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地域包括ケア病棟、手術や麻酔、輸血、高度な処置などを出来高で評価せよ―地域包括ケア病棟協・仲井会長

2015.12.10.(木)

 地域包括ケア病棟・病床の本来的な機能である「他院の急性期後(post acute)の患者受け入れ」などを促進するためにも、手術、麻酔、輸血、高度な処置などを出来高評価とすべきである―。こうした提言を、地域包括ケア病棟協会の仲井培雄会長が行いました。

 また将来的には、「疾患別リハに加えて診療報酬で評価されない日常生活支援に力を入れる」病院や、「在宅復帰に力を入れ早期退院を実現している」病院を評価するために、『地域包括ケア病棟機能評価係数』を創設すべきとも提案しています。

12月10日に記者会見に臨んだ、地域包括ケア病棟協会の仲井培雄会長

12月10日に記者会見に臨んだ、地域包括ケア病棟協会の仲井培雄会長

手術などの出来高算定により、「本来の地域包括ケア病棟の機能」を発揮

 2016年度の次期診療報酬改定の議論が中央社会保険医療協議会などで進められる中、地域包括ケア病棟の手術料や麻酔料を出来高とすべきか否かで診療側内部に意見のずれがあります。このため、このテーマについては診療側内部の調整待ちと言う状況になっています(関連記事はこちらこちら)。

 10日に記者会見を開いた地域包括ケア病棟協会の仲井会長は、この点について「手術、麻酔、輸血、高度な処置などを出来高で評価すべき」と提言しました。

 仲井会長は、手術などを出来高評価とすることで、▽緊急時の受け入れ(例えば下腿骨折、急性虫垂炎など)▽急性期病棟からの受け入れ(輸血、PEGなど)▽その他の受け入れ(胆石疝痛発作後の予定手術、CVC留置など)―を強化できると説明。

 また、現在、A病院(他院)で高度急性期・急性期治療を終えた患者を、B病院(自院)の地域包括ケア病棟で受け入れる場合、一度B病院(自院)の急性期病棟で受け入れ、その後、B病院の地域包括ケアに入棟するというケースが少なくありません。

 つまり、【A(高度急性期、急性期)】→【B(急性期)】→【B(地域包括ケア)】という流れです。

 これは、地域包括ケア病棟で手術などが包括されていることが原因ですが、転棟に伴うリスクやコストが発生します。仲井会長は、手術が出来高になれば、【A(高度急性期)】→【B(地域包括ケア)】の流れが強化され、こうしたリスクやコストが軽減すると見通します。

 この【A(高度急性期、急性期)】→【B(地域包括ケア)】は、地域包括ケア病棟の本来の機能である「post acute患者の受け入れ」そのものと言えます。

病床規模や病床の種類によらず、手術などは一律に出来高とすべき

 ところで中医協の議論では、一部委員から「病院の規模別に報酬体系などを考えてはどうか」という意見も出ています。例えば10月28日の中医協総会では、鈴木邦彦前委員(日本医師会常任理事)から「200床未満の病院の地域包括ケアには急性期に対応できるよう報酬体系を設置し、200床以上の病院では地域包括ケアは1病棟に限定する」などの提案を行いました。(関連記事はこちら

 この点について仲井会長は、「(手術などを)一律に出来高で評価すべき」と強調しています。

 これは、同協会が会員病院を対象に行った調査から「地域包括ケア病棟の機能と、病床規模、設立母体(民間か公的か)などとの間には、特段の傾向が見られない」という分析結果が得られたことを背景にしています。

 調査結果からは「10対1以上の病床がない地域では、地域包括ケア病棟のsub acute機能が高くなる(緊急患者の受け入れが多い)」ことも示されましたが、仲井会長は「10対1以上の病床がない地域では、地域包括ケア病棟が最も急性期よりであるため緊急患者を受け入れるのは当然である」と説明しています。

個別病院の機能や実績を評価する、地域包括ケア病棟の機能評価係数設定を

 さらに仲井会長は、将来的(2018年度の次々期改定など)に次のような評価を行うことも提言しています。

(1)リハビリなどの評価

(2)認知症患者の受け入れと、在宅・生活復帰支援に対する評価

(3)薬物多剤併用療法の適切な管理に対する評価

 これは、地域包括ケア病棟の中にも、医療の質向上に向けた取り組みを積極的に評価すべきとの考えが根底にあります。

 例えば(1)では、「1単位20分未満の生活回復リハビリの実施」「NST(栄養サポートチーム)による栄養管理」「認知症ケアの提供」「薬剤管理の徹底」「入退院調整の強化」などを行う病院の総合力を評価するために、『地域包括ケア病棟機能評価係数』を創設すべきと提案しています。

 DPC病院では、基礎係数や機能評価係数I・IIが設定されており、包括評価でありながら、個別病院の機能や実績が経済的に評価される仕組みとなっています。地域包括ケア病棟にも包括点数が設定されているため、この仕組みを地域包括ケア病棟にも導入すべきという仲井会長の提案は非常に興味深いものです。仲井会長は「疾患別のリハを行った上で(現在、リハが必要な患者には1日平均2単位のリハを提供することが必要)、診療報酬で評価されない日常生活機能の維持・回復に向けたリハを行っている病院や、上乗せの疾患別リハを行っている病院がある」ことを紹介し、これらを係数で評価すべきと訴えています。

 また(2)では、「在宅復帰に力を入れ、早期退院を実現している病院では、延べ患者数が減少するので、経営的にはマイナスの要素が強い」というジレンマを解消すべきとの考えに基づくものです。今後、「早期退院による平均在院日数の短縮」がこれまで以上に求められる状況が訪れると予想される中で、地域包括ケア病棟に止まらず、急性期や慢性期にとっても参考になる提案と言えます。

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