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医療の質とコストに関連性なし-米国大手GPO幹部、価格適正化の重要性を強調

2015.11.11.(水)

 GHCは7日、病院のコストを削減する手法の1つとして注目される医療材料の共同購買に焦点を当てたセミナーを東京都内で開催しました。米国で最大規模の医療共同購買組織(GPO)を運営する「ノベイション」のピート・アレン上級副社長や、全米トップクラスの病院として知られるメイヨー・クリニック(ミネソタ州)で購買を担当するジェームス・フランシス氏らが、米国内でのGPOの最新情報を紹介。アレン氏は、医療の質と病院のコストには関連性が認められないことを強調し、医療材料を適正価格で仕入れることの重要性を指摘しました。

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米国最大級のGPOを運営する「ノベイション」のアレン氏

米国最大級のGPOを運営する「ノベイション」のアレン氏

 GHCが開いたセミナーは「『医療材料』コスト削減の切り札『GPO=共同購買』」で、全国の病院関係者ら約70人が参加しました。

 GPOは、複数の病院による医薬品や医療材料などの購入を一本化する組織です。メーカーやディーラー(卸業者)と病院が単独で価格交渉するよりも、複数の病院の購買を一本化してバイイングパワーを高めた方が交渉を有利に進められます。米国では既に広く普及していて、96%の病院がいずれかのGPOのサービスを利用しています。

 GPOに参加することで病院側がコスト削減を見込めるだけでなく、たくさんの病院との価格交渉を一本化することで、メーカーなど供給側にも弁護士費用を削減したり、業務を効率化したりできるメリットがあります。

 ノベイションは、大規模な病院向けに共同購買のサービスを提供する「VHA」と、大学病院向けの「UHC」が1998年に共同で立ち上げたGPOです。現在では全米の大学病院や小児病院の大半が加盟しているといい、医療材料の購買価格に関する膨大なデータを蓄積しています。

■医療材料の価格動向を全米規模で常にウォッチ

■GPOのベンチマーキングに期待、メイヨー・クリニック

米国内で「医療の質」を高く評価されているメイヨー・クリニックのフランシス氏 米国内で「医療の質」を高く評価されているメイヨー・クリニックのフランシス氏[/caption] 一方、メイヨー・クリニックのフランシス氏は、GPOの重要性を病院側の観点から指摘しました。

 メイヨー・クリニックは、6州に24病院を持つ米国で最大規模の病院グループで、国内のメディアなどから医療の質を高く評価されています。現在では、グループ病院による医療材料などの供給を管理する独自のサプライチェーンマネジメントシステムを構築して成果を上げていますが、これに並行してノベイションによるサービスも利用しているということです。

 メイヨー・クリニックがGPOへの参加を決めたのは、サプライチェーンマネジメントの運営費を削減できるなど、グループ単独でコスト削減を進めるよりも多くのメリットを見込めるためで、サービスの内容や運営方針が自分たちのニーズにマッチしているかなどを見極めた上でノベイションをパートナーに選択したといいます。

 フランシス氏は「GPOに参加することで自分たちのパフォーマンスや価格決定力、医療サービスの内容などをほかの病院とベンチマーキング(比較分析)できる。わたしたちはこれらの情報を何らかの形で自己分析して、説得力のある価値提言をしていかなければならない」などと述べ、病院の文化やコスト戦略がマッチするなら、日本の病院もGPOへの参加を前向きに検討すべきだと呼び掛けました。

 フランシス氏によりますと、米国には現在、約600のGPOがあり、病院による医薬品や医療材料の購買の7割強(価格ベース)をカバーしています。GPOの規模や運営母体、サービスの内容は多様化していて、中には長期療養病院や民間病院向けのサービスに特化するケースもあるということです。コスト削減の効果を高めるには規模拡大が不可欠なため、フランシス氏は米国内で今後、GPOの再編統合が進むとの見方を示しました。

■鈴木技術総括審議官、病院の「損税」拡大に危機感

厚労省の鈴木・技術総括審議官 厚労省の鈴木・技術総括審議官[/caption] この日のセミナーでは、厚生労働省の鈴木康裕・技術総括審議官も講演しました。その中で鈴木氏は私見として、17年4月から消費税率が引き上げられることで、高額な設備投資が多い大病院などでは赤字に転落するケースが相次ぐ可能性があると指摘しました。

 少子高齢化への対応に必要な財源を確保するため、消費税率は2014年4月、それまでの5%から8%に引き上げられ、17年には10%まで引き上げられる見通しです。しかし、社会保険診療報酬は消費税が非課税とされているため、医療機関は患者に負担を転嫁できません。そのため、何も対応を取らずに税率が引き上げられれば、医療機関による「控除対象外消費税」の負担が増えることになります。

 8%への引き上げに伴う医療機関の負担増を和らげるため、14年の診療報酬改定では、初・再診料や入院料など基本診療料を中心に財源が上乗せされました。10%に引き上げる際の対応はまだ決まっていませんが、鈴木氏は私見として、「14年度と同じ対応を取りながら消費税率を10%、15%、20%にするとおそらく多くの病院が赤字になり、倒れるところもあるかもしれない」などと危機感を表明し、今後の動きを注視するよう呼び掛けました。

 鈴木氏は、こうした中で病院運営を安定させる取り組みの重要性も指摘しました。具体策として医薬品のコスト削減を挙げ、これの成功の確率を上げるには、利幅の少ない卸業者よりもメーカー側と直接交渉すべきだとの見方を示しました。

 医薬品や医療材料の共同購買にも触れ、「(これによって)コストを5%削減できれば相当大きい」と強調。ただ、複数の医療機関が実際に共同購買するなら製品の在庫リスクをどうシェアするかが課題だとも指摘しました。

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