厚労省・鈴木技総「一部の病院病床を高齢者住宅に」-病床過剰の解消策に
2015.7.24.(金)
厚生労働省の鈴木康裕・技術総括審議官は23日、看護系学会等社会保険連合(看保連)の情報交換会で講演し、病床が過剰な医療提供体制の是正策の具体例として、一部の病院の病床を、高齢者向けの住宅などにシフトさせることを挙げました。鈴木技総は、これによって医療費の削減だけでなく、高齢者が最期を迎える場所の確保や、医師や看護師の業務負担の軽減にもつながるとの認識を示しました。
また、「孫の代まで自分の病院を本当に続けられるか、不安な病院経営者も多い」と述べ、こうした政策が病院経営者の不安を解消する上でも有効だとの考えを示しました。
経済協力開発機構(OECD)の調べでは、日本の人口1000人当たり急性期病床数は2012年現在7.9床で、OECD加盟34か国の平均3.3床を大幅に上回っています。鈴木技総は「日本では、高齢者を受け入れる施設がうまく整備できなかったため、病院がそこを吸収することを20年、30年続けてきた」と述べ、日本で病床が増え過ぎたのは、高齢者福祉の立ち遅れや核家族化の進展が一因だと指摘しました。
鈴木技総は講演で、「人口当たりの医師数や看護師数を見ると、(日本は)欧米諸国と大差はない。だけど、病床がものすごく多いので、1病床当たりのスタッフ数は少ない。このためものすごく忙しい」「(医療従事者が)今のままの負担感にあと10年、15年耐えるのは多分、無理」などと、医療従事者の勤務負担を和らげる必要性を再三、強調しました。
その上で、病院の病床の一部を高齢者住宅に転換できれば、医療費の削減だけでなく、高齢者が最期を迎える場所の確保や、スタッフの業務負担の軽減にもつながるとの認識を示しました。
講演は、「診療報酬の構造と展望」がテーマでした。鈴木技総は、人員配置や病院の設備など医療機関のストラクチャーを中心に評価してきた現在の診療報酬体系について、「看護師の配置が手厚い方が当然、アウトカム(医療の結果)が良いだろうという前提で点数を設定してきたが、必ずしもそれを保証するものではない」と述べ、将来的には、医療のアウトカムや現場のパフォーマンスを評価する形に切り替えるべきだとの見方を示しました。
ただ、「病院が努力して患者を早く退院させると、病床の回転は良くなるが、入院待ちの患者がいないと収入が減ってしまう」とも指摘し、医療機関の実績を客観的に評価できる指標の確立と、パフォーマンスが高い病院を正しく評価する仕組み作りを課題に挙げました。
このほか、入院1件当たりの診療報酬を包括で支払うDRG/PPSのような仕組みの必要性も示しました。急性期病院による平均在院日数の短縮を促して、医療を効率化させるためですが、「いきなり全部をDRGにすると中小病院がばたばた倒れてしまう」とも述べ、現在のDPCをベースにしながら、診療報酬の大半を入院初日に支払う「点数設定D方式」(隠れDRG)を少しずつ拡大する形を提案しました。
【関連記事】
削減する病床を、特定看護師を施設長とする「病院内施設」へ転換せよ―日慢協の武久会長
【対談】オバマケアが変える「医療の質」とは―スモルト×鈴木康裕(前編)
医療機能にめりはり、カギは「急性期らしさ」(上)―在院日数は9日まで短縮か
厚労省・佐々木企画官「高度急性期はDPCⅠ群とⅡ群に」―Ⅱ群認定は抜本見直し、16年度にも