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「市場縮小時代」の急性期病院、生き残り策どうする―「病院ダッシュボード」ユーザー会で16年度診療報酬改定講演

2016.3.4.(金)

 一般急性期病院にとって、市場縮小の流れにある時代をどう生き残っていけばいいのか――。GHCマネジャーの冨吉則行は、2016年度診療報酬改定の講演の中で、こう訴えかけました。

 2025年に向けた厳しい経営環境においては、正確なデータ分析に基づく戦略的な経営計画の立案が欠かせません。16年度診療報酬改定の内容を理解した上で、どのような視点や着眼点でデータ分析していけばいいのかを学ぶため、GHCは「改善のポイントが瞬時に分かる」が開発コンセプトの「病院ダッシュボード」のユーザー会を2月15日、下越病院(新潟市)で開催しました。

GHCマネジャーの冨吉則行

GHCマネジャーの冨吉則行

「2025年に患者急増」は限定的な話

 改定講演で冨吉はまず、16年度診療報酬改定の要点を解説。厚生労働省が示したキースライドでは、(1)「地域包括ケアシステム」の推進と「病床機能分化・連携」を含む医療機能の分化・強化・連携を一層進めること(2)「かかりつけ医等」のさらなる推進など患者にとって安心・安全な医療を実現すること(3)重点的な対応が求められる医療分野を充実すること(4)効率化・適正化を通じて精度の持続可能性を高めること―の4つの視点に基づく改定としています。

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 冨吉は、「機能分化すべきとしたり、(500床以上の病院が地域包括ケア病棟入院料の届け出ができるのは1病棟に限るなど※以下の図表参照)機能分化すべきではない、などのメッセージもあったり、複雑な改定になった印象がある」とした上で、「ただ、今回の改定で押さえるべき最大のポイントは、一般急性期の入院は絞って、外来や在宅に回す一方、がんや小児、救急などの重点分野はとことん面倒を見るという点」と整理しました。

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 重点分野については、「認知症が加わったことの意味が大きい」として、その理由が将来推計人口における疾患構成にあると指摘。突出している「団塊の世代」が75歳に突入する「2025年問題」で患者数が劇的に増えると言われていますが、冨吉は「実は、そのほとんどは認知症」と述べています。冨吉が実際に分析した結果は、以下の通りです。

2025年までの疾患別増減予測

2025年までの疾患別増減予測

 患者数が劇的に増えると言われているのは、実は精神疾患、つまり認知症という限られた疾患になります。精神疾患に限定して患者が急増する中で、一般急性期の入院を絞り、外来・在宅重視の流れが加速すると、精神科を持たない一般急性期の市場は拡大するどころか、縮小傾向にあると言えます。冨吉は、「院内のデータのみならず、市場全体のデータもしっかりと分析した上で、自病院の立ち位置をできるだけ早く決める必要がある」と警鐘を鳴らしました。

看護必要度で要件厳格化より着目すべきは

 幅広い視野でのデータ検証を経て、16年度改定に立ち返ると、やはり7対1入院基本料等の施設基準の見直しは非常に大きなポイント。中でも最重要要件は「重症度、医療・看護必要度」における重症患者割合となります。16年度改定で、この基準が25%(200床以下は23%の経過措置あり)と15%から引き上げられたことに加え、重症患者の受け入れ割合のデータ提出方法が見直されることも重要です。

 16年10月以降、看護必要度の生データ提出が義務化されますが、冨吉は重症割合10%引き上げよりも、こちらの方が着目すべき論点であるとしています。冨吉のシミュレーションによると、10%の引き上げは「基準クリアが簡単な病院は簡単。あまりハードルは高くない」としており、それよりも、看護必要度のデータ精度に問題があり、クリアできると思っていた基準値を実際には満たせず、当局から指摘を受ける可能性が浮上したことへの対応が急務としています(看護必要度のデータ精度向上ツール「看護必要度分析」はこちら)。

 また、重症割合のハードルが必ずしも高くはないとは言え、病棟別でのバラつきや変化はあり、「しっかりと病棟別のデータや様々なデータを用いて、先生方と定期的に話し合っていく必要がある」としました。個別病棟単位ではなく、全病棟を俯瞰して重症割合のデータを確認することで、データ精度向上の先にある最適な病床戦略の構築が見えてきます。「看護必要度分析」では、そのための機能も実装予定です。

操作説明やSWOT分析なども実施

 地域包括ケア病棟入院料やチーム医療などの16年度改定の重要論点を解説するとともに、講演では実際に「病院ダッシュボード」で自院のデータを見ながら、退院支援加算(退院調整加算から組み替え)など各種加算の算定率の確認などをしながら、参加病院がまずはどのような論点から改定対応を始めるべきか、確認していきました。

 この日のユーザー会では、病院ダッシュボードの基本的な操作方法を確認したほか、中級編として病院ダッシュボードを用いたSWOT分析の手法などを学びました(関連記事『自病院の強みと弱みは何か、データに基づく正しいSWOT分析の要点』)。

 ユーザー会は3月16日の大阪会場から、中級編の分析演習のテーマを新たなに設定した新シーズンを展開いたします。大阪会場はすでに満員御礼となっていますが、3月22日の札幌会場以降はまだお席に余裕があります。ご興味ある方は是非、お早めのお申し込みをお願いします。

「病院ダッシュボード」ユーザー会・2016春~新シーズン

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解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「コンサル視点が瞬時に分かる」をコンセプトに開発された次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」の営業統括も務める(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。