在宅医療・介護連携、地域住民へ情報提供の市区町村4割未満―東京都調査
2016.3.16.(水)
在宅医療・介護連携について、東京都の全市区町村が地域の医療機関や介護事業所の住所や機能などを把握しているものの、パンフレットやホームページなどを活用した地域住民向けの情報提供を行っている東京都の市区町村は4割に満たない―。
こういった状況が、東京都の「在宅医療・介護連携推進事業の取組状況」に関する調査から明らかになりました(14日発表)(東京都のサイトはこちら)。
いわゆる団塊の世代(1947-49年生まれの人)がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年に向け、地域包括ケアシステムの構築が急がれています。
地域包括ケアシステムは、要介護度が高くなっても住み慣れた地域で在宅療養を継続できるように、高齢者の「住まい」を基盤として、医療や介護、予防、生活支援といったサービスを複合的・総合的に提供することを目指すものです(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
この中でも、特に「在宅医療と在宅介護の連携」が重要と考えられますが、東京都は2015年度末時点で、管内の市区町村(53自治体)で在宅医療・介護連携がどれだけで進んでいるかを集計し、公表しました。
まず、自治体が地域の医療・介護サービス資源をどれだけ把握しているかを見ると、すべての市区町村で地域の医療機関・介護事業者などの住所、連絡先、機能などを把握していることがわかりました。ただし、それら医療・介護資源をリスト化し、またマップにしているかとなると、81.1%(43自治体状)にとどまっています。23区の中では、世田谷区と練馬区でリスト化・マップ化が行われていません。
また、地域包括ケアシステムを構築するためには、地域の課題を抽出し、対策を練ることが不可欠です。例えば、「全体として在宅サービスが不足している」のか、「全体としては充足しているが、地域偏在がある」のか、などを明らかにすることが必要です。
こうした点については88.7%(47自治体)で、課題抽出のための会議が設置されています。
また連携を促すための「医療・介護関係者の状況共有ツール」については60.4%(32自治体)で整備され、医療・介護関係者向けの研修も過半数(多職種でのグループワークは71.7%・38自治体、医療関係者向けの研修は56.6%・30自治体)で実施されています。
このように東京都では在宅医療・介護の連携が一定程度進んでいることが伺えますが、地域住民への情報提供は必ずしも十分とは言えません。
地域住民向けのパンフレットなどを作成している自治体は39.6%(21自治体)、ホームページなどでの情報提供を行っている自治体は35.8%(19自治体)に止まっています。
特に市町村部では地域住民への情報提供が遅れており、パンフレット作成は▽八王子市▽武蔵野市▽調布市▽日野市▽国立市▽多摩市―、ホームページ作成は▽八王子市▽武蔵野市▽日野市▽国立市▽東大和市▽多摩市▽稲城市―でしか行われていません。
また23区の中でも、▽千代田区▽文京区▽墨田区▽江東区▽品川区▽渋谷区▽荒川区足立区―では、パンフレット・ホームページのいずれも作成されていません。
今後は、先進事例(例えば台東区や板橋区、武蔵野市、多摩市では調査項目すべてを実施済である)を参考に、地域にマッチした在宅医療・介護の連携体制を構築するとともに、地域住民への分かりやすい情報提供をさらに進めることが期待されます。
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