかわらず「在宅医療的ケア児とその兄弟姉妹に対する定期予防接種を実施できる」よう要望してほしい
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